2017.06.20

五感に響くパフォーマンス。新登場、TURBO COTTON 28C

太さは正義だ。新登場したTurbo Cotton 28Cの第一印象と総合性能を表すには、まさにこのひと言なのです。

太さは正義だ。そんなことを言い出すと「はぁ、パイセン、軽薄短小すら死語、ゆとりもさとりも超えたシラケタ時代に何言ってんすか」と、若者に寄ってたかってイジられそうですが、Turbo Cotton 28Cの第一印象と総合性能を表すにはまさにこのひと言なのです。こんにちは、SBCU先生の佐藤です。ありきたりの情報だけでなく、走りこんだからこそわかるSPECIALIZED製品のよさをお届けしましょう。

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●見て太い! 26をしのぐ28の衝撃
まずもって太い。見た目に迫力を感じます。今回はCLX32ホイールに装着してテストしたのでより太く見えます。リムが内幅21mmなので28Cのタイヤを取り付けても、加重に対して不用意に変形することなく本来の性能を発揮できるでしょう。

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太いなあ、と感じ詳細をつぶさに検証していくと、サイドケーシング(アメ色の繊維部分)の距離が意外と短いことに気づきます。これは幅28mmに対してトレッド(実際にタイヤが路面と接地する部分)の割合が高いことの表れで、同モデルの26Cと比べてケーシングの露出部分はほとんど変わりません。つまり、断面周長に対してトレッドが長く、実際に26Cと比べて8mm長い設計を採用しています。


(下が28C、上に重ねているのが26C)

そして、26Cがデビューした際に受けた衝撃よりもインパクトがあり、後述しますが走行性能そのものも、24Cから26Cへのそれよりも、今回、26Cから28Cの変化のほうが断然大きかったのです。

やる気にさせるサウンド
さて、走り出して市街地と住宅地を抜け、田んぼの真ん中、クルマが少ないエリアに進むと、コーっと乾いた走行音が耳に入ってきます。空気との摩擦もあるでしょうが、一層しかない薄いケーシングの上にブラックベルト(貫通防止シート)をのせ、その上にはトレッドしかない極めてシンプルな構造がもたらす高音のサウンドは、やる気にさせる音(サウンド)を奏でます。単なるタイヤが、視覚とともに聴覚に訴える刺激は期待感を高め、モチベーションを増幅する装置に昇華するのです。チューブラー構造をベースにしたコットンならではの芸当といえるでしょう。

ゼロ加速も小気味よく
この間、市街地の信号停止がたくさんあったわけですが、太タイヤにつきものであったゼロ加速のもたつきはほとんど感じません。普段はS-Works Turbo 24C、あるいはTurbo Pro 24Cを使っていますが、それに匹敵する加速感を得られます。

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ちなみに同じ28CのS-Works Turboと比べても軽快感があり、驚いたことに重量はCottonのほうが20グラムほど重くできています。重さは乗っているぶんには全く感じません。それは、トレッド幅がバイクを倒した際にもグリップの安定を、ケーシングの弾力性がこのような運動性能をもたらしているからでしょう。ケーシングは製品名のとおりコットン製ですが、実際はポリエステルを混紡しており、いわばストレッチデニムのような柔軟性と、変形に対して高い復元性が発揮されるのです。

太さイコール外径アップ


そして、この柔軟性は荒れた路面で大きなメリットを生みます。たとえば、市街地の道路の路肩。砂利やゴミ、側溝の網、マンホールなど、走行時の安定を乱し、タイヤをパンクさせる要素がたくさんあります。さすがに画鋲やクギなど鋭利な金属は無理ですが、ある程度の障害物はラインを変えることなく乗り越えることができます。まさにマウンテンバイクが29インチ化した時の衝撃を上回る感動と、走行パフォーマンスの向上が得られるでしょう。今回、1日で225kmを走行した際に主要幹線道路の割合が多く、やむを得ず路肩ギリギリを走行する局面があったのですが、ゴミにも凹凸に対してもパンクの不安なく走ることができました。

