2016.01.13

THE ART OF GETTING LOST - 迷い道の美学

冒険に関して、考え過ぎになっていませんか?人里離れた場所を泥だらけになって走るライダーの写真を、憧れの目で眺めながらこう思ってはいませんか?

「こんな場所へなんて、行けやしない」と。

保証します。それは確実にあなたの思い込みです。私たちは大冒険をしてきましたが、ちょっとした冒険も経験があります。何てことはない、些細な冒険です。その思い出はあまりに些細過ぎたため、翌日に階段を登ろうとしたときに、太ももの筋肉痛としてしか残っていないほどでした。

冒険は「壮大さ」という根拠のなさ、例えばその最たるものが、バイクを背負って濁流を進み、脇の下にはヒルがぶら下がっている、などというレベルで推し量られるわけではありません。冒険とは想像力の範囲内にあり、どんなにスケジュールがいっぱいの忙しい生活の中でも、たやすく実現できます。あなたがそうしさえすれば、の話ですが。

しかしそれは、思考をそこまで到達させる芸術とも言えます。置かれている環境次第では、「遭難する」可能性を引き出すことは難しいことがあります。救助隊を呼ぶ、という意味での遭難ではありません。時に身を任せる、つまり、「その瞬間にその場所で」さまようのです。「そんなの、気まぐれじゃないか」と言いたい気持ちもわかるので、もっと受け入れやすい言葉に換えることにしましょう。

冒険のテクニックを磨き始めるのに、今ほど適した時間はありません。あなたは勇敢大学冒険学部遭難学科を卒業したばかりなのです。

LESSON 1: PIONEERS! O PIONEERS!

教訓その一:先駆者となれ!

興味は、あなたの思考内の冒険用バッグに収められた、最も必須なアイテムの一つです。「はるか彼方」という言葉に興味を惹かれていることでしょうが、「すぐそこ」という言葉ではどうでしょう? 今、周りには何がありますか? あそこの通りはどうなっているでしょうか? あの川の向こう側は? 金曜日の仕事終わりに、数時間ドライブをしたら、どこへ行けるでしょうか? その翌日の週末は、バイクに乗って、初めての場所で冒険することもできるのです。

教訓を伝える際には、私たち自身を例に挙げて行きます。9年間をニューヨークで過ごし、特にここ数年はバイクが「調査」に対する私たちの真の才能を開花させる役に立ちました。コニーアイランドまで走り、その沿岸の遊歩道を散策しました。次に州北部の灯台を見に行きました。ブルックリンの繁華街周辺をぶらぶらし、新たな土地を開拓しました。これらに共通すること、それはほとんど毎回、ライドから得たいものという目的を定めていたことです。

コニーアイランドまでのライドでは、遊歩道の写真を撮り、お披露目しようと考えていました。灯台までのトリップは私たち自身初となるセンチュリーライドでした。ブルックリン周辺をぶらぶらしたときは、物書きや人間観察のできる隠れたカフェを探すことが目的でした。走るための目的は必ずしも壮大である必要はありません。あなたらしい目的を定めてみましょう。

この日は一眼レフを持ち、道を探してコニーアイランドまで走った。

大冒険では朝早くに出発することもある。これは初のセンチュリーライド中にマンハッタン橋を収めた一コマ。

LESSON 2: BE PRESENT

教訓その二:その場に居合わせよう

冒険とはどこへ行くかだけでなく、その道中で何を見るかなのです。先述したコニーアイランドでのライドでは、その冒険の様子をカメラに収めて行きました。インスタグラムがあれば冒険の途中でも写真を共有できるのです。ライド中に撮りたい被写体のテーマや構図をあれこれ考えることで、流れ行く景色をしっかりと吸収していることになります。これはトレーニングではないので周りを眺めてみましょう。ライド後に友達に報告する自分の姿を想像してください。その日の出来事を10枚の写真で伝えるとしたら、どれを選びますか?

