2017.05.09

2017年、平林安里選手がXCに使うタイヤとその使い分け

平林安里選手がXCレースで使う新作タイヤ、ファストトラック2BRの2.1と2.3、レネゲード2BRの2.1。これらの特徴と使い分けについて話を聞きました。

スペシャライズド・レーシング・ジャパンのMTBレーサー、平林安里(ひらばやし あり)選手。4月23日に行われた、日本でのMTBシリーズ戦最高峰であるクップ・ドゥ・ジャポン(以下、CJ)の2017年シーズン開幕戦・八幡浜では、U23クラス(22才以下のみのクラス)で優勝しました。しかもこれは、同時出走であったエリート男子をも抑えての、正真正銘の1位としての優勝となりました。

2016年にプロとなり、今年は若手のトップと言うだけでなく、日本を代表するレーサーともなりつつある平林選手は、スペシャライズドの最新機材を使うのはもちろんですが、 その選び方にもしっかりこだわっています。

「昨年モデルからアップデートされた新作タイヤは、どれも全体的にレベルが上がっていて、ものすごく乗りやすくなったという印象が強いですね。自分の技術を超えるようなミスを防ぎ、走りを補ってくれるように感じます」

ここでは、今年平林選手がXCレースに使うタイヤ3本とその性質、そして使い分ける基準について、話を聞きました。なお、先のCJ開幕戦での優勝で、平林選手が使っていたのはFast Trak(ファストトラック)2.1です。

S-WORKS EPIC FSR WCの詳細はこちら > 

さらに進化したFAST TRAKの新モデル

FAST TRAK をチェック > 

去年もファストトラック・コントロールをレースに使っていたんですが、この新モデルはさらに進化した別物のタイヤだと感じています。

前作と比べると、新作はノブのゴム質がものすごく柔らかくなっていて、ノブの高さも上がっています。ノブが、指でつぶれるぐらい柔らかくなっているんです。この柔らかくなったゴム質が、前作よりも全体的な乗り心地を柔らかくしています。

やわらかいノブと面で張り付くグリップ感

乗ってみて、その進化を最も大きく感じるのは、グリップする感触です。タイヤが面で路面にピッタリと密着する、そんな感覚を受けます。この高いグリップ力で滑りにくく、それが武器になりそうだという印象がありました。

特に根っこセクションと土の上で、そのグリップ感を頼もしく感じました。ラインの選択肢が広がって、ラインの選択を失敗するリスクが減ったんですね。

かといって、サイドが潰れてよれる感じはないんです。サイドの剛性が強くて、そう簡単にヨレを感じないです。

ノブが潰れて戻ることで、前に押し出される感覚

タイヤのゴム自体が柔らかく、面でグリップするような感触なんですが、これが地面にまとわりつき過ぎて、離れが悪いような感じもほとんどない。

ノブも高さはあるんですが、適度に潰れてくれるので、舗装路でもノブが路面に引っかかる感じもない。かえって、適度に潰れて形が戻るときに、前に押し出されるような感じがしました。

巡航性能も高く、スピードが乗ってから脚を休めても減速する感じはありません。むしろスピードを上げるほど、回りが良くなるように感じます。

それに、ものすごく漕ぎ出しが軽いですね。コーナーでの立ち上がりと、段差などを超えるときの、バイクを持ち上げる動作が軽く、いろんな負担が減ったように感じます。

2.3は大きくなった外径で、巡航性能がより高い

今年のファストトラックには、2.3サイズもあります。ぱっと見た感じ、けっこう太く見えますが、実際に乗ると、太くなったということ以上に、タイヤの外径が大きくなったという印象が強いです。もちろん太くなれば外径も大きくなるんですけど。

高速で走り続けたときに、タイヤの外径が大きいので、スピードの持続性が高いですね。それに、面で掴むように密着するファストトラックですが、2.3になるとこれがさらに、ものすごく安定するんです。セミファットバイクみたいな動き、感覚、乗り心地になります。

