竹谷賢二選手KONAへの挑戦 前編
アイアンマンワールドチャンピオンシップに8年連続、8度目の出場に新型ShivDiscで挑戦した竹谷賢二さんに迫ります。
トライアスロンの最高峰、アイアンマンワールドチャンピオンシップが開催された。
そのレースに竹谷選手が出場している。8年連続、8度目の出場となるが、今年の竹谷選手の想いは、特別なものがあった。
アイアンマンとはどんなレースなのか。
距離はスイム3.8km、バイク180.2km、ラン42.2kmのロングディスタンスタイプで、制限時間は17時間。完走するだけでも厳しいレースだが、トッププロは8時間程度で走り、エイジ選手であれば、10時間を切る「SUB10」を達成できれば「本物」とされる極めてレベルの高いレースなのだ。もちろん、完走レベルから入賞レベルまで様々な目標をもって走るレースだ。そのアイアンマンの頂点を決める大会が、ハワイ州コナで毎年10月に開催されるアイアンマンワールドチャンピオンシップなのだ。昨年40周年を迎えた元祖であり、老舗であり、そして、憧れのレースとなる。このレースは、100名弱のプロ選手と約2300名のエイジ選手で競われる。そのプロ選手は、昨年8時間切りのコースレコードを出し、話題となったことも記憶に新しい。そして、特筆すべくはエイジ選手にあるだろう。フルタイムワーカーが限られて時間の中で、練習を積み重ね、世界各地のアイアンマン予選で出場権を獲得し、本戦である聖地コナを走る。プロではないが、その気迫はプロに匹敵する極めてレベルの高いレースなのだ。
そのレースに今年で8年連続の出場となるTKこと、竹谷選手が出場している。TKはMTBクロスカントリーの元オリンピアンだ。ただ、それだけで出場権を取れるほど、簡単なレースではない。本気で、かつ長期的に取り組まなければ、その切符を手にすることはできない。TKのそこにかける想い、そして、思い通りのレースが出来たのか。2回に分けてお届けしたい。
「今年はレースをしに来た。ガンバレはいらない。前の選手との差を教えてくれ」と熱くTK節で語ってくれた。
■TKにとってのコナとは。
努力して来たことの「到達点」を確認する場だと言う。また、大会の雰囲気がとても良く、それは、出場する「選手たち」が作り出しているものでもあると。そんな努力をした選手たちと肩を並べて走れることが魅力であるということなのだ。
−例年以上に「気迫」を感じますが、その原動力(モチベーション)は何ですか?
「やった分だけ答えが出るということです。出場するだけでは満足できない。ここ3年では、やって来たことが実を結び、5回目、6回目、7回目と確実に伸びています。そして、8回目となる今回、9時間30分切りが見えてきたからです。昨年は、9時間35分、今年は、SUB9.5で更に上が見えています。エイジグループも上がったばかりの「ルーキーイヤー」となるので、エイジ入賞も狙っていきますよ。」
■今年のために具体的に取組んで来たこと。そして、レース展開のイメージは。
スイムに関しては、「フォーム」の映像から、改善点を見つけ、トライ&エラーを繰り返しながら、完成度を高めてきている。バイクは、もちろん、一番の得意種目となるが、機材面が大きいと言う。新型モデルとなったことが後述の通り、それをいち早く使用できることも、アドバンテージとなっているようだ。そして、ランは、例えば、なぜ脇をしめなくてはいけないかなど、自転車の様に「メカニカル」な発想を持つ。単にトップランナーの走りでは、バイク180km後に走るアイアンマンのランとは全く違うものと考えている。
−気を付けていることや、イメージしているレース展開はありますか?
「スイムは遅いので、挽回するためにも、「早くバイクに移りたい」とイメージしながら泳いでいます。
バイクは、例年ですと、多くの選手を抜かすことになるので、接触をしないよう注意しなければいけません。ペースも抑えたいところですが、ドラフティングも注意しなければいけないので、前半はペースを上げざるを得ないです。ところが、今年は初のウェイブスタートとなったので願ったり、叶ったりというところです。というのもスイムだけ速い選手が少なくなるので、バイクでの位置取りがし易くなることを予想しています。無理な追い越しも減り、ドラフティングを取られる危険性も少なくなると思います。
あと、強い陽射しや地面からの照り返しなどのために通常のレースより、水をかけ始める地点を早め、頻度も多くしています。
ランは、前半のアリイドライブでは、イージーに入ります。クイーンKに入ったところで、下りも利用し、ペース上げ、頑張ります。そして、後半は落とし、ラスト5kmでは更に落とします。」
■目標タイムはSUB9.5。
この3年間で確実に成長したことを実感しているTKだった。TKレベルであれば5分縮めることも簡単ではない。もちろん天候などに左右はされる。それでも、まずは目標タイムの設定が必要となる。今年は大台(SUB9.5)を目標とし、更にその先を狙っている。
SWIM | 1時間7分 |
T1 | 5分 |
BIKE | 4時間45分 |
T2 | 3分 |
RUN | 3時間22分 |
TOTAL | 9時間22分 |
−年々SUB10選手が増えていますが、何か意識しますか?
