2016.09.08

スペシャライズド・レーシング・ジャパン 平林安里 前半戦レースレビュー

MTBレース 国内公式戦の後半戦が9/11(日)よりスタート。スペシャライズド・レーシング・ジャパン平林安里選手、プロ1年目の前半戦はどう戦ったのか。

スペシャライズド・レーシング・ジャパン 平林安里 前半戦レースレポート

マウンテンバイクXCOレース 国内公式戦(Coupe du Japon、以下CJ)の後半戦が今週末9/11(日)よりスタートします。スペシャライズド・レーシング・ジャパン平林安里選手は、前半戦苦しみながらも全日本選手権U23で優勝。この勢いで後半戦を一気に巻き返したいところです。

まず、平林選手がレースで使用する機材をご紹介します:

バイク:S-Works Epic World Cup
タイヤ:Specialized Fast Trak Control 20x2.0
サングラス:オークリー ジョーブレイカー レンズ:プリズムトレイル
ヘルメット:S-Works Prevail Team Red
シューズ:S-Works 6 XC MTB (全日本マウンテンバイク選手権より使用開始)

平林選手は、多くのレースにこれらの装備で臨んでいます。それでは、高校を卒業し、挑戦を開始したエリートカテゴリー・プロ1年目の前半戦を振り返ります。

4/10:CJ-2菖蒲谷

リザルト:リタイア
天候:晴れ コースコンディション:ドライ

この3月の初めにある決断をしました。物心がついた頃から取り組んできたアルペンスキーレースを卒業し、マウンテンバイク一筋に取り組むという決断です。迷いはありませんでした。そしてずっと憧れのバイクだった『SPECIALIZED』と共に、最高の環境で、未来にむけた第一歩を踏み出す機会を頂きました。

今年の記録的な暖冬は、スキーヤーとしての自分には残念な雪不足でしたが、サイクリストとしての自分には例年になく早い段階での屋外練習を可能にするもので、3月中はじっくりと走り込むことができ、順調なコンディションとパワーアップを感じてきました。

そして迎えた今季初レース、CJ-2菖蒲谷です。久々の土の上、新鮮さと自分の力強さを確かめながら試走を繰り返しました。昨年はジュニアカテゴリーに戻ってしまったので、2年ぶりのエリートクラス、スタートは20番代。スタート後の第一コーナーがタイトであるため、慎重にスタート。続く登り区間は順調にこなし、抜きどころが少ない中、最初のフィード地点では5位まで浮上。その後も順調にペースを上げトップ3人のパックで周回を重ねました。しかし3周を過ぎたあたりから背筋に違和感が出て、徐々にその痛みが増し、トップから遅れ始めました。痛みに耐えながらも周回を重ねましたが、強い痙攣となり、不本意ながら5周を終えたところでレース続行を断念することになりました。

今までになくこの時期に十分走り込め、調子も上々という自信が過信となり、いつものシーズンインではもっと慎重になるはずの「いくつかの選択」を見過ごしていた事に気づきました。まだまだ、ぎこちない初心者マークのプロライダーですが、心の隙もしっかりと埋め、前進したいと思います。


Photo by Keisuke Tohda

5/6〜8:アジア選手権(タイ・UCI-CC)

CJ-2菖蒲谷から3週間、開幕戦で感じた課題を埋めるべく練習に取組み、アジア選手権に向けて準備を進めた。今回のアジア選手権はタイのチャイナット市。バンコクの北、バスで約2時間の場所で開催。5月3日に現地入りし翌日から大会コースで試走を開始。気温は噂どおりの高温で朝から40℃越え、しかも日陰無し!!路面は見た事も無い赤い砂地。ところどころサボテンも…。今まで体験した事も無い環境で、熱中症に気をつけ徐々に体を慣らしていった。

5/6:XCOチームリレー

6日、この日の気温は45℃。かなり過酷な条件だったが冷静に速くという目標を立ててレースに挑んだ。メンバーは4人。走順は平野選手、佐藤選手、北林選手、自分。北林選手が周回を終えてハイタッチすると同時に自分のレースが始まった。とにかく、冷静に前を追う事だけを考え全力でペダルを踏み続けたが、中間地点を超えた所で前の選手との差が3分と大きく、逆転することが困難な状況で、鈴木監督から「明日のレースに備えて体にダメージが残らないようなペースで走れ」という指示があり、ペースを落とし過ぎず無理なアタックを避け、3位をキープしてゴールとなった。

