リエージュ〜バストーニュ〜リエージュに挑むボーラ・ハンスグローエ(1)チェーザレ・ベネデッティ選手インタビュー
リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ2019へのボーラ・ハンスグローエの挑戦。現地でのチーム関係者インタビューを全3回にわたってお届けします。
■春のクラシックシーズンを締めくくる「ラ・ドワイエンヌ(最古参)」
その名の通り、ベルギーのリエージュをスタートし、バストーニュまで走り、折り返してリエージュに戻るワンデーレースだ。1892年から行われている最も長い歴史を持つレースであり、「ラ・ドワイエンヌ(最古参)」とも呼ばれている。
舞台はベルギー南部・ワロン地方の丘陵地帯。アムステルゴールドレース、フレーシュ・ワロンヌと同じくアルデンヌクラシックに分類される。アルデンヌ三連戦のフィナーレであると同時に世界5大クラシック「モニュメント」の1つであり、難易度の高いコースが特徴。コース全長は256q、延々と続く厳しいアップダウンにより獲得標高は4,000mに達する。クライマー寄りの選手に勝機があるレースのため、例年クラシックスペシャリストに加えてグランツールなどで活躍するステージレーサー達が多く参戦する。
ベルギー特有の変わりやすい天候もこのレースの特徴の一つ。レース当日は冷たい雨。©Keisuke Kitaguchi
この格式も過酷さも最上級のクライマーズクラシックに参戦するボーラ・ハンスグローエの選手とチームスタッフに、レース前日の4月27日にインタビューをすることができた。忙しい準備の合間を縫って協力してくれたチームに感謝しつつ、まずはチェーザレ・ベネデッティ選手(イタリア)のインタビューを紹介します。
ボーラ・ハンスグローエのルーツであるチーム・ネットアップ時代からの生え抜き選手と言える31歳。クラシックからステージレースまで幅広いレースで活躍する、頼れるアシスト選手だ。©Keisuke Kitaguchi
■クラシックシーズンの過ごし方
―今回出走するリエージュ〜バストーニュ〜リエージュについて伺います。このレースは好きなレースですか。
―明日は僕にとっては6回目のリエージュ〜バストーニュ〜リエージュだよ。短い登りのレースは僕の脚質に合っているからね。好きなレースって、特に理由はなくて、フィーリングで好きなんだよね。
流暢な英語でインタビューに答えてくれたベネデッティ選手。言葉を丁寧に選びながら話す姿から、真面目で誠実な人柄が伝わってくる。©Keisuke Kitaguchi
―クラシックシーズン中はレースが連続しますが、選手はどんなスケジュールで動いているのですか。
―6月まではレーススケジュールが詰まってるね。でも実はアルデンヌクラシック三連戦の間は、ずっと同じホテルに泊まっているんだ。初戦のアムステルゴールドレースの3日前から同じホテルに滞在している。アムステルゴールドレース、フレーシュ・ワロンヌ、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュは近い地域で開催されるから、同じ場所を拠点に動くことができて便利だよ。
ちなみに、移動はすべてチームバスを使っている。フレーシュ・ワロンヌ前日にはチームバスで近くまで行って、フィニッシュ前の数キロを試走した。昨日(リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ開催2日前となる4月26日)もチームバスで移動して、フィニッシュ前85kmを試走してきたよ。
なんと取材はチームバスの中で実施。バスの中には選手のリュックやシューズが無造作に置かれていた。©Keisuke Kitaguchi
―移動は負担にならないとはいえ、レースが続くから大変ですよね。そんな忙しいスケジュールの中で、選手はどうやって体調管理をしているのですか。
―約10日間の間にアルデンヌクラシック三連戦が続くんだけど、実は体調管理はそんなに難しくないんだ。
ワンデーレースは1日全力でもがかないといけないからハードだけど、ステージレースと違って毎日レースが続くわけではないから、レースとレースの間はゆっくりできるんだ。レースとレースの間が2〜3日空く時は、一日4〜6時間くらいトレーニングをするようにしているよ。
食事には気を遣うかな。レースのない日には食べ過ぎないようにしないとね(笑) ちなみに好きな食べ物はスープだよ。
―スープ!やっぱりヘルシーなものがお好きなんですね。
トレーニング前の時間をインタビューに割いてくれたベネデッティ選手。
レース前日は雨のため、ローラートレーニング。手前はジェイ・マッカーシー(オーストラリア)。©Keisuke Kitaguchi
■チームについて
―チームについてお伺いします。ボーラ・ハンスグローエはどんなチームですか?
―そうだねえ…あ、スポンサーをしてくれているボーラ社のキッチンシステムは持ってないんだ。マンションを買った時は既にキッチンが付いていたからね(笑)もし新しいのを買う時が来たら、もちろんボーラ社のものを買うつもりだよ!
システムキッチンは置いといて、ボーラ・ハンスグローエは良いチームだよ。チーム・ネットアップの頃からずっとこのチームで育ってきた。オーナーは元プロ選手で、自転車を愛し今も自転車に乗っている。情熱を持ってチームのためにスポンサーを集めてくれているね。
スポンサーのボーラ社のキッチントラックもレースに帯同していた。©Keisuke Kitaguchi
―ペテル・サガン選手(スロバキア)が参加した前後で、チームの雰囲気は変わりましたか?
