スペシャライズド「ツール・ド・おきなわ」チャレンジ Vol.3
スペシャライズド社員のツール・ド・おきなわ市民140kmレースへの取り組みを紹介する連載の第3回。
今回は、それぞれがレースをどんなふうに走りたいと思い、そのためにどんなトレーニングを積んでいるのか、そして初挑戦のスペシャライズド代表・小松が不安要素のひとつとして挙げている「補給」などについてお伝えします。
スペシャライズド「ツール・ド・おきなわ」チャレンジ Vol.1>
スペシャライズド「ツール・ド・おきなわ」チャレンジ Vol.2>
11月12日(月)開催!『74(ナナヨン)Ride in おきなわ』参加者募集中>
●実質2ヶ月でどこまでできるか?小松の挑戦
ー今回はまず、今年のツール・ド・おきなわ 市民140kmクラスに挑むにあたり、皆さんがどのようなトレーニングを積んでいるのかを伺いたいと思います。
まずは初めて本格的なロードレースに挑戦することになる、小松さんはいかがでしょう。
小松「今年もトライアスロンの世界選手権を目指していましたが、残念ながら6月の予選となる大会で敗退してしまいました。そこで疲れてしまって、7月から9月にかけてはトレーニングらしいトレーニングができていないんです。もちろん距離は乗っているのですが、今の段階(9月下旬)だと、まだ140kmのレースを走りきれるかどうか不安があります」
スペシャライズド・ジャパン代表 小松のIronman参戦記 in Philippinsを読む>
佐藤「フィットネスレベルという意味では、今回の3人の中では小松さんがいちばん優れている。その点は心配いらないと思うのですが、マスドロードレースの走り方に対応できるかどうか」
小松「集団走行のレースを経験するために9月の『富士チャレンジ200』にエントリーしたんだけど、当日はものすごい雨で、メイン集団に着いていくこともできなかったんです。ふだんのトライアスロンの練習で、雨の日はバイクに乗らないので、怖かったというのもあります。途中から小さな集団で走ることができましたが、まだまだ練習が必要だと感じましたね」
ー日数は限られていますが、レース本番までの残り1ヶ月半で、どんなことを。
小松「インターバルを加えながら距離を乗ること、集団走行に慣れること、完走のための戦略を立てること。やるべきことは多いけど、やるしかないですね」
佐藤「レース本番までの日数は少ないけれど、集団走行やレース中の危機管理について、メニュー化して教えてくれるコーチもいるので、そういった方のアドバイスを受けるのは有効だと思います。私も以前に怖い思いをしたことがありますし、落車の経験もあるので、安藤隼人さんの「スマートコーチング」の安全講習を受けたことがあります。1年以上経っているのですが、いまも非常に役立っています。それに、スペシャライズドはライドイベントを主催することも多いこともあって、じつは今年の夏にスマートコーチングさんに企画していただいて、直営店のスタッフを中心に安全講習を受けました」●筋肉を付けすぎないことを意識した渡辺
ー3回目のエントリーとなる渡辺さんは、前回完走した時とはバイクも変えて、さらに良い結果を求めてトレーニングしているとのことでしたね。
渡辺「トレーニングは自己流なのですが、私は筋肉が付きやすい体質なので、筋肉が付きすぎず、しかし落ちないようにということを意識しながら過ごしています」
ー筋肉が付きすぎないようにというのは、どのような意図からですか?