5/7:XCO本戦

当日の気温も45℃近く、全くの未体験ゾーン。どんなレースになるか分からない状況で、少し不安な気持ちもあったが、今 自分のすべき事だけを考え、不安な気持ちをかき消してレースに挑んだ。スタート直後に落車が発生し、出遅れてしまうが冷静に対処し前を追っていく。1周目を終える頃には10位近くまで順位を上げて行き、まだトップ集団が見える感じの距離で2周目に突入、足の感じも余力があり良い感じだったがコース中盤に差掛かった頃、突然足から血の気が引いて行き寒気がしてきた。思うように体が動かず、苦しい状態に陥ってしまった。その後も回復する事なく、ペースを全く上げられず、順位を大幅に落とし不本意な19位でレースを終えた。

5/8:XCOエリミネーター

本戦終了後、翌日のエリミネーターに出場が決まり、すぐに気持ちを切り替えてレースに備えた。当日、レースの進行時間が1時間早まるといったアクシデント以外は問題なく準備を進める事ができた。エリミネーターは最初に行う個人タイムトライアルの結果によって組分けをして、各組勝ち残りの上位2人がファイナルに進んでいけるトーナメント戦となっている。予選第一回戦は自分を含めて3人。スタート後、足の動きが少し鈍く出遅れてしまい、2番手に。細かいミスがあったものの、最後から二つ目のコーナーまで順位をキープ、しかし詰めの甘さによりインに入り込まれ、前に出られてしまった。必死に追撃したものの、追いつく事ができず予選敗退となってしまった。

今回のレースを終えて感じた事は、45℃という気温に対する想像力が全く足りてなく、実際は出発前にもっと暑さへの準備ができたのではないか?と思う点がとても悔しかった。

しかし極限に近い状態を体験できた事は、より強い自分を作り上げる糧になると思う。しっかりと今後に繋げたい。

5/15:CJ-U八幡浜(UCI-1)

リザルト:8位
天候:晴れ コースコンディション:ドライ

アジア選手権を終えて5月10日に帰国、慌ただしく八幡浜への準備を行い12日の早朝に出発、午後3時頃に愛媛県八幡浜市に到着。ホテルのチェックインまで時間があったので、四国最西端の岬、佐多岬を目指して20km程リカバリーライドをした。左右団断崖に囲まれた尾根道は景色も良く、良い気分転換になった。翌13日は午前中に愛媛県と高知県の県境にある四国カルスト大地までヒルクライム。澄んだ空気を吸いながら40km近く走った。午後はレース会場に行き試走。ギアのテストをしたり、ラインを確認したり、4周走った。レース前日、試走は2周ほど、軽めに走った。

レースは今季のCJポイントを持っていなかったのでスタートは57番。40分間3本ローラーでアップをしてスタートに並んだ。後ろを振り向くと数人の選手しかいない…レースがスタート、第一コーナーで落車が発生したが、なんとか避けて順調に順位を上げて行く。1周目の後半頃には20位まで上げる事ができたが、トップとは約1分もの大きな差がついてしまった。その後も冷静に前を追い続けたが、なかなか追い越せる区間が少なく苦戦した。6周目で10位まで上げ、最終周に入ると7・8位の選手に追いつく事ができ、攻防を繰り返しながら8位でゴール。

まだまだ、自分のイメージしている走りに比べ、足りない所が多い。しっかりと修正して、次回の富士見では良い走りが出来るよう頑張りたい。今回も沢山の応援、ありがとうございました。

5/29:CJ-1富士見

リザルト:リタイア
天候:晴れ コースコンディション:ドライ

レース期間の1週間前から徐々に練習量を増やし、体も良い状態でレースを迎えた。レース前日は竹谷選手と一緒に走ってもらいながら入念にコースをチェックしてレースの走りをイメージした。当日は、スタート1時間前からアップを開始し30分ダッシュを混ぜて走った。

