2019.11.14

トライアスロンバイクSHIV DISC本格始動

アイアンマンワールドチャンピオンシップを戦うエイジ選手達。今年のコナでの新型Shiv Discの使用について大塚 修孝さんのレポートをお届けします。

今年もアイアンマンワールドチャンピオンシップが開催された。

やはり、トライアスロンの世界では、この10月に始まり、10月に終わると言っても良いだろう。それだけ、注目となっているのがこの大会なのだ。今年もコースレコードが出るなど進化の止まらないアイアンマンだ。女子では、Lucy Charles-barclay(PRO GBR)がSHIVを使用して2位となっている。そして、昨年、このハワイでは世界同時発表となったSHIVもデリバリーが始まり、エイジ選手においてもデビューとなっている。

■アイアンマンワールドチャンピオンシップ
トライアスロンの醍醐味はロングディスタンス。そのロングの元祖がアイアンマンであり、その頂点が、コナで開催されるこの大会で、昨年40周年を迎えている。制限時間は17時間と長いため、参加人数にも限界はあると思うが、年々、参加者数も増やし、またコースレコードを更新するなど、大いに盛り上がっているのが、ハワイのアイアンマンなのだ。

文字通り、チャンピオンシップとして、最速のアイアンマンを決定するのだが、トライアスロンの象徴として位置づけられたこの大会は、各バイク、機材、用品などのメーカーの開発のターゲットとなっている。そのため、そこでの選手による「使用状況」などは、トライアスロン界の注目となっているのだ。

■トライアスロンのSPECIALIZED
スペシャライズドは、世界の最大手のメーカーであり、アメリカを象徴するブランドだ。創業は、1974年、MTBを初めて量産したメーカーで、現在は、ロードレースからトライアスロンまで、幅広く、トップレベルのサポートもしている。2000年に始まったツールドフランス参戦は、今年で20年目となる。そして、トライアスロンでもオリンピックからアイアンマンまで、徹底した開発とサポートを行っている数少ないメーカーだ。昨年第3世代(フューエルセルのなかった第1世代、前作、今作)となる、このSHIVをトライアスロンの聖地「コナ」で発表して話題となっている。

■SHIV
トライアスロンバイクのためのコンセプトは「AERO」「FUEL」「FIT」だ。

まずは、エアロダイナミクスだ。このモデルを象徴するキーワードでもあるだろう。フロント周りのエアロダイナミクスを大きく向上させている。ボリューム感のある幅広のフロントフォークは「ブレード状」となり、リアのフューエルシステムも、大きなブレードだ。横方向の面積が大きく、エアロダイナミクスの徹底を否応なしに感じさせてくれる。次にフューエルは、リアの大きなスペースを利用している。実は、フューエルのためのスペースではなく、あくまでも「エアロダイナミクス」の結果なのだ。同時に、そのスペースを前作SHIVでも採用していたフューエルシステムにしているということなのだ。これはやはり、「スペシャライズドのトライアスロン」という定義とも言えるだろう。

そして、フィットは、ピンポイントとなるトライアスロンの「DHポジション」において、ライダー優先の発想が求められている。Retul FITからのフィードバッグが活かされた各部の調整幅、また、DHバーがブレーキラインと絡まないようにされているため、実際の調整作業の迅速性なども高く、「次世代型」として、今可能な限りの造り込みがなされている。

そして、4つ目と言えるのが、「ユーザビリティ」だろう。トライアスロンは海外や遠方への遠征も少なくない。そこで課題となるのが、パッキング時のし易さとその保護性がテーマとなる。ベースバーは可変式となっていて高さの調整が容易に可能だが、完全に下を向けて、「収納状態」に折りたたむことが可能となっている。この機能は選手にとっては極めて重宝となる。

いずれにしても重要なことはバランス。相反することをいかに融合させるか、その総合的な開発力が求められている。現在、「トライアスロンバイクの開発」をできるメーカーはどのくらいあるのだろうか。スペシャライズドの3テーマとユーザビリティなど極めてその開発が難しいジャンルであり、その開発がそのメーカーの「技術レベル」を表現することになる。

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■SHIV使用率
今年のアイアンマンワールドチャンピオンシップにおける新型モデルの使用率を調べてみた。もちろん、発表、リリースのタイミングなど、同時ではないので単純な比較は難しい。

SHIVは昨年コナで世界同時発表となり、サポート選手5名と関係者1名の計6台が使用されていた。そして、年が明けデリバリーが始まり、エイジ選手の使用が始まったため、今回のコナが実質の本格デビュ―と言えるだろう。

結果は、下記の通りだった。

Brand

Model

台数

総台数

使用率

SPECIALIZED

SHIV

33

183

18.0%

A社

Aモデル

33

196

16.8%

B社

Bモデル

57

479

11.9%

C社

Cモデル

1

10

10.0%

B社

Dモデル

19

479

4.0%

B社

Eモデル

5

479

1.0%

D社

Fモデル

1

114

0.9%

B社

Gモデル

2

479

0.4%

※Counted by Triathlon GERONIMO

結果は、やはりSHIVの動きが良いことが分かった。台数は、まだ満足できるものではないが、明らかに「勢い」が伝わって来ている。やはり、前述の通りバイクの基本性能の高さが理由と言えるが、それだけだろうか。

メーカーとしてのポテンシャルの高さがプラスイメージに繋がっている。自社の風洞実験施設ウィントンネルや、元々MTBの量産から始まったメーカーだが、MTBでの「ディスクブレーキ技術」など、その「造り方」の深さ、フューエルシステムなどの「独自発想」やRerul Fitの活用など、期待に応える力が十分であるということだ。