「3年前にSUB10となりました。ただ周りを見たら多くの選手がいました。大したことないのだなと思いましたね。周りはどんどん速くなってきているので、更にその先を目指さないといけないと思いました。SUB10がステイタスだったことは過去の話で、SUB9.5なのかもしれません。そして、いつかSUB9という日も来るのかもしれませんね。(笑)」
昨年、このアイアンマンワールドチャンピオンシップのタイミングに合わせ、世界同時発表となったSHIV。徹底したエアロダイナミクスと軽量化、そして、SHIVの象徴であるフューエルシステムなど、アイアンマンのためのバイクとして7年ぶりにモデルチェンジされた。新型は、更にフィット性やユーザビリティも高めた次世代トライアスロンバイクとなっている。(写真:竹谷選手のバイク)
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−バイクはNewSHIVとなりましたが、具体的なメリットは何ですか?
「最大のメリットは「エアロ効果」です。パワーも対するスピード比が高いため、「ペース感」が狂ってしまうほどなんですよ。レースでは、「パワー」でペースを決めていますが、アイアンマンケアンズでは、その速さに本当にメリットを感じました。」
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■考えるTK、考えるトライアスロン、そして、考えるバイク。
とにかく、「なぜ?」と考えるTKは、バイクの各機材、ポジション出し(フィッティング)など当たり前のようにこだわっている。スイムやランと異なり、バイクを通して、「推進力」を路面に伝えなければいけない。しかもDHポジションで効率の良いペダリングが求められる。簡単ではない話だが、避けては通れない。逆にバイクを得意とするTKはそれを武器にしている。機材が走りを変えてしまうことを誰よりも知っている。
−バイクのセッティングにこだわりのポイントはありますか?
「ポジションは、アップライトなDHバーに変更し、頭が下げやすくなりました。9月のコナ合宿では、2cmのスペーサーでしたが、1cm下げています。ちなみにフレームサイズはSサイズです。ホイールは、練習時は、ROVAL C38ホイールやROVAL CLX50ホイールを使っていますが、ここでは、ROVAL CLX64ホイールを前後に使用しています。ケアンズではリアは321ダブルディスクホイールでしたが、コナでは使えませんので。そして、タイヤは、もちろん、新品をセットします。チューブレスレディのS-Works Turbo Rapid Airタイヤで、上りにおいても軽く、空気に乗っている感じで、乗り心地抜群ですね。
サドルは、Sitero Proサドル。クランクフロントチェーンリングは55T、スプロケは11-27Tにしています。」
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■スペシャライズドとして、SHIVとして、特徴的なメリットは。
スペシャライズドは、独自路線の発想とその開発力が魅力だが、それらについても聞いてみた。
−ディスクブレーキについては、いかがでしょうか?
「制動力、コントロール性、ブレーキ位置変更による剛性感などメリット満載です。
もちろん、今更言うことはありませんが、ブレーキとしての標準化だと思います。それよりもディスクブレーキ化によって、フレームデザインの自由度が高まったことが大きいでしょうね。言い方を変えると、ブレーキを変えることでフレームが変わったということですね。」
−梱包はどうだったか?
「専用バッグと折りたたみハンドルなどでとても梱包が楽になりました。」と実際の梱包手順を詳しく教えてくれた。
ちなみに、ハイドレーションの使い方はどのようにしているのかは、中身に、トップスピードのミネラルタブを入れて使用、もちろん、途中での補充はしない。走行中の補充はできないが、選手によっては、止まって補充することも十分ありではないかと提案してくれた。まずは、エアロダイナミクスありきのハイドレーションだが、これをいかに有効的に使いこなすかが、「SHIV」に乗るということなのだろう。
イメージ通りの展開となるだろうか。スイムは、想定タイムで行けるか、バイクは、スイムの展開の影響もある。得意のバイクだが、マイペースで走らせてもらえるのか、ランでは、クイーンKからエナジーラボまでのペースが勝負。
限られた時間の中で、積み上げて来たものが出し切れるのか。持てる力でベストを尽くしてほしい。
いつも笑顔で爽やかなTK。優しい口調と熱いTKトークが魅力の選手だ。
「行って来ます」とバイクチェックインでも元気だった。
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筆者紹介:Triathlon GERONIMO 大塚 修孝(オオツカ ノブタカ)トライアスロンジャーナリスト
トライアスロンに関わり28年。バイクショップ時代(22年)から、ジャーナリストとしても活動。特に、トライアスロンの頂点、アイアンマンワールドチャンピオンシップは、96年から取材を続けて今年で24年目となる。現在は、WEBマガジン「Triathlon GERONIMO」運営の他、専門誌寄稿、バイクフィッター、メカニック、スクール・イベント開催、クラブ主宰など、トライアスロンにこだわって活動している。
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