写真はとびきり素晴らしい景色を写していなくても構いません。冒険とはあなたが目にしたものすべてなのです。看板、建物、道路脇のへんてこなものすら含まれます。友達のリタはライド中にマチェーテ(刃物の一種)を見つけたことがあります。私たちは、カリフォルニア州道1号線の路肩に転がっている胸パッドを目にしました。嘘ではありません。回れ右をして、証拠のために写真まで撮ったのです。

言わんとしていること、それは、私たちは日々を乗客として過ごし、たいしたことは起こらないだろう、と自分に言い聞かせることがある、ということです。サイクリストとして、健康やトレーニング、あるいは移動や通勤のために走りますが、それではとてもありきたりです。周りに目を配り、状況を観察していれば、つまり、その場に居合わせ、自分自身のストーリーの一部となっていれば、その体験により深く携わることになるのです。

これはすぐに行えることではなく、目の配り方を学ぶ必要もあるかもしれません。そのコツをいくつか紹介しましょう。

1、ライドに出かけたら、バイクを立て掛けると面白そうな建物の壁などを探し、写真を撮り、#BAAW(Bike Against A Wall)を付けてインスタグラムに投稿しましょう。独創的なものを見つけてください。このハッシュタグはとても人気があります。

2、写真のテーマを予め決めた上で、近所をバイクで探検してみましょう。例えば、オレンジ色やSという字を探す、などです。この手のライドは宝探しの要素が含まれるので子供にも適しています。

3、持ち運びのしやすいアイテムを用意し、ライドに持っていき、一週間前後の冒険を記録しましょう。アイテムは、冒険に花を添えてくれるようなものです。例えば、職場の同僚の机に飾ってあったおもちゃのユニコーンを、彼女が二週間の休暇中に冒険へと持ち出し、彼女の休暇先周辺を走るという計画を立てたことがあります。

4、ライドのテーマを決め、それを記録し、名前を付けましょう。私たちはツール・ド・タコをやってみました。これは、Specialized本社周辺で、スーパータコというメキシカン料理のチェーン店すべてを回るというものでしたが、食事を終えて次の店へと行く前に多くのライダーが満腹となってしまいました。音楽をテーマにするのはどうでしょう? レコード店をたくさん訪れ、買ったレコードを記録する、ツール・ド・バイナルなど面白そうです。あるいは、いくつものコンビニを通るルートを選び、それぞれの店で宝くじを買う、ツール・ド・レディーラック(幸運の女神)は? 何でも構いません。自分で考え、それに賭けてみてください。

アイダホ州で#BAAW用にポーズを取る筆者の愛車、パンプキン・バター。

イベントを作り、人々を刺激しよう。ツール・ド・ツリーの参加者は、毎回増加中。

落書き狩りなどテーマを決めよう。ニューヨーク州ダンボでの一コマ。

二週間、この子をライドの度に連れ回し、撮影に適した場所をいくつも見つけた。

LESSON 3: ADVENTURE SHARED = ENJOYMENT2

教訓その三:冒険を共有すれば、楽しみは二倍に

皆が怠けているのではありません。ただ彼らは実際に何かをするまで、何をしたいのかがわからないだけなのです。冒険の相棒を迎え入れましょう。少しだけ背中を押してあげれば、外へと繰り出し、冒険の才能を見つけられる人がベストです。

筆者は一人で走ることが多いですが、経験を共有することは間違いなく特別なことです。話し相手を見つける以上のことが得られます。楽しみや辛さ、食事や写真、誰かと分かち合えるストーリーを共有しましょう。

告白します。冒険以上に一番の喜びは、共有したストーリーを目一杯楽しんだと伝えてくれた人々によるものがほとんどです。私たちは世界最速のライダーではありません。でも、これが自分の力であると知ってため、密かに後ろめたくも喜んでいます。あなたにも、この力を手にできます。人々を刺激し、ライドに関する知識を与える力のことです。

“YOU TOO, CAN BE AN ADVENTURE ENABLER.”

「あなたにも、冒険はできる」

この道を走るためだけに、この日は友達のジョンを連れ出しビッグサーまでライドした。彼の気分はまずまずのようだった。

冒険を可能にし、友達を巻き込もう。

LESSON 4: PLAN, RIDE, DO

教訓その四:計画、ライド、実行

もうおわかりですね。卒業式は以上です。

カリフォルニア州エウレカ峡谷で見つけた、素敵なアドバイス。

関連記事:
SEEK & ENJOY ALASKA前編  (2016年1月4日)


カテゴリ
キーワード