前作SHIVは、2011年にコナで発表し、2012年モデルから新型が出るまで7年というロングセラーの人気モデルだった。今年の全体のシェアでは、4位となっているが、実は、2011年も4位だった。やはり、切り替えのタイミングでは、不利となることが多い。したがって、2020年以降は、大きく伸びてくることが期待されるだろう。

■SPECIALIZED ZWIFT ACADEMY TRIチーム
もう一つの話題。ひときわ目立つ、「オレンジ」のSHIVが何台もあった。これは、ZWIFT が主宰する「ZWIFT ACADEMY」のトライアスロンチームだ。

トライアスロンチームはスペシャライズドが、メインパートナーとなりサポートしている。そのスペシャライズドのサポート選手でもある、プロ選手のTim Donや昨年4位のSarah Trueなどが、メンターとして指導にあたっている。メンバーはエイジ選手に限っていて、1次、2次と厳しいセレクションの中で最終的に25~50名に絞られる。したがって、このチームは、本気でアイアンマンワールドチャンピオンシップを狙うためのエリートエイジチームを目指していて、参加メンバーのそこへの想いは強く、競技レベルも極めて高い。

そして、結果も凄かった。Ruth Purbrook(F30-34 GBR)選手は、プロを除く女子エイジ全体の優勝、他にもエイジ優勝や上位入賞など、初年度ながら最高の結果を出していた。

バイクは、ご覧の通り、ZWIFT専用のカスタムカラーとなったSHIVだ。ロゴは、「SPECIALIZED」と入っている。これは、通常のモデルであれば、下位グレードの「エキスパート」となるが、中身は、「S-WORKS」となっている。

来年2020年のチームはすでに募集が始まっている。

トライアスロンはDoスポーツ。エイジ選手に絞ったこの企画は面白い。ツールドフランスからロング、ショートのトライアスロンまで、トッププロを完全サポートするスペシャライズドが、アイアンマンの特徴的なトップエイジ選手もサポートするこのチームの今後の動きに注目したい。

■日本国内におけるSHIVの動向
昨年、コナで世界同時発表となったSHIV。まず、世界限定モデルが500台のみ先行販売となったのだが、特筆すべくは、その販売台数だった。それは、20%以上が日本国内での販売となっていることだった。国内における期待の高さは極めて大きいものがあった。性能などは前述の通りだが、国内におけるSHIVにはもう一つの理由が考えられた。スペシャライズド・ジャパンは、「トライアスロン」にフォーカスし、その注力度が高いことや社員がトライアスロンを楽しむなど、その関わり方にもパッションを感じ取れるだろう。スペシャライズドの本国では、「ランチタイムライド」などを楽しんでいるが、同様に、そのスタイルが、日本国内では、「トライアスロンのスペシャライズド」としての様相を呈してきている。

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6月開催のアイアンマン70.3セントレア知多半島ジャパンにおいては、10台のSHIVが確認されている。5月のデリバリーでありながらも早々に投入されていることに驚かされた。そして、今回のコナにおいても全選手中33台確認されているが、日本人選手も5名が使用していた。国別ではアメリカ(6台)に次ぐ第2位の使用台数であり、各国における使用率では、堂々の第1位となっている。日本人選手に人気が高いというデータが出ている。
SHIVの実力は世界トップレベルと言えるだろう。来シーズンの国内のロング、ミドルディスタンスの大会での使用率は、高まることが期待される。

国内での展開モデルは、下記の通りだ。



Gloss Golden Yellow/Vivid Pink/Satin Black

Satin Carbon/Gloss Holographic Foil

@S-Works Shiv Disc
フラッグシップモデルとなるS-Worksだ。AERO、FUEL、FITなどトライアスロンバイクの「新定義」の代表格とも言えるモデルだ。ホイールのリムハイトなども即レース仕様のこだわりアッセンブルとなっている。また、軽量性を優先で使用する場合、中級者の使用も可能だろう。



Gloss Metallic Crimson/Dove Grey


Satin Carbon/Gloss Holographic Foil

AS-Works Shiv Disc Module
これはフレームセットとなるが、ホイールやドライブトレイン、サドルなどより好みのバイク仕上げることができる。対象は、完成車と同様になるが、パーツによってはコストを抑えられることもメリットだろう。カラーは好みだが、赤系のメタリックは、高級感を醸し出してる。


Gloss Green Chameleon/Hyper Green


Gloss Carbon/Metallic White Silver/Clean

BShiv Expert Disc
このモデルが注目のグレードだ。上位モデルのS-Worksと同形状であるため、高いエアロダイナミクスが得られる。そして、価格だが、S-Works自体、他社と比較するとリーズナブルとなっているが、このモデルは、更に抑えられた価格で、現実的に選択時の大きなポイントとなるだろう。

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筆者紹介:Triathlon GERONIMO  大塚 修孝(オオツカ ノブタカ)トライアスロンジャーナリスト
トライアスロンに関わり28年。バイクショップ時代(22年)から、ジャーナリストとしても活動。特に、トライアスロンの頂点、アイアンマンワールドチャンピオンシップは、96年から取材を続けて今年で24年目となる。現在は、WEBマガジン「Triathlon GERONIMO」運営の他、専門誌寄稿、バイクフィッター、メカニック、スクール・イベント開催、クラブ主宰など、トライアスロンにこだわって活動している。

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