ロードレース観戦基本のキ B実際にレースを観てみよう!後編〜レース当日〜
「よくわからない」と言われがちなロードレース、今年は観戦してみませんか?見どころやポイントを全3回(と1回) に分けて解説します。
「ロードレース観戦基本のキ」第3回後編では、前編に引き続きレース当日にチェックしておくとより楽しめるポイントを紹介する。題材はJ SPORTSオンデマンドで2020年4月30日(木)まで期間限定で無料配信中の2019年パリ〜ルーベ。
「クラシックの女王」、そしてその過酷さから「北の地獄」の異名を持つワンデークラシックレースでスペシャライズドのRoubaixを駆る選手達の走りに注目してほしい。 新型コロナウイルス感染拡大の影響で多くのレースが中止・延期となる中、一部の主催者やスポーツテレビ局がファンのために過去のレースを配信してくれている。過去の名レースをじっくり振り返るのもまたよし。そんな時にこの記事を参考にしていただければ幸いだ。
「クラシックの女王」に最も愛されたバイク、新型Roubaix―パリ〜ルーベ2019
いよいよレース当日。期待に胸を躍らせながら、観戦時間までに態勢を整えておこう。
基本的にロードレースは長丁場だ。長い場合は放送も数時間に及ぶ。勝負所だけ観戦する場合も、それなりにまとまった時間レースを見守ることになる。選手と一緒に観戦する我々もしっかり完走したいところ。無理は禁物。そして少し準備をしておけば、より一層レースを楽しむことができる。
レース前日の項でも書いたが、スタートリストは直前まで変更の可能性があるので直前にもう一度チェックしておこう。
特に確認しておきたいのはゼッケンナンバー。選手を見分けるのに役立つ。応援しているチームや選手がいるなら番号を覚えておこう。更にジャージの色とデザインをなんとなくでもいいので覚えておくと、レース中どこにいるか把握しやすい。
まとまって走ることが多い選手達。ジャージのデザインやゼッケン番号で見分けていこう。
慣れてくるとお気に入りの選手は背格好や走り方で見分けられるようになる。Photo:© 2019 Getty Images
特にお気に入りの選手がいないという場合でも、応援する選手を誰か決めておくことをおすすめしたい。特定の選手を軸に観た方がレースを把握しやすいからだ。
誰も思いつかない、という方は、サガンが出場しているようならサガンがおすすめだ。何かしら目立つ動きをしてくれるし、中継にもよく映る。ジャージの袖や襟に「アルカンシェル(虹の意。世界王者経験者のみ使用可能なデザイン)」があしらわれているのに加えて、髭を生やしていることが多く見分けやすいのもナイスだ。
現役選手の中でもひときわ目立つサガン。ジャージの襟と袖に入った5色の帯は、世界選手権で勝利したことがある選手の証だ。Photo:©Bettiniphoto
2019年パリ〜ルーベでは白基調のスロバキアナショナルチャンピオンジャージを着用していた。Photo:©Bettiniphoto
さあ、いよいよ観戦開始である。用事を済ませて、事前に調べておいた勝負所の時間の少し前からレースに合流しよう。
途中からの視聴でも問題はない。どこかのタイミングで必ず実況・解説がそこまでの展開をフォローしてくれる。また、レースやチーム、配信チャンネルの公式SNSもリアルタイムでレースのトピックをアップしてくれる。是非活用しよう。
Mons-en-Pévèle, the second five-star rated sector, now for the group of @PhilippeGilbert and @yveslampaert.#ParisRoubaix pic.twitter.com/snjC5RFqD2
— Deceuninck-QuickStep (@deceuninck_qst) April 14, 2019
チーム公式SNSはレース中のトピックをリアルタイムでアップしてくれる。特にTwitterが便利だ。 筆者の所感だが、ドゥクーニンク・クイックステップは更新頻度が高いので重宝している。
ひとりで集中して観るのもいいが、もし知り合いや友人にレース観戦仲間がいるなら、SNSのチャット機能をなどで感想をシェアしながら観戦するのもおすすめだ。(あなたが観戦にハマっていて、誰か友人を引き込みたいという場合もおすすめ)