スタート順はUCIポイントが採用されたため8番と前回よりかなり良い。しかし、体が思ったように動かず集団に埋もれる様な感じでレースが進んでいってしまった。集団がばらけてきた隙を突いてなんとか前に進もうとしたが、足の反応が悪くなかなか前に出られない。なんとか4番手まで順位を上げたが色々と手間取っている間に先頭と20秒ほど差がついてしまった。そのまま2周目に突入。足が動き出すのを待っている状態の走りだったが、しばらくすると急に胸の下が痛みだした。とりあえずギアを軽くしたが、痛みは消えるどころか悪化、かなり痛くペダルが踏めなくなってしまった。コース後半の登りでバイクを降りた。しばらくすると痛みが治まったのでレースを続行したが、3周目に入ってしばらくすると耐えられない痛みが戻ってきたので、レースを棄権した。

今回、体が悲鳴を上げてリタイアとなってしまった。今までこういった経験は無かったので、かなりショックだったが、失敗した原因を見つけ、改善し、次のレースへ活かしていきたい。

6/12:CJ-2妙高

リザルト:9位
天候:晴れ コースコンディション:ドライ

富士見のレースから2週間、課題を改善しながらしっかりと走り込み、このレースに備えた。体調も良く前日の試走はコースのラインを意識して5周走った。当日、アップはスタートの1時間前から始め30分間ローラーに乗った。その後も舗装路でダッシュを数本行った。

スタート順は3番。最前列なのでとにかく全開で走る事をイメージする。前回と違い、スタートは上手く決まりトップで最初の坂に。しかし、その後スピードを上げる事ができず2番手で下り区間に入る。2番手のまま2つ目の登りに入ったが、ここでもスピードを乗せられず、更に富士見で痛めた所と同じ所が痛みだし、順位を急激に落としてしまった。少しペースを落として体の様子を見る事にした。2周目に入ると体の調子が徐々に良くなってきたので速度を上げていった。そして3周、4周、5周も同じようにペースを上げて行き、6周目で一時は20番程まで落とした順位を10番まで上げる事ができた。7周目に入り少しペースが落ちてしまったが、ペースが落ちないよう粘った。最終周、ペースを上げられるだけ上げる事を意識。残り1.5km地点で前の選手との差は20秒ほど。まだ追いつけると自分に言い聞かせながら走り、ゴール前で追いつき、最後のスプリント勝負を競り勝って9位でレースを終える事ができた。今回のレースでは自分の走りの甘さを改めて実感した。次のレースでは条件、体調に左右されない走りを目指していきたいと強く思った。

7/2:XCO世界選手権U23(UCI-CM)

リザルト:1Lap72位
天候:晴れ コースコンディション:ドライ

成田空港からヘルシンキを経由し14時間ほどかけてプラハに到着。バスに乗り換え、プラハから南へ3時間程移動し、レース会場のあるNove Mesto na Moraveに現地時間夜12:00到着。この日はバイクを組立てず、早めに就寝した。

翌日、バイクを組みレース会場へ。早速コースに入るとすぐにジャンプがあった。最初はジャンプが飛べるかどうか下見をし、イメージを作り、それからチャレンジをしてみる事にした。このジャンプはほとんどの選手が飛んでいたので、飛ぶ以外に選択肢は無いと考えていた。まずは一回目、飛びすぎた。もう一度ジャンプの入りをイメージして二回目のトライ。今度はジャンプの進入速度を落としてみたが、ジャンプで踏み切ってしまい縦に伸び上がり、かなり飛んでしまった。ちょっと悪いイメージが出てきてしまったのでコースの残りの区間を走る事にした。残りの区間は問題なくクリアできたが、やはり一つ目のジャンプが気になっているので 2日目にじっくり練習することにした。

2日目、バイクにGoProを装備しジャンプセクションに向かった。富士見の合宿で藤田選手に教わった事を思い出しながら三度目のトライ。上手く決まった。それからジャンプに対する迷いが無くなりスムーズに飛べるようになった。その後も5回反復練習を行い、感覚を確実なものにしていった。ジャンプが上手くいった後は、コースを3周レースペースで走ったり反復練習を繰り返したり、20km程走った。宿に戻り、この日撮影した映像をスペシャライズド・チームに送り、藤田選手を中心にコースのライン取りのアドバイスを頂いた。3日目、前日のアドバイスのラインを意識しながら3周走り、明日のリレーに備えた。

