クロモリフレームに太いタイヤを装備したSequoia Eliteは、いったいどんな性格のバイクなのでしょうか。里山をサイクリングしながら探ってみました。
右手に田植え前の水田と小川を見つつ、息を切らせながら狭い坂道を登ってやってきたのは、お気に入りの切り通し。風に揺れる木々がざわざわと音をたて、ウグイスの鳴き声がひびいています。やがて切り通しの向こうから別の誰かの呼吸が近づいてきて、クロスバイクにまたがった親子が坂のピークを越えてすれ違って行きました。
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今っぽいルックスのクロモリフレームに700×42Cと太いタイヤを履いた「Sequoia Elite」は、担いでみるとそれなりの重さがあるものの、漕ぎ出してみればいわゆる「乗って軽い」バイクだと気づきます。それは、この切り通しに至る坂道でも感じることができます。
舗装は、少々荒れています。アスファルトが剥がれている……というほどではないのですが、穴が開くたびに埋めたような感じです。しかしSequoia Eliteならば、そんな舗装にも神経質になる必要はありません。とくに、切り通しの頂上を越えた後の下りでは、ふつうのロードバイクにはない安定性を発揮してくれました。
ボリュームがありがっちりとしたヘッド周りとカーボンフォークは、急な下り坂でかつ荒れた路面であってもビビることがなく、確実にスピードコントロールができる油圧ディスクブレーキのおかげもあって、安心して下ることができます。もちろんリアからの突き上げはありますが、角はしっかり取れている印象。これは、太いタイヤとクロモリフレームの相乗効果でしょう。
続いてやってきたのは、川沿いのサイクリングロードが途切れて砂利道になっているところです。しかも左側のラインは、砂利があまり踏み固められていません。そんなシチュエーションでも、Sequoia Eliteは抜群の安定感を発揮。しかも、歩いている人を安全に避けるために右へ左へとラインを取る際は、バイクのコントロールがしやすいのです。最初に担いでみたときの「まぁ、軽くはないよねぇ〜」という印象は、このときすでにどうでもよくなっていました。
土の路面にも入ってみましたが、木の根を踏まないようにラインを選び、どうしようもないほど木の根だらけだったり人とすれ違う際はバイクから降り、そして再び乗車して……などといろいろやっていても苦になりません。さすがに階段担ぎのときだけは重さを思い出すことになりましたが、それでもツーリングバイク然としたものよりは、あらゆる場面で身のこなしが軽いのは確かです。「もしかして俺、上手くなったんじゃないの」と、少し(すごく)勘違いしてしまいそう。
そんなふうに里山周辺を走り周ってだいぶ満足していたのですが、そういえばSequoia Eliteを借りる際に、スペシャライズドの担当者から「オンロードは普通にロードバイクとして乗れるくらい軽快です」と聞かされたことを思い出しました。広い平坦路に出て、フロントギアをアウターにかけて、ダンシングで踏み込んで行きます。
標準のアッセンブルでは、ダンシングの際に明らかにタイヤが変形するのが感じられ、その加速はさすがに「ロードバイクそのもの」ではありません(タイヤをいろいろ試してみたい気もします)。しかし、進み具合も悪くないのです。むしろ、安定感とコントロール性を両立したジオメトリーのおかげでダンシングもしやすいので、走っていることが楽しくなるメリットが目立ちます。
スペシャライズドによれば『フレームサイズに合わせたチュービングによりどのサイズでも設計どおりのライドができる』とのことなので、どんなサイズでもSequoia Eliteの良さを感じることができるでしょう。
丈夫で走りの軽快感もあるクロモリフレームと、独自のジオメトリーやタイヤ、油圧ディスクブレーキがもたらす安定感とコントロール性。フォークやダウンチューブ下面などあらゆるところにダボがありますし、「Burra Burra」シリーズと組み合わせればバイクパッキングのコーディネートも完璧。何か1点が突出しているというわけではないけれど、総合的に「いいわ〜」と感じられるSequoia Elite。これはこれで「スペシャライズドらしい」1台と言えます。
Sequoia Eliteのカタログコピーを読むと、グラベルロードを一目散に走り抜けてロングライドするようなバイクにも受け取れてしまいますが、実際はもっと間口が広い、いろいろな可能性をもったバイクではないでしょうか。里山ライドにもぴったりです。
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【筆者紹介】:須貝弦
ちょうど今、太いタイヤを履くことができるドロップハンドルの自転車が気になっている郊外暮らしのライター。最近は里山サイクリングに出かけると、乗車している時間より写真を撮ったりカフェでコーヒーをすすったりしている時間のほうが長い。
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