レース中に注目したいポイントだが、特に決まりがあるわけではない。自由に楽しむのが一番だ。が、それでは余りにもざっくりしていてわからない…という方のために、筆者が注目しているポイントを紹介しよう。
@ レースが行われている地方の風景
ロードレース開催は時にその地域への観光誘致の側面も持つ。したがって、コースにはその地方の名所が組み込まれることが多い。美しい景色を堪能しよう。
美しい自然の中を駆け抜けるロードレース。開催される場所や季節によって、様々な風景を楽しむことができる。Photo:©Bettiniphoto
A 観客
沿道に詰めかけた観客達の熱狂ぶりは必見だ。時にレースに参加している選手よりも気合の入った観客も存在する。
特にロードレースが盛んなベルギー・フランドル地方には熱心なファンが多い。
なんと2019年パリ〜ルーベには応援のためスペシャライズドも横断幕と旗を持ってパヴェセクションに駆け付けた。
観戦の際に是非注目してみてほしい。Photo:©Bettiniphoto
B コースのハードさ
美しくも急峻な山岳、強い風が吹きつける平坦路、雨や寒さといった過酷な気象条件―選手達は厳しいコンディションの中ペダルを漕いでゴールを目指す。ロードレースは過酷な外的環境と戦うスポーツでもある。
レースが厳しければ厳しい程、ドラマが生まれ、観戦は面白くなる。そして、数多く存在するレースの中でもパリ〜ルーベの難易度は特に高い。「クラシックの女王」の他に「北の地獄」という異名を持つこのレースでは、アップダウンや急坂こそ登場しないが、何度も登場するパヴェセクションが選手達を苦しめる。
おそらく他のどのレースよりもトラブルが多いパリ〜ルーベ。コースの過酷さと面白さは比例する。photo:©Tim de Waele
石畳の振動により、ボトルやサイクルコンピュータ―はバイクからこぼれ落ちて飛んでいく。荒れた路面によるパンクや落車は当たり前。車一台がやっと通れるかという道幅のパヴェセクションではチームカーの助けを受けることができないため、1回のトラブルが命取りになる。選手達が口を揃えて「運がなければパリ〜ルーベを勝つことはできない」と言う所以だ。
C 選手の動き
勝つためには、どこかのタイミングでライバル達をふるい落とさなくてはならない。いつどのように攻撃を仕掛けるか、どのチームも考えて動いている。それを想像しながら観戦すると、ぐっと面白くなる。以下の記事が参考になると思う。
ロードレース観戦基本のキ @ロードレースって、一体何をしているの?
戦略を抜きにして、単純に「こんな道をよくこの速度で走るな」と思いながら観戦するのも楽しい。ご自身もロードバイクに乗る方は、プロの走りの凄さを感じてほしい。
アマチュアサイクリストは走ることすら難しいという難易度の高いパヴェセクションを、プロ選手は恐るべきスピードで駆け抜けていく。Photo:© 2019 Pool
D 使用機材・装備など
選手はコースの特性によって機材のチョイスを変える。長い登りがある山岳では軽量のTarmac Disc、平坦がメインならばVengeなど、どんなバイクに乗っているかにも注目してみよう。同じレースに出るチームメイト同士でも、選手によってバイクのチョイスが異なることもある(このあたりは選手の好みもあるようだ)。
2019年パリ〜ルーベを席巻した新型Roubaix。スペシャライズドがサポートするチームの選手は全員がこのバイクをチョイスし、なんと10位以内に5人が入賞している。Photo:©Specialized
ホイールはRoval CLX32(本番ではCLX50)、タイヤはSpecialized S-Works Turbo Hell of the North tubular タイヤを使用。
スペシャライズドがサポートするドゥクーニンク・クイックステップとボーラ・ハンスグローエの選手達はなんと全員一度もパンクすることなく2019年パリ〜ルーベを完走している。Photo:© 2019 Getty Images
新型Roubaixに搭載されたFuture Shock 2.0は油圧ダンパーにより垂直方向の路面振動を吸収し、しなやかで快適な乗り心地を実現する。どのように動くか、是非実物をチェックしてみてほしい。
ダンピングはトップキャップ部分のダイヤルで簡単にオープン・クローズできる。Photo:© 2019 Getty Images