止まらないモーメンタム
モーメンタム=慣性ということですが、これもTurbo Cotton 28Cを表すキーワードのひとつです。タイヤ呼び寸法の大型化は単に幅が大きくなるだけでなく、外径も大きくなることを意味します。ロードの場合はマウンテンバイクに比べて、外径アップの効果に気づいていないライダーが多いのではないでしょうか。このメリットを特に感じたのは、東京から松本までの225kmで、甲府から白州を越えて富士見町に入るあたりでした。この付近は5〜8パーセントほどの傾斜が大きなうねりのように続く地形で、ペダルを止めてもタイヤが勝手に回っていくような感覚で走り続けることができます。また、川沿いのフラットな地形では、普段の自分の脚力にはない、35km/hを超えてからの伸びしろ、40km/h付近での気持ちよい巡航感が感じられます。

スピード持続力が走り方を変える
また、後日、ロード練習に仲間と出かけた際、傾斜8パーセント・距離200m程度の短い坂でアタックがかかるような局面がありました。すばやくペースアップして後続をちぎろうとする仲間に対して瞬間的なレスポンスは遅れたのですが、数十メートルを先行する仲間は徐々に失速、対して自分は徐々に差を詰めて追いつくことが出来ました。

脚力の差はさておき、ここで申し上げたいのは、傾斜があっても衰えにくいスピード持続力です。つまり、カウンターアタックに同調するには多少もたつきがあるが、レスポンス差が先行を許すほどの差には広がらないということ。むしろ、タイヤ特性によってペースを乱さず、ジワジワと走り続けることができるところがこの製品のメリットであり、長距離で生かされる大きなメリットです。とくに信号の少ないエンデュランスライドや、ツール・ド・おきなわ(完走が主眼)のような公道封鎖型のレースではそのメリットを最大限に生かせるでしょう。

なめらかな加速感と高いグリップ
ちなみに指定空気圧は85〜95PSIで、95PSIが約6.5気圧相当なので、この数値からスタート。体重は72kgあり、バイクはS-Works Tarmacにアルテグラの組み合わせ。

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記事執筆までに1日200km超のエンデュランス含め、計700kmほど走りました。その結果、私のようにエンデュランスも楽しみ、ロードレースや(あるいはそれに準じた練習ライド)普段の通勤までを、1台のバイク、しかも同じタイヤで走るライダーにとっては、高めの空気圧がおすすめ、という結論に至りました。6気圧まで下げると、ゼロ加速の際やコーナリングでもたつく印象があり、一方でグリップ感は空気圧の多寡で大きく変わることがなかった故の結論です。これはトレッド素材のグリプトンが第2世代に突入し、さらにグリップが向上したことと無縁ではありません。したがって、体重が軽いライダーやスピード域の低いライダーであれば、空気圧を落としてクッション性を高めるというセッティングが有効です。

新コンパウンドでハイグリップ、長寿命
障害物を踏んだ際やブレーキング砂利などを巻き込んでトレッド面が傷つくチップカットという現象があります。24C、26Cではこれを避けるためにブレーキング時も注意していたものですが、第2世代のグリプトンではあまり気を使わずとも、コンパウンド特性により傷をつけずに弾いてくれるようになりました。結果、タイヤの寿命も長くなるでしょうし、路面コンディションを問わず走ることができる非常に心強いポイントです。

悪路はどうか?
今回のテストにあたり、10kmほどグラベルを走行してみました。通常、ロードタイヤで悪路や里山を走るとトレッドの損傷よりも、サイドケーシングの傷みが気になるものです。このTurbo Cotton 28Cはトレッド面がサイドまで回りこんでいることもあり、キズやカットもなく走行できました。

センタートレッドにヤスリ目パターンが刻まれていることもあり、グラベル走行に十分なグリップ、ブレーキ性能を発揮してくれます。舗装路と同じ空気圧で走りましたが、クッション性が損なわれることもなく、リム打ちパンクの心配もなく快適に走ることができました。ケーシングのストレッチ性能、トレッドのコンパウンド、すべてがかみ合って高い走行性能を生み出していることを実感します。トム・ボーネンお墨付きはダテではありません。

さいごに
太さは正義、五感に響く走行性能と冒頭に書きましたが、その本意はすべてのライダーにメリットがあるということ。トム・ボーネンのために、パリ〜ルーベのために生まれたタイヤではありますが、これを使わないテはありません。あえて、限定されるとするならば、ライダーの価値基準、お財布の具合だけかもしれません。

ご注意:タイヤクリアランスはご使用のフレーム/フォーク、装着するリム幅によって変化します。お買い求めの際は、正規ディーラーにてご確認をお願い致します。

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