「足は本来、自由なんだ」。このシューズを履いたときそのことを強く感じさせてくれます。。それは初めてニットアッパーのランニングシューズを履いたときと同じような感覚に近いと言ったらよいでしょうか。文字どおり、これまでに履いたことのないサイクリングシューズの感覚です。いうなれば「足袋」(たび)感覚。ペダリングをよりダイレクトに感じることができます。
アッパーはBOAダイヤルで開け閉めすることが可能です。ダイヤルはIP1という汎用タイプで、反時計方向に回すと締め込み、時計方向で緩みます。締める方向が違うとクリック感が変わりますが、片足のホールド感を走行中でもダイヤル1つで微調整できるのは非常に便利ですし、オーバーソックスやカバーを着けていても比較的容易に回せます。
そして、ダイヤルを持ち上げるとワイヤーは完全に開放され、足を出し入れしやすくなります。ワイヤーを通すレースホルダーは片足に6か所あり、クッションの入ったタンの上からワイヤーを締め込みます。ワイヤーで引っ張られるアッパー部はダイニーマ・メッシュを採用しており、繊維に伸びがないのでしっかり固定ができると同時にメッシュ状なのでフィット感が非常に高く、中足部分(甲の高いところ)は包み込まれるようなはき心地です。ダイヤルはきつめに締めこんでから4、5クリック戻してみるとちょうどよい締め具合に収まるでしょう。
前足部(甲の前側からつま先)はS-Works Sub6で採用されたエアロカバー、ワープスリーブが由来で、TPU(熱可塑性ポリウレタン)を使っています。これは非常に柔軟でしかもストレッチ性の高い素材なので、面ファスナーを使わずに足の適度なホールドと保護を実現しています。これが「足の自由」感を確保しているといっても過言ではないでしょう。
ちなみに、靴の形状のもとになるラスト(足型)は、S-Works7と同じフォームフィットを採用しています。しかし、実際にシューズを履いてみた印象は7とは異なります。これはやはりアッパー構造と素材が異なるためですし、軽さを追求したところに理由があります。部材を削ることはイコール軽量化ですが、部材を削って機能が落ちたのでは意味がありません。なので、SPECIALIZEDシューズの命ともいうべき、内反ウェッジ、中足骨ボタン、縦のアーチという3つのボディジオメトリー機能は他のモデル同様です。
ちなみに私、SBCU先生は普段S-Works7の43.5を履いており、つま先に少しゆとりがあって、ハーフサイズ下げても履けるけれど窮屈な印象。EXOSをはじめて履いた際は、S-Works7よりもゆるく感じられ、サイズはハーフもしくは1サイズダウンでもよいかと思いましたが、前後サイズを試したところ結局セブンと同じサイズに落ち着きました。サイズ感は千差万別なので、試し履きをおすすめしますが、一つの傾向として参考にしていただければと思います。
セブンとEXOSで同じサイズを比べると、EXOSは全長がセブンよりも少し短く、アウターの全長も短く出来ています。しかし、アウターソールはハーフを含む全サイズで異なるので、ハーフでもサイズが小さくなれば、前足部の幅も同時に狭くなることを考えた選択が賢明でしょう。
前置きが長くなりましたが、このシューズの一番のセールスポイントは軽さです。自転車シューズに軽さは重要かと言われるとピンと来ないかもしれません。「円運動の外周部を軽くすると、投資に対して得られるメリットが大きい」なんていうことを聞いたことがあるかもしれませんね。よくホイールやタイヤの軽量化で使われるフレーズですが、まるごとシューズにもあてはまります。なぜならシューズはペダルとクランクによって円軌道を描いているからです。しかも、回転数の基準ともいわれる1分あたり90回転を基準にすると、1時間走れば5400回転、2時間走ればおよそ1万回転もシューズは回っていることになります。シューズ本体が軽ければ、それだけ足、脚、それらを動員する筋肉への負担も減るということなのです。
