2016.10.26

財務部長小松の「アイアンマン70.3合肥」レポート

出し切ったレースだった。仕事や育児に追われ練習時間を取れないなか、世界選手権での完全燃焼する権利を得るため、合肥へ参戦した。

8月に子供が生まれることがわかっていた2016年シーズンは「アイアンマン世界選手権コナ」の挑戦を見送った。4月に「第32回全日本トライアスロン宮古島大会」、6月に「アイアンマン70.3セントレア知多半島ジャパン」に出場したあとは、なんとなく11月の「アイアンマンマレーシア」に出て2017年のKonaでも狙おうかと考えていた。そのためセントレア以降もそこそこのトレーニングは継続していた。しかし7月に入り、中国合肥(Hefei)で開催のハーフアイアンマンで2017年のKonaスロットが狙えることが判明した。アイアンマンを主催する米企業を中国系企業が買収した結果か、「トライアスロンの中国マーケット拡大に向けた商業的な動きなのかなぁ」と、参加するモチベーションをあまり感じなかった。

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ところがしばらくすると「何のためにKonaに行きたいのか?」と、自問自答していた。今まで2回Konaに行っているが、その2回とも不本意なレース結果であった。ロングのレースでは、全ての過程において100%満足できることは恐らくないであろう。でも、今までのロングでも、理論上達成できる最高のタイムを達成できたことは3割程度あった。今の自分は、Konaに行くだけでは満足していないのだ。Konaで最高のパフォーマンスをすることこそが、目標になっていた。

アイアンマン世界選手権への挑戦 最終回 YOUR ARE AN IRONMAN 

子育てをしながら、予選を勝ち抜き、更にKonaでベストをというのは非常に厳しく感じた。そうであるならば、10月に行われる合肥の70.3は非常に効率的な、Kona行きのバスに映った。感情論は抜きにして目標を達成するために、このバスに乗ることは千載一遇のベストな選択肢であると思うようになってきた。

長男が誕生した8月5日に合肥出場の決断をした。バイク、ランともコースは平坦。練習時間が今まで以上に限られるから、合肥のコースに適した練習だけに絞る。2016年シーズンを通じて積み重ねた持久力があるので、後はスピード持久力に特化すればよい。具体的には以下の通り。

スイム

一番時間がとりにくかったスイム。普段は週3回ほど、就業後会社近くのジムで2キロ強泳いで、ストレッチもじっくりしてから帰宅していたが、息子のお風呂の時間を考えるとあまりゆっくりする時間がない。そのためアップなしの100m x 15本のインターバルのみ。しかも、ちょっと残業すると練習はスキップせざるをえない… 9月から10月にかけてはスイムの時間があまりなかったが、もともとスイムをやっていたわけなので、練習不足でもレース1週間前に泳ぎこみをすれば泳力維持はできそうだとも考えていた。大会直前の1週間は、1日に2度のスイム練習とたっぷり泳ぎこんだ。

バイク

最もレースに特化した練習となった。平日朝、週3回はローラーで60秒もがき、60秒レストのインターバルを10本。週末は厚木〜小田原の側道片道6.5kmを7往復(そうすると90km)。これだけしかやっていない。本当に退屈な練習だったが、小田原〜厚木間の90kmは恐らく信号による20回ほどの停止を含めて時速37kmで走ることができた。本番では38kmペースでいけることを確信した。

ラン

平日の昼休みに10km走と1kmのインターバル5本の組み合わせ、週末に多摩川の河川敷のキロ4:30ペースの20km走。灼熱地獄の中、自分でも本当によくやったと思う。練習時間的には普段の6割程度。ハーフアイアンマンだから何とかなる練習量なのではないか。

さてレース直前、スタートリストをみると私のエイジのスロット数は4と予想されたが、欧米から競合がかなり参加しているのが判明した。みんな同じよう考えなのだろう。楽勝でスロット獲得と思ってたのが一転、相当タフなレースが予想された。

そして迎えたレース当日。

スイム(1.9km)