新型Roubaixについて詳しく>
オンラインストアで新型Roubaixをチェックする>
新型Roubaix開発者ジョン・コルドバさんにインタビュ―>
また、選手の服装も要チェックポイントだ。特に春先のクラシックレースでは、アームウォーマー、レッグウォーマー、更に上着を着込んだ完全防備の選手もいれば、夏のような軽装の選手もいる。選手の個性が出るところなので、注目してみると面白い。
写真先頭と2番目の選手のアームカバー、レッグカバー、そしてグローブの有無に注目。暑さや寒さを得意とする選手もいる。なお2019年パリ〜ルーベ当日の現地の最高気温は10度程度だったそうだ。Photo:©Bettiniphoto
勝負所を越え、ゴールに近づくにつれ、先頭に残る選手の数は絞り込まれているはずだ。最後の最後に勝つのは誰なのか、心拍数を上げながら見守ってほしい。長時間に渡る戦いの終わりにフィニッシュ地点で見せてくれるガッツポーズも見逃せない。
2014年パリ〜ルーベで勝利したニキ・テルプストラ(オランダ/ 現トタル・ディレクトエネルジー)は感情を爆発させながらゴール。勝利の咆哮が聞こえてきそうだ。
Photo:https://www.deceuninck-quickstep.com/en/multimedia/galleries/2468/paris-roubaix-through-the-years-2003-2019
エースを勝たせるために文字通り死力を尽くしているアシスト達。大抵の場合、彼らはエースの後に、チームカーから無線でレースの結果を聞いてからフィニッシュすることが多い。チームメイトの勝利を喜ぶアシストの表情にも注目だ。
One of the best pictures of the cycling season: the Deceuninck - Quick-Step boys crossing the finish line on the Via Roma together, with a broad smile on their face as they celebrate @alafpolak's #MilanoSanremo victory.
— Deceuninck-QuickStep (@deceuninck_qst) March 25, 2019
Photo: BettiniPhoto pic.twitter.com/QRXKF8bkm5
アシスト達がエースの勝利を祝い、並んでフィニッシュラインを切った2019年ミラノ〜サンレモ。
勝利の喜びを噛みしめながら表彰台に上がる優勝選手の表情に、思わず熱いものがこみ上げてくるかもしれない。上位入賞者のインタビューとあわせて、余韻に浸りつつ鑑賞しよう。
ちなみにパリ〜ルーベのトロフィーは、他のレースと違ってかなり個性的だ。一体どんなトロフィーかは、是非あなたの目で確認してみてほしい。
🚿 This is a well deserved shower @PhilippeGilbert! 😉
— Paris-Roubaix (@Paris_Roubaix) April 14, 2019
🚿C'est une douche bien méritée @PhilippeGilbert !😉#ParisRoubaix pic.twitter.com/jQ1OPfixZR
パリ〜ルーベ名物のシャワー室。戦いを終えた選手達は、ここで砂埃や泥を落とす。
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ロードレースの楽しみ方は様々だ。熱い展開に手に汗握るのはもちろん、推し選手を応援するのも、ひたすら機材に萌えるのもいい。無限に存在する楽しみ方の中から、あなたに合ったものを自由に選ぶのが一番。気軽に気楽に、観戦を始めてみてほしい。
【筆者紹介】
文章:池田 綾(アヤフィリップ)
サイクリングライター。全3回(と1回)でお届けしてした「ロードレース観戦基本のキ」、ロードレース観戦仲間が増えますようにという願いをこめて書きました。レース再開はもう少し先になりそうですが、この機に沢山配信されている過去の名レースを是非チェックしてみて下さい。
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