渡辺「140kmのコースプロファイルを考えると、最初の上りでとにかく遅れないようにしたい、そして2回目の上りでちゃんと集団に残っていたい。そのあとのダラダラ坂やアップダウンは地力が試される区間ですが、しっかりと補給をとりながらクリアして、最後のダムで我慢の走りができれば結果が残せると考えています」
ーそのためには、余計な筋肉を付けないことが重要だというわけですね。
渡辺「ふだんから使っている大腿四頭筋と大臀筋、このふたつを意識して乗るようにしています。トレーニングをして乗れるようになってくると、ついつい体全体の筋肉を使って走っていました。しかし、もともと強くない筋肉を酷使すると、筋肉が付いたとしても弱るのが早いし、疲労も抜けにくいのです」
ー実際にそれを意識してトレーニングされてみて、変化は感じますか。
渡辺「今まではトレーニングしても体重が落ちるということはなかったのですが、今年は6月からの3ヶ月で体重が4kg落ちました。4kg落ちると、上りもだいぶ軽く感じます。また、比較的強度の高い練習をした翌日に、多少の筋肉痛は感じつつも、大腿四頭筋と大臀筋を意識することである程度乗れるようになりました。あとは本番まで体力まで落ちてしまわないように、コンディションを保っていければと思っています」
SBCUメンバーとの練習中に台風の爪痕に遭遇。
●自分を変えるためにコーチの指導を仰いだ佐藤
ー2017年は210kmを完走し、今年は140kmにクラス替えとなる佐藤さんは、いかがですか?
佐藤「今年の春から、弊社取り扱い店のSBC湘南藤沢の紺野元汰さんにトレーニングコーチをお願いしており、湘南ベルマーレサイクルステーション茅ヶ崎店の渡辺勇大さんからRETUL FITを受けました。フィットを受け、コーチングを受けることで、客観的な視点からウィークポイントを克服しようと考えました。その結果、乗り方が変わりましたね」 (※同グループのコーチングは今後サービスインの予定)
ー佐藤さんのウィークポイントとは、どんなところだったのでしょうか。
佐藤「これまではトルク型でケイデンスが低かったんです。平均すると、だいたい70くらいですか。しかし、長距離のレースを完走するためには、80〜90くらいは回せるようにしよう、と。そのためにはフィッティングだけでなく、カラダも作り変える必要があるということで、コーチの指導のもと取り組み始めたのが今年の4月のことです。3か月ほど取り組んでみると、自覚できるほどペダリングが変わりました。今はさらに、ケイデンスを維持しつつ要所で踏めるように取り組んでいます」
ーそもそも、コーチングを受けようと思った理由は?
佐藤「今までは、自分なりにしっかり考えて取り組んできたつもりですが、独学でした。自分なりに臨界点まで来ていると感じていたけれど、もっと全体の容量を上げたいと思ったんです。そのためには、自分よりすごい人の教えを請う必要がありました。それによってどんな変化が起きるのか、自らを被験者にしようと」
ーそして、春から取り組まれて、効果が出ている実感があるわけですね。
佐藤「得たものは大きいです。今までは直感的にやってきた“自転車バカ”だったのですが、ロードマップづくりが上手なコーチの力を借りることで、自分の考え方、取り組み方も変わってきたと感じます。自転車の楽しみも広がるし、生活にも仕事にもいい影響が出ました。何をやるにしても、ちゃんと段取りするようになったりとか。これはあまり変わってないか(笑)」
ー実生活にも生きるわけですね。
佐藤「今までは自転車バカのスキルセットでなんとかなっていたけれど、伸びしろがない。それをリセットして、頭のいい人たちのマネをする——それが、次のステップに進む手法かなと」
コーチングのおかげで、シマノ鈴鹿(ディスク部門)で2位に!(表彰後順位訂正)
●マスドロードレースの経験がない小松は補給が心配
