2019.11.22

竹谷賢二選手KONAへの挑戦 後編

アイアンマンワールドチャンピオンシップに8年連続、8度目の出場に新型ShivDiscで挑戦した竹谷賢二さんに迫ります。

竹谷賢二選手KONAへの挑戦 前編はこちら>

今年もアイアンマンワールドチャンピオンシップが終わった。

風と陽射しが強く、湿度も高い、コンディションだったが、終わって見れば、コースレコードで沸いたコナだった。今年も8時間切りの「SUB8」が2名の選手によって達成されている。昨年は、コナの名物でもある強い風「KONA WIND」が吹かず、過去最高レベルのグッドコンディションに好記録が出ていた。今年は、例年通りの風が吹く中で、コースレコードとなっていることは、この競技の完成度の高まりを実感する。そして、一つ言えることは、トライアスロンはバランスであり、3種目を制することで、高い目標に近づくことができる。そんなことをあらためて確認できた今年の大会だった。

そして、竹谷選手(TK)の8回目の挑戦も終わった。

結果から言えば、目標タイムの9時間22分から1時間の遅れに終わった。苦手としているスイムは、練習の成果が出て、ほぼ想定通りのタイムでフィニッシュ。バイクも良いポジション取りができたが、後半からその予兆と思われる変調が起こっていた。少しずつ影響し、ラン後半では、完全にペースが落ちてしまっている。それでも「完走はしたい、しない選択肢はない。」と最後までベストを尽くした。一体何が起きたのだろうか。

スイムは、泳ぎ易かった。

やはりウェイブスタートが功を奏している。同じレベルの選手に「整理整頓」されたようなイメージだったと言う。

「例年よりも周りが見えていました。泳ぎ始めて5分、10分一緒だった選手が、折り返して、フィニッシュライン近くまでいました。今年は良くコントロールできたのではないかと思っています。」

例年、落ち着いたピアだが、今年は波が立っていた。そんな中、目標タイムの1時間7分に対し、1時間8分で終えている。これはとても良い着地だったと言う。

「ペースが掴みづらく、泳がされていた例年のスイムに比べ、とても良いイメージでバイクに移ることができました。トランジットもスムースでした。練習の成果が出ているので、来年までにはもう5分縮めたいですね。」

ウェイブスタートについても述べている。追いついた遅い男子選手がいて、そこに紛れている女子選手は5分速いわけで分かり易い。できれば来年もこのフォーマットが望ましい。

「一斉スタートの醍醐味はあるかもしれませんが、少なからず、自分たちは、ベストパフォーマンスをしたいので、誰かに邪魔されたくないのです。自分のレースができるという意味では、ウェイブスタートはしかるべきだと思いますね。」

バイクの出だしは良かった。

バイクは、スイムのウェイブスタート化により、位置取りは安定し、例年の「抜きまくる」と言うような状況には陥らず、ペースをコントロールしやすく走ることができたようだ。

「陽射しが強く、いつもより早いタイミングで、往路のワイコロア辺りから水をかけ始めていました。これがあとのランに影響した原因の一つと考えています。あと、強風が話題となりますが、最も強い時がレベル5とすると、レベル4くらいのイメージでした。特に復路のカワイハエからワイコロアまでの20km程度は横風が強く、バイクを傾けながら、慎重に走りました。」

バイクのタイムはオフィシャルでは5時間ちょっとだったが、ブロッキングを取られペナルティ5分のロスタイムとなっている。上りで遅い選手が多くいる中、追い越し車線を走っているところで取られている。

そして、驚きのデータが残った。バイクの目標タイムは4時間45分で、通常パワーは、230~240wを想定ペースとしていたが、50wも低い平均186wという結果でも10分落ちの4時間55分だった。(ブロッキングの5分を除く走行時間)これはデータとして残っているので事実。あらためて機材(SHIV)の優位性が実証されている。

「このデータ(事実)には驚きました。186wで5時間切れるSHIVのエアロ効果は、言わないほうが良いかな、エイジの被る選手には乗ってほしくないですね。(笑)もし230w出ていれば、4時間40分くらいかな。来年のお楽しみですね。」

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ランは苦しかった。この表情だ。

バイクから変調を感じ、ランスタート時もあまり良いイメージが持てていなかった。

「ランの前半ハーフまでは目標タイムで走れていました。これは、追い込こまなくても目標としていた3時間20分ペースで走れることが確認できました。ただ、後半がダメでした。22、3kmのエナジーラボあたりから下痢になり、休み、休みのランとなってしまいました。」

レース後に下痢となることは時々あったり、レース直後であったり、レース後であったりするそうだが、今回は少し早かったということだろうか。

「これは、暑さのため、バイクで早く水をかけ始めてことで、身体が冷えた可能性があります。ただ、もっと前からおかしくなっていたのかもしれません。ブロッキングを取られた時に、普段のメンタルなら「ここで取るなよ」と思うところが、「OK、5分休みもらえるね」と思ってしまいました。そう思うということはどこかで異変を感じていたのだと思います。」