今回はスイムの自己申告タイムによる3人毎のローリングスタート。バトルを回避でき、安全である反面、エイジによるウェーブスタートと違って、自分がエイジグループのどの位置にいるのか最後までわからないという欠点がある。僕は25〜30分の後方で待機。スイムのアップは禁止だったので、ウエットスーツを着てから陸上で15分くらい走り、スイムスタート直後の過呼吸防止に努める。透明度はそう高くないものの、湖のため波もなく非常に泳ぎやすい。スイムを終わって陸に上がるとびっくり、競争相手のバイクがほとんどない。

バイク(90km)

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バイクスタート時には「これでKonaは終わったな」と不安がよぎる。でも、わざわざ中国まできてるんだから、と自分を奮い立たせた。周りは大柄な欧米人だらけ。追い風の影響もあるが、平均時速40kmオーバーで突き進む。30km地点で、約10名くらいのパックになっているとき、友人がさっと抜いていく。

「速いですね!」「アベ42kmできてるよ」とのこと。ついていくかどうか迷ったが、途中で潰れるリスクが大きいと判断しパックの中で待機することにした。

40km地点でパックのスピードが落ちてきたと感じ、スピードをあげ一人旅をすることにした。平坦なコースは楽といえば楽だが、高速で常に漕ぎ続けなければならず休む時間がなく正直しんどい。バイクを終え、T2に到着して再びびっくり、バイクがたくさん。正確にはわからないが、バイクで20名抜き、10名に抜かれたという感覚。自分が何位かはさっぱりわからない。

ラン(21km)

ぱっと見たところ、前には100名近い人数がいる。やることは1つ。Konaのためには前にいる人をできるだけたくさん抜かすことだ。今までのスピードトレーニングを信じるのみ。調子は悪くない。前に、前に…

ふと時計を見たらキロ4:15で走っていた。これは途中で潰れるかもしれないという恐怖に襲われた。時計を見るのを止め、限界ぎりぎりで走る。11km地点で、この大会に出場している奥さんの応援に来ていたスペシャライズド・チャイナの社長が「小松さん、ファイトー!」と声を掛けてくれた。「うわっ、こんな大勢の中でよく見つけたな。」と、俄然パワーをもらい、気持ち的にスピードアップ。ここでは20名を抜いて、5名に抜かれたとという感覚。順位がわからないのでとにかく最後まで全く気を抜かないでゴール。時計を見ても、自分が何時にスタートしたか不明なのでタイムすらわからない。たぶん4時間35分前後か? 既に多くの欧米人がゴールしていた。

今までで一番出し切ったレースだった。ログを見返してみるとバイクは時速38km弱で走ることができたし、ランもキロ4:22で走れている。最近のガーミンはスイムから計測できるけど、僕のは古いのでバイクからしか計測していない。そのため全体のタイムがわからない。しかし今、これ以上のことを望むことはできない。これで駄目だったら仕方がない、それが正直な感想だった。

着替え終わり、アスリートトラッカーで順位を確認しようと携帯をチェックすると妻より「3位だよ、Konaとれたんじゃない?」との信じられないメッセージが。間違いがないか自分でもアスリートトラッカーをチェック。3位であること、自分の目でも確認すると、思わず涙が出てきた… 楽勝と思われた今回は、逆に世界中から競合が集う非常に厳しい戦いになってしまった。その中で出場権を獲得できたことは大いに自信になった。

今年は正月から休みなくトレーニングしてきた。ようやく休むことができる。11月中はゆっくりするつもりだ。それから2017年の世界選手権まで10ヶ月ある。練習時間は今までのようにとれないのに、アイアンマン距離を全力疾走できるのか?不安だらけだけど、50歳の新米パパによる子育てと世界選手権完全燃焼のストーリーを校了させたい。

以下タイム。想定タイム通り。(でもこれ以上いいタイムは現行の実力では出ないだろう。。。)

 

距離

タイム

順位

Swim

1.9KM

30:18:00

10

Bike

90KM

2:23:36

6

Run

21KM

1:32:11

3

T1

 

3:33

 

T2

 

3:06

 

 

 

4:32:44

 

小松亮

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