ー本格的なマスドロードレースが初めてである小松さんは、集団走行は残りの期間で練習を重ねるとして、ほかに何か不安に感じていることはありますか? 佐藤さんや渡辺さんに聞いておきたいことなどがあれば。
小松「完走するためには補給が重要だと思っています。トライアストンであればエイドステーションで補給できるわけですけど、ロードレースの場合はどうすればいいのかわからなくて。補給はどうしてるの?」
佐藤「スタートの時点では、ダブルボトルにして背中にもう1本ボトルを入れていますね。私の場合、背中のボトルにはカロリーが摂取できる濃いめのドリンクを入れて、自転車のボトルケージには水分補給のためのドリンクを入れています。オフィシャルフィードで水とスポーツドリンクはもらえますよ」
2017年佐藤がスタート時に身に着け、バイクに搭載したモノ一式。とくにレース後半は固形を受け付けなくなるので、割り切ってジェルをメインに摂取。塩分補給はタブレットを3包持っていったが足りなかった。今年の140では過去の記録をふまえつつ準備する予定。ジャージは晴天であれば、事前の着用感が非常によかったEvadeスキンスーツを着用する予定。(プロっぽく見えるでしょ)
小松「そんなに持っていくんだ」
渡辺「市民140kmの場合、2回通過する普久川の上りの2回目に、フィードゾーンがあります。その後も上り坂の区間、風の強い区間があり補給がある意味完走のカギになります。ちゃんと給水しないと後半で足がつって、関門で切れるというパターンに陥ります」
佐藤「水分とカロリーは密接です。前は固形物を持っていましたが、140kmは固形物を食べてるヒマはないんです。固形物は内臓に負荷もかかるので、ジェルオンリーですね。あとは、ミネラルをいかに摂るか。塩タブレットやカプセルはタイムラグがあるのと、携行中に溶けてしまうかもしれないという心配があります。そこで、これを試してみようかなと思っているところです」
生の塩がミネラル補給のカギとなる?
ーこれは何ですか?
佐藤「生の塩です。実は生の塩を舐めると良いと教えてくれたのは、小松さん。賛否はありますが、ダイレクトに舐めると即効性があるので、今年はこれを採用するつもりです。分量や携行方法は考える必要がありますね。パラフィン紙に包むといったことも考えていますが」
小松「今の話を聞いていると、事前にきちんと計画を立てておく必要がありそうだね」
普久川ダムの補給所でチームターマックのスペシャルサコッシュを受け取る。フィーダーは手渡した後に声をかけ、駆け寄って写真を撮ってくれた。物理的なサポートとメンタルの部分も長距離では重要だと思う。
●事前にコースをチェックして備えることも必要
ー事前の計画で思い出したのですが、昨年のインタビューで新井さんが「毎年コースをチェックする」とおっしゃっていましたね。
佐藤「沖縄入りしたらまず、クルマでコースを1周したほうがいいでしょうね。道路幅の変化など、事前にわかっているだけでも気持ちが違います」
渡辺「トンネルも面倒なポイントですね。トンネル内の集団走行を経験したことがない人も多いですし、トンネルを出た後で急なカーブもあります。そういったことは事前にちゃんと把握しておいて、レース中は自分を“しっかりもっておくこと”が大事でしょう」
小松「なるほど、事前にコースチェックはしたほうが良いね」
—沖縄は、雨が降るとまた違うんですよね?
渡辺「行ったことのある方はご存知だと思いますが、舗装が違いますよね。雨が降るととてもすべります」
●それぞれの目標をもって、いざ沖縄へ……
ー今回とくにトレーニングのお話を伺って思ったのは、佐藤さんと渡辺さんはともに複数回のおきなわへのチャレンジ経験があって、今年はどこに目標を設定して、どんなふうに走るかというイメージがあって取り組まれているということですね。
最後に改めて、どんなツール・ド・おきなわにしたいですか?