まずはローラー台で試してみます。こぎ出しからその軽さを感じます。そして、指先が自由に動くことで開放感をもたらしてくれます。一方でシューズが足を固定しないと不安、という心配もあるかもしれませんが、従来のシューズと固定する構造が異なるので感覚も変わります。その違和感はありますが、悪い印象ではなく、違う体験(エクスペリエンス)といってもよいでしょう。中足部から前足、後足部にかけてダイニーマの補強が効果的なカットで入っていることにより、足はじゅうぶんに保持され、不思議なことにペダルを踏んでいる感覚をより強く感じさせてくれるのです。
さらに高い強度でペダリングしても力が逃げる感覚はなく、むしろさらにペダルを踏んでいる感覚を助長し、まるで硬いガラスの定盤の上に足をのせているような錯覚にとらわれます。ペダリングは引き足を意識して、なんていうことを言われたことがあるかもしれませんが、本来、大切なのは踏み込みなんだな、ということにこのシューズが気づかせてくれるでしょう。そのパワーを支えるアウターソールは硬度指数13という硬さをもっており、力が逃げる印象はありません。むしろ、軽さのために肉抜きを施しつつ必要な強度を保つことは並大抵のエンジニアリングではできない芸当だと思えます。
ちなみに軽さを実現するソールの肉抜きは、夏場にはベンチレーションとしても機能してくれるでしょう。2月の寒空には少しスキマが多すぎたくらいですから。また、フットベッド(インソール)は、別売のフットベッドの赤(+)に相当するアーチ高のものが標準の仕様となります。フィット感を補完する意味で、ほかのアーチ高のボディジオメトリーフットベッドや、RETULカスタムフットベッドの併用も検討の余地がもちろんありますが、標準品は非常に軽く作られているところも一つのメリットといえるでしょう。直前まで使っていたシューズでカスタムフットベッドなどを使っていた方は、違和感が強いと思われますので、フットベッドを移し替えて使われたほうがいいかもしれません。
軽さに特化してデザインされたシューズなので、ヒルクライムはもちろんのこと、夏場のロングライドや、いま流行りのスマートローラーでも真価を発揮してくれるでしょうし、新しいペダリング体験(エクスペリエンス)をこの一足から感じていただけたらと思います。
佐藤 修平 スペシャライズドが提供する製品やサービスについて、その機能や特徴を販売店やエンドユーザーへと伝える「SBCU」のメンバーであり、フィッティングサービスを統括する。ツール・ド・おきなわでは、2014年に市民140kmを完走、2017年に市民210kmを完走。MTBやシクロクロスの経験が豊かで、生まれつきの「自転車バカ」を仕事にもっと活かしたい44歳。
SBC湘南藤沢店 紺野 元汰氏
最近軽量なシューズが流行っていますが、「なるほど。そういうことか」と気づかされ、軽さの優位性に驚きを隠せません。Qファクターも広いためダンシングがとてもしやすく、それが輪をかけるように反応の良さへつながっているイメージです。 一方で、フィット感に関しては私自身はS-WORKS 7シューズと相性がよいと感じたのも事実でした。カスタムフッドベッドとの相性が抜群にいいためS-WORKS 7シューズよりフィット感で右に出るシューズがないと思っています。EXOSの場合フィット感がないわけではないが、全体を包み込むようにホールドしてくれるのがS-WORKS 7で、中央のみでホールドでしてくれるのがEXOSといった印象。 このあたりは良し悪しではなく、好みの問題だと思われるので是非とも一度EXOSの軽さの優位性を感じた上で判断して頂ければと思います。 私の感覚的な話しになってしまいますが、EXOSは母趾球を中心としたペダリングをする方や、ヒルクライムやクリテリウム、BOAが1つのみなのでトライアスロンのショートディスタンス等の短時間高強度のレースをメインとしているライダーにオススメできるシューズです。 長時間のライドはこのシューズのホールド感が好みなライダーにとっては何ら苦ではないと思いますが、S-WORKS 7シューズに比べてクッション性は低いため「足」が強いライダーさんでないとシューズに負けてしまう可能性があるのではないでしょうか? まだまだ試したばかりなので本領の一部しか見えてきていませんが、これからクリート位置の見直しやカスタムフッドベッドの導入など試行錯誤を繰り返しEXOSの本領を発揮していければと思います!