空気圧について

僕の体重は72kgですが、ファストトラックでの空気圧は、2.1でも2.3でもメーカー推奨値を大きく下回る数値まで落とせました。これでもぜんぜんヨレがありません。より低圧での安定性を優先させたという感じを受けましたね。

サイズ2.1と2.3との使い分け

それぞれの特徴として、2.1の魅力はコーナーを抜けた時の加速のよさです。加速の出だしが全然違います。そしてコーナリングの機敏な動きです。コーナーが多くて、高速でのアップダウンが激しいコースでは、コンディションがドライなら2.1を使いますね。

S-WORKS PREVAIL II ヘルメット > 
S-WORKS 6 XC MTBシューズ > 

そして2.3はエアボリュームを活かした圧倒的なグリップ力と、コーナーでの安定性がいいですね。滑りやすい路面コンディションでは、この安定性が活きてます。

去年、雨のレースでは、ブロックの高いグラウンドコントロールを使っていました。でも今年はこのファストトラック2.3が同じぐらいグリップ力が高いので、走りも軽く速い2.3を、レインタイヤとして使う機会が多くなると思います。

新作RENEGADE、前モデルからの変更点

RENEGADE 2BR をチェック > 

去年から使っているRenegade(レネゲード)も今年アップデートされました。昨年モデルと比べると、ブロックはひとつひとつが大きくなって、ブロックとブロックの隙間が小さくなりました。全体的により密集した形状になりましたね。

軽くて走りの抵抗感が少ない

その変わった形状で、レネゲードの乗り味というか硬い路面での転がりは、前モデルとは比べ物にならないほど抵抗感が少なくなりました。特に舗装路とか、グラウンドの砂地の上などでは、反応がすごくいいですね。

それに、踏み上がりの加速が、大袈裟に言うとロードバイクのような感じです。ものすごく転がりますし、出だしが断然いいんですね。

向いている路面、コース

全体的なことで言うと、乾いていて、ハイスピードな路面、コースに向いていると思います。パンプトラックでは、かなり使い勝手がいいと思います。その転がりの良さが、パンプの力をそのまま伝えるため、その技術を身につけるには最高のタイヤだとも思います。

それに、スキー場でのレースコースにもマッチすると感じています。芝生の上で、その特徴が活かせると思うからです。乾いた芝生の上では、例えばファストトラックだと、喰いつきが良すぎるかもしれないので、レネゲードの軽さを活かした、どんどん転がすような走りができればと思います。

CJのレースで言うと、一里野や妙高、白馬といった会場にレネゲードが向いていると思います。砂のグラウンド、平地、舗装路ではレネゲードの転がりが生きてくると思います。

舗装路トレーニングにも抜群

日常的なトレーニングでも、積極的に履いています。特に舗装路トレーニングでは、転がりがいいので積極的に使っています。

反対に、すこし泥っぽい条件になると、泥詰まりがあったりしたので、そういう状況ではファストトラックを使うことになります。軽さと速さを求めた走り、そういった状況があるなら、迷わずレネゲードを選びますね。

【CJ-U八幡浜での主な使用機材】
バイク:S-WORKS EPIC FSR WC
サドル:S-WORKS PHENOM
グリップ:SIP LOCKING GRIP
タイヤ:FAST TRAK 2.1
ヘルメット:S-WORKS PREVAIL II TEAM RED
シューズ:S-WORKS 6 XC MTB
グローブ:XC LITE
サングラス:OAKLEY RADAR EV
レンズ:PRIZM TRAIL

【筆者紹介】:中村浩一郎
そのCJ開幕戦を見に行った。トップ集団で走っていた安里選手、途中でズルズルと後ろに下がってしまい「ああ、やっぱり無理だったか」と思いきや、そのまま耐え抜き最後の最後の激坂で先頭選手をぶち抜き優勝を決めた。実は元ラリーレーサーである安里選手のお父さまによる巧妙な作戦展開だったのではないかとも睨んでいたりもする。

関連記事:
平林安里 レースレポート CJ-U八幡浜(2017年4月28日)
平林安里のオフトレーニング内容をご紹介します!(2017年4月7日)


カテゴリ
キーワード