冷静に振り返るTKだった。

8回目の挑戦が終わった。

  タイム 目標との差
スイム 1時間08分59秒 +1分59秒
T1 2分26秒 −2分34秒
バイク 5時間00分13秒 +15分13秒
T2 5分26秒 +2分26秒
ラン 4時間04分58秒 +42分58秒
トータル 10時間22分00秒 +60分00秒

 

総合782位(プロ含む):エイジ43位

目標だった、SUB9.5の達成はできなかった。ただ、得たものは多くあったようだ。
体調を完全に「合わせる」ということは簡単ではないが、各パートでの課題は克服できる。

スイムは、バリエーションを増やし、「無理」をしなければいけない。
「居心地がいい集団から抜け出せない。5分後ろから来た女子に追いつかれた時トライしたが、乗り換えられず、心地よい集団に戻ってしまう。そこからワンプッシュができないと1時間5分は切れないですね。そのためには、現在、6コース(6段階で6コースが一番速いコース)の5コースで泳いでいますが、効率は、コースを落として、遅いコースでより少ないストロークで泳いだり、逆に、コースを上げてストロークを増やしても速く泳いでみたり、もう少しバリエーションを増やしてみても良かったと思いました。できることはよりできるようにしても、もっと背伸びをすることも大事かなと思いました。」

バイクの完成度はすでに高いが、新たな課題が見つかっている。
「踏込みによるパワーアップの練習とその検証をする時間がありませんでした。また、アンチエアロで練習し、負荷を増やした状態での練習を強化して行きたい。」

準備段階としては、スピードに対し、パワーを減らそうとする練習はしていた。例えば、ポジションを変えたりしていたが、パワーを上げようという練習はSHIVだとやりづらいと考えていた。

「スピードが出過ぎて危ないので、抑えて走らなければいけなかったのです。昨年は300wを出し続ける練習もしていましたが、今年は危ないかと抑えてしまっていました。そう言った意味では、追い込んで、踏み込んで練習していたかと言うと、そうではありませんでした。パワーを減らそうとはしていましたが、増やそうとはしていなかったということが反省材料の一つかもしれませんね。練習時に「アンチエアロ効果」を施さないと練習になっていないと気が付きました。レースパワー同等でどうやってスピードを出すかは練習していましたが、レースパワー以上でやる時間が、あのSHIVで多かったかと言われると違いますね。」

そして、ランは今回の取組でフォームの改善と走り方は出来ている。
「今回、追い込まなくても、行けるということが分かりました。あとは、目標を超える練習ができたのか、再度、そのレベルと設定を確認しなければいけないと思います。バイクと同様に、スピードに対しどれだけ楽に走れるかはしていたが、そのスピードを超えようとはしていたかというと足らなかったと思います。」

「ホカオネオネのシューズについても負担を減らしてくれるだけでなく、より速く走らせるやり方があるはずなので、もっと検証してみようと思っています。」

これらの課題は、当初の予定では、3週間前の韓国で試してみたかったことだ。

「本来ならば、韓国で事前に「ダメ出し」をしてから臨みたかったのですが、台風で中止になってしまったのが悔やまれますね。」

アイアンマンは、長距離、長時間の間、精神面、身体面において、高いレベルをキープすることは容易ではないアドベンチャースポーツでもある。プロ選手でも言えることだ。その意味では、納得のいく走りを簡単にはさせてくれないアイアンマンだけに、常に、そして、新たな課題が見つかり、そこへの対策を立てて、「検証」を繰り返す。

今回のレースの経験は、必ず来年の糧になるはずだ。

刻々と変わる状況の中で、あの場あの時に、こうしたら良かったということは、少なからずやった。状況判断としては間違っていなかったし、やれることはやった。

「さあ、次言ってみよう!」と、すでに来年に向け、気持ちを切り替えていた。

前向きに「2020」を語るTKだった。今年が満足でなかったことも事実だが、来年どれだけ返せるのかが見ものだ。SUB9を目標にしないと、コナでの表彰台は狙えない。TKのやる気は本気だ。この2019年の走りをしっかりと刻み、来年どんな答えを出してくれるのか大いに期待したい。

 

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筆者紹介:Triathlon GERONIMO  大塚 修孝(オオツカ ノブタカ)トライアスロンジャーナリスト
トライアスロンに関わり28年。バイクショップ時代(22年)から、ジャーナリストとしても活動。特に、トライアスロンの頂点、アイアンマンワールドチャンピオンシップは、96年から取材を続けて今年で24年目となる。現在は、WEBマガジン「Triathlon GERONIMO」運営の他、専門誌寄稿、バイクフィッター、メカニック、スクール・イベント開催、クラブ主宰など、トライアスロンにこだわって活動している。

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