XCOリレー

天気予報どおり雨、コースのコンディションは大きく変わっていた。自分は最終走者なのでスクリーンで他の選手の走りを見ながらイメージを作っていた。第三走の江越選手が15位でゴールし、レースが始まった。前を走る選手との差は10数秒。追いつけると考えながらペダルを踏み続け、差が10秒程に縮まり追いつけそうな流れだったが、ロックセクションの登り区間でラインミスをし、かなりタイムをロスしてしまった。そのため完全に前の選手を逃がしてしまい、順位を上げられず15位でフィニッシュラインを超えた。

XCO本戦

スタートは71番。悪くないと感じながらスタートラインに立った。スタートを上手く決め、後は全開で走り続ける事だけを考え、レースが始まるのを待った。レースが始まった。集団の中の隙間を見つけながらすり抜けるように走り続け、ついに集団の真ん中あたりまで順位を上げる事ができた。集団もばらけ始め、更に順位を上げようとペダルを踏み込んだ。しかし、足が切れてしまい大幅にペースダウン。気づけばほぼ最後尾に近い所を走っていた。なかなかペースを上げられない中、2周目に突入。少し足が動くようになってきた。少しずつペースと順位を上げて走った。3周目に入り、足が回復し始め、ようやく本来のペースで走れるようになってきた。順位も70番代まで上がり良い感じのペースでレースを進めて行く。4周目、ペースは変わらず大きなミスもなく走り続けていたが、ここで下りのペースが徐々に落ち始めた。振動で腕の体力を消耗してしまい、ハンドル操作が上手くいかなくなってきた感じがした。5周目に入り完全に腕の体力を消耗した。下りの速度は1周目よりもかなり遅かった。しかしそんな状況でもなるべく大きなミスをしないよう、意識し走り続けた。最終周へ入ろうとしたところ、80%カットで今回のレースは終わった。U23初めての世界選手権を終えて感じた事は、ここに書き切れないほど沢山あるが、レースを終えて一番強く感じた事は今回のレースで圧倒的な速さで優勝したSam Gaze選手を1年後の世界選手権で倒し、アルカンシェルジャージを日本に持ち帰る事が今後の自分の目標だということだ。遠く日本からも応援、現地でのサポートを、ありがとうございました。

7/17:全日本マウンテンバイク選手権U23(UCI-CN)

リザルト:1位
天候:曇り コースコンディション:ドライ

レース2日前から試走を始めた。世界選手権で得た教訓を活かして、試走から力の出し惜しみをしないよう全力で挑んだ。反復練習、ギアテスト、レースペースでの走行を繰り返し行い、自分が納得するまで走り続け、2日間で約50キロ走った。

11時45分、男子U23・マスターズ・ジュニアが一斉にスタートした。スタートコールはUCIポイント順であったため、最前列に中央に。スタートダッシュが上手く決まり、先頭で初めのストレートを登る事ができた。このスピードアップで集団を分裂させることができ、前田選手と竹内選手と自分の3名の展開に持ち込めた。しかしスタートで少し足を使ってしまい、ペースを上げられず2人の後ろにつけ様子を見た。なかなか前の2人を抜く事ができずスタートループを終えた。今シーズンは初戦からあまり良い走りができず、自分の走りに対してまだ弱気な気持ちがあった。スタートループ後の1〜2周は体力に余裕を持って走ろうとも考えたが、やはり無難な守りの走りをしてはいけないと思い、全開の走りに切り替えた。最近の練習で掴んできた感覚を思い出しながら走り続け、後続の選手に大きな差をつけることに成功した。最終周の登りもペースを緩めず走り抜け、そのままトップでゴールラインを切る事ができた。

この日はマスターズの竹谷選手と自分のダブル優勝で、スペシャライズド・レーシング・ジャパンチームにとって最高の1日となった。シーズン前半は思うような走りができず苦しいレースが続いたが、全日本選手権でやっと自分の走りを出す事ができた。シーズン前半足踏みしていた自分を温かく見守ってくれたスタッフ、応援してくれた皆様に感謝しています。この勢いを後半戦のレースに繋いで頑張ります。

ジュニアカテゴリーからエリートになり、厳しいレースが多かったようですが、目標のひとつだった全日本選手権を優勝することが出来ました。ますます今後の活躍に期待したいですね。応援、どうぞよろしくお願いいたします!

レースレポート:平林安里
TEXT:平澤太郎(スペシャライズド・レーシング・ジャパン チームマネージャー)

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