―彼が来たことはチームにとってプラスだよ。けどペテルはインタビューに対応したりファンと交流するために時間が必要だから、チームバスに乗るのが以前より遅くなったかもしれない(笑)
チームバス内にはコーヒーサーバーも。レース後の一杯はきっと格別だろう。©Keisuke Kitaguchi
■スペシャライズドの機材について
―スペシャライズドの機材についてお伺いします。お気に入りのバイクはありますか。
―マウンテンバイクかな(笑)個人的にスペシャライズドのマウンテンバイクを持ってるんだ。
ロードバイクだったらTarmac Discが好きかな。オールラウンドで乗り心地もシャキッとしている。山でも速いし、コーナーや狭い道でも操作性がいい。ちなみにトレーニングバイクもTarmac Discだよ。
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平坦なレースであるエシュボルン〜フランクフルト(5月1日開催)でもTarmac Discを使っていたベネデッティ選手。他のメンバーはVengeだった。本当にTarmac Discがお気に入りのようだ。©Keisuke Kitaguchi
―ボーラ・ハンスグローエは今年からすべてのレースをディスクブレーキモデルのバイクで戦うことを表明しています。選手にとってディスクブレーキのメリットは何だと思いますか。
―ディスクブレーキは、レースにはパーフェクトだね。 リムブレーキと比べてディスクブレーキの方が反応が早いし、レース中の突然のブレーキでも対応できるのがいいね。
―ホイールはRoval CLX50と32のどちらが好きですか?
―僕はいつもCLX50を使っているよ。リムハイトが50mmでも軽いし、登りでも使える上に、空力も良い。平地で速く走れて、かつ横風の影響も受けにくいリムハイトだと思うよ。
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メカニックバスにもたくさんのRoval CLX50が積まれていた。©Keisuke Kitaguchi
―お気に入りのスペシャライズドの製品はありますか?
―S-Works7のシューズかな。足のことを考えて作ってあるし、僕は足の幅が広いんだけど問題なく使える。
柔らかい素材でスペースも適度にあって快適だよ。
ヘルメットだったらEvadeが好きだ。見た目がすごくかっこいい。頭を覆う面積が大きいから、今日みたいな雨の日にも使いやすいね。
S-Works7Shoesをチェックする ©brakethrough_media
―ヘルメットといえば、最近のスペシャライズドのヘルメットにはANGiが導入されていますよね。万が一転倒をした際に予め登録しておいた連絡先にそれを知らせるセーフティビーコンの機能が備えられていますが、ベネデッティ選手は誰をANGiの連絡先にしているのですか。
―チームだよ。チームが連絡先になっていれば、何か問題があったときにすぐわかるからね。
チームは選手に何かあったとき、すぐに駆け付けられる体制を取っている。昨年、あるチームの関係者が事故に遭って行方不明になったことがあった。StravaのGPSで発見されたらしいけど、そういう万が一の時のことを考えるとANGiはすごく大事だよね。
ANGi付きヘルメットについて>
S-Works Evade U ANGi Mips Helmetをチェックする>
■ベネデッティ選手自身について
―ベネデッティ選手自身のことをお伺いします。好きな選手を教えてください。
―現役選手の中ではアレハンドロ・バルベルデ選手(スペイン/モビスター・チーム)かな。僕が若いころからずっと見ていた選手なんだけど、その彼と一緒にレースができるのは素晴らしいこと。プロトンの中でも大きな尊敬を得ている選手なんだ。
39歳という年齢であれだけの走りができる選手は他にいないと思う。バルベルデが勝った2018年のインスブルック世界選手権、実は友達と観に行っていたんだよ。
インスブルック世界選手権を現地観戦していたというベネデッティ選手。筆者達も現地観戦していたので、もしかしたらすれ違っていたかもしれない。©Keisuke Kitaguchi
―最後の質問です。日本に来られる予定はありますか?
―今のところ予定はないんだ。でもジャパンカップに行ってみたいと思っているよ。シーズンの最後だからそのまま観光ができるしね。日本にはまだ行ったことがないから、ぜひ行ってみたいな。
―レース前日のお忙しい中ありがとうございました!明日のレース頑張ってください。応援しています。
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終始穏やかな笑顔でインタビューに応じてくれたベネデッティ選手。レースシーズンの過ごし方やチームの裏話まで、現役のプロロードレース選手にしかわからない話を沢山聞かせてくれました。
トレーニング中にやってきたファンの子供にも優しく対応していたベネデッティ選手。「人格者」という言葉が似合う選手である。©Aya Ikeda
■今回の記事で紹介した選手-プロ選手チップス
記事の中で紹介した選手達の特徴を、小ネタも入れてカード形式でお届けします。
レース観戦中など、この選手どんな選手だっけ?と思い出してもらえれば幸いです!
【筆者紹介】
池田 綾(アヤフィリップ)
サイクリングライター。取材場所はなんとチームバス。中はとても広く快適で、選手達もリラックスできそうです。今回インタビューに応じてくれたベネデッティ選手はリエージュ〜バストーニュ〜リエージュ終盤で追走集団先頭を牽引。チームを支える走りで魅せてくれました!
北口 圭介
インタビュアー兼写真担当。プロチームと同じ自転車を買うことが趣味の、自他ともに認める自転車好き。自身も所有するS-Works Tarmac DiscやRoval CLX50をベネデッティ選手がイチオシだったのがうれしかったです。重要なレースの前日にすごく気さくに親切にインタビューに応じてくれたベネデッティ選手の大ファンになりました。
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