渡辺「しっかりと準備をして、機材トラブルもなく、前向きな気持ちをダムの手前までキープしたいと思います。そして、前回より良い結果を出したい」
佐藤「コーチとともにトレーニングを行なって、良い変化が起きているという手応えがあるので、その効果がどう出るか。ツール・ド・おきなわに出るための取り組みは学びの要素も多く、知識が知恵に変わるプロセスを体感することができます。出るたびに発見があるので、今年も楽しみです」
小松「目標は完走。新しいことにチャレンジする、トライアスロンだけではなく、一度違う世界を知りたいという思いです。とにかく、やってみないことには。みんなと同じ不安を体験し、それを克服することは、とても重要なことだと思っています」
—(このインタビューを行っている)今が9月中旬。ツール・ド・おきなわ2018まで2ヶ月を切っていますが、3人とも良い結果が出ることを願っています。レース後の振り返りが、楽しみですね。
佐藤:最後に、よく「機材選べていいね」とか「メーカーの人だから一般の人とは違うよね」というお言葉をいろんな方からいただきます。まったくその通りで、だからこそライダーのみなさんが数多いラインナップから迷わずに適切な製品を選ぶ船頭役ができればと常々思ってます。アタマで理解するだけでなく、今回のようにカラダを張って体験して、実際に製品を使って、ライダーのみなさんにフィードバックする、この循環がSBCU(製品/サービス普及部門)の役割であり、スペシャライズドの組織の機能なんです。事後報告の座談会もお楽しみになさってください。
Photo: Ryuta Iwasaki
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【各メンバーのセレクト】
佐藤 修平
スペシャライズドが提供する製品やサービスについて、その機能や特徴を販売店やエンドユーザーへと伝える「SBCU」のメンバーであり、フィッティングサービスを統括する。ツール・ド・おきなわでは、2014年に市民140kmを完走、 2017年に市民210kmを完走。MTBやシクロクロスの経験が豊かで、生まれつきの「自転車バカ」を仕事にもっと活かしたい44歳。
・バイク(フレーム):S-Works Tarmac Disc
・ホイール:Roval Wheel CLX 50
・タイヤ:S-Works Turbo Tire 26C
・サドル:S-Works Power
渡辺 孝二
佐藤とともに「SBCU先生」として、販売店に向けて様々な商品説明やフィッティングの研修などを行う。いわばスペシャライズド・ジャパンにおける「知識の泉」のひとり。当ブログのMTB関連記事でも「コウジくん」として、たびたび登場。筋肉がつきやすいのが悩みで、今年はその点を意識したトレーニングに励み、効果が出てきたように感じる51歳。
・バイク:S-Works Tarmac
・ホイール:Roval Wheel CLX 50
・タイヤ:Turbo Cotton Tire 28C
・サドル:S-Works Power
小松 亮
スペシャライズド・ジャパン代表。一児と猫二匹のパパであり、サラリーマン社長であり、 そしてアスリートと、三足のわらじを履く52歳。バイク180kmを含むアイアンマン・ディスタンスにチャレンジし、アイアンマン・ジャパンのエイジ優勝やハワイ・コナで開催されるアイアンマン世界選手権への出場経験をもつ。独走力には不安がないが、集団走行への慣れや補給が課題。
・バイク:S-Works Tarmac
・ホイール:Roval Wheel CLX 50
・タイヤ:Turbo Cotton Tire 26C
・サドル:S-Works Power
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【74(ナナヨン)Ride in おきなわ開催】
日本最大級のロードレース『ツール・ド・おきなわ』の余韻が残る「やんばる路」をゆっくりのんびり走りませんか?
コース設計と当日のリード役は「 サイクルステーション Bicicletta SHIDO 沖縄」の中尾峻さんが担当します。“74”(ナナヨン)って何?という疑問は当日解消されます。
期日:2018年11月12日(月)
時間:9:00〜13:00
距離:50〜60q
場所:名護市中心部(ご予約頂いたお客様には、改めてご連絡いたします)
コース:名護市内出発、北部方面往復
参加対象:当日満20歳以上で、自転車保険(対人対物含む)に加入済みの方。スペシャライズドバイク以外のライダーも大歓迎です。本イベントの集団走行と距離に適したロードバイクで参加できる方。ヘルメット、グローブ着用必須。
募集人数:20名
費用:1,500円(参加料及びお土産を含む)※ランチ費用は自己負担となります)
支払方法:現地払い、現金のみ
お申し込みURL>
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【筆者紹介】:須貝弦
万年ビギナー状態だが、それでも自転車で地元の里山をめぐることを心のヨリドコロとするフリーライター。「年に1度だけ、レースにも出ます」と書いていたが、今年は目標としていたレースが台風で中止になり残念。
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