A.速く走るためです。
A.S-Works 6に使われている素材と似た、どの方向にも伸縮しないDyneema®をスペシャライズドのためだけにブレンドし、アッパーに使用しているため特別なのです。裏地にメッシュを合わせ、とても丈夫で軽く、足に馴染む素材が出来上がり、補強の必要も無くなりました。この素材により、シューズは大幅な軽量化を達成。また、柔らかいヒールを開発し、Sub6 WarpSleeveをベースにした伸縮性素材でつま先を覆いました。
その他の新たな特徴は、カーボンアウトソールです。ライダーファースト・エンジニアード™ Tarmacを開発したカーボン専門家の協力を得て、開発しました。圧力マッピングを用いて、剛性を損なわずに重量を削減できる部位を特定してあります。シューズの裏側にカットアウトの穴が空いているのは、そのためです。
A.前足の内反ウェッジ、縦足弓サポート、中足骨ボタンというBody Geometryの3つの特徴すべてを採用しています。BG+ フットベッドが付属し、アフターマーケット製品として販売されるスペシャライズドのカスタムおよびセミカスタムフットベッドと前足のウェッジを使うことができます。
A.形状や内側の広さという点では、S-Works 7とフィット感は似ていますが、それ以外はまったく別物です。S-Works 7同様、足をしっかりとホールドし、パワーを余すことなくペダルに伝えるシューズではあるものの、ヒールカウンターやトゥボックスを持たないため、シューズ上側の構成パーツが少なく、より足に馴染むフィットが得られます。Dyneema®素材と伸縮性に優れる柔らかいバンプ(つま先の革)もまた、足の形状に馴染むため、まるで素足のように履いていることを忘れてしまうシューズとなっています。
A.剛性指数とは、アウトソールの剛性を評価するために用いる数値です。プレートに40kgを荷重した際に生じるしなり量を測定することで、数値を得ます。剛性指数13は、40kgの荷重を掛けた際にしなり量が1.32から2.11mmの範囲であった場合の数値です。S-Works 7の剛性指数15(しなり量は0から0.61mmの範囲)と比べると、アウトソールはよりしなりますが、それでも13という数値は十分に剛性が高く、S-Works 6の剛性に匹敵します。
A.このシューズはつま先の保護性が低いものの、痛める心配はまず不要です。
A.重量目標を達成するためには、ダイアルを用いると重量増につながるため、広い面での開閉機構以外のものを使う必要がありました。また、足のホールド力と調整機能を損ないたくなかったため、Boaシステムも必要でした。そこで選んだのが、Boa IP1ダイアルです。このダイアルはデュアルプル式(両側からシューレースを引っ張る方式)なので、段階的な締め付けと解放や瞬時の解放もでき、またシューレースをきつく締められます。したがって、ダイアル1つでシューズ全体を締め上げ、わずかな重量増となるだけで最高の締め付け具合を得ることができるのです。
A.皿ネジを緩めることでヒールラグを交換できます。ヒールラグはS-Works 7と同じものを使用します。
A.違いはいくつかあります。それらを設けたことで、サイクリング業界初となるシューズ重量100グラム以下を達成できました。最大の違いは、Boa®ダイアルからシューレースへの変更です。この変更で、開閉機構とタンの構造が軽量化されました。また、EXOSのような見た目でありながら20%軽いアウトソールもEXOS 99専用に開発しました。全世界で500足限定販売となっているのは、このプレートに高い精度が求められ、製造が非常に難しいためでもあります。EXOS 99は専用のヒールラグも備え、クォーター(腰革)からTPU(熱可塑性ウレタン)を取り除き、片足で数グラムの軽量化を達成しています。
A.すべてのシューズの重量を確認し、各サイズに最大重量を設定しています。40:92g 40.5:93g 41:96g 41.5: 97g 42:99g42.5:100g 43:105g 43.5:106g 44:111g 44.5:112g 45:116g
A.耐久性は抜群です。磨耗テストに莫大な時間を費やし、現行のS-Works 7と同等の耐久性を誇ります。
A.レースのためのシューズです。試着したライダーの多くは、レースで履きたいとコメントしました。中には「シューズ版スキンスーツ」と表現し、レース本番で少しでも有利になるための最終兵器として履くテスターもいます。
A.スペシャライズドが製造するすべてのシューズには保証が付けられており、生じる可能性のあるいかなる保証対象の問題にも、誠意を持って対処いたします。
A.ヒールのホールド力は非常に高いですが、S-Works 7と比べると大幅に異なります。S-Works 7では、ヒールを包み込んでホールドできるよう、射出成型のヒールカップを使用しました。EXOSとEXOS 99では、このヒールカップを使わない代わりに、Dyneema®素材の伸縮しない特性を利用して、ヒールをホールドします。ヒール部に模様を付け、CubicTec™社の素材で覆うことで、ヒール部は足の細かな形状に沿い、まるでがっちり固定されているかのような優れたホールド力を発揮します。
A.交換できます。しかし、タンに搭載されたダイアルを使うため、簡単に素早く交換することはできません。ダイアルの詳しい交換方法は、以下のリンクの動画をご覧ください。
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