自分の体から力を絞り出すためのツール、Retulについてコウジくんにその効果を聞いてみた。
コウジくんは本気だ。スペシャライズド ジャパンで、SBCU先生というスペシャライズド社のテクノロジーを伝える立場にある渡辺孝二くんは、その一番の方法として、自分がレースに出ることを選んだ。
まず彼が伝えたいのは、彼が50才という体力の衰えを目の前にした年齢であること、そして今ある体力を活かし切ることの重要性である。Retul(リトゥール)というツールとシステムが、これまでの我流ペダリングをリセットし、科学的に漕ぎやすいポジションにするという。コウジくんがMTBの長年の友、ライター中村浩一郎に語る。
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コイチロ(中村浩一郎)「それでさ、コウジくんとこには確か、流行りのフィッティングのやり方あるでしょう。Retulっていったっけ、それもやるんでしょう?」
コウジ(渡辺孝二)「もちろんだよ、やるよ」
コイチロ「でさ、そもそもそのRetulって、なに?」
コウジ「体のフィッティングを3Dモーションキャプチャーで、動的に測定できる機械、をRetulっていうんだ。それを使ってフィットすることを、今後は『Retulする』って言っていくんだろうけど、その総称だね。今は、機械だと、思っている。くわしくいえば、膨大になるけどね」
コイチロ「一回見たことあるんだけど、なんか大きな機械に乗るんだよね。あれを使って、コウジくんもなんかやるの?」
コウジ「うん。あれで体にLEDハーネスを付けて、目では見えない光線を捕捉して動きを数値化するんだよ。体の動きをわかって、ポジションが出せるとなったら、コラムスペーサーは必要ないよね、とか」
コイチロ「結局、Retulって、何を出してくれるの?」
コウジ「体の動きを数値化するんだ。その数値を基にして、自分の一番漕ぎやすい、漕ぐのに楽なポジションを出していくんだ」
コイチロ「楽に漕ぐ方法が分かるの?」
コウジ「違うよ、ポジション出しだね。まずは体のニュートラルな状態でのフィットを知ることからだ。自分の体がどう動くのかが、客観的に把握する。それで、その知識とデータをベースにステップアップできる、ということ。 昔は、そういうことを、ショップ店長が『こうした方がいいよ』みたいなアドバイスをしていたでしょう。それを今は、いろんな数多いデータの中から、確実に効果があるというものをアドバイスできる。ショップ店長の経験則だけじゃなくてね。今は、その客観的なベースをRetulのツールを使って導き出して、それに従って次のアドバイス、方向性が分かるんだ」
コイチロ「Retulをすると、マウンテンバイクでもやっぱり変わるもの?」
コウジ「変わるよ、ぜんぜん違うよ。漕ぎやすくなるんだ。なんていうか、無理をしなくていい、というところかな。
例えばだけど、荷物を押す時も、押し方で次第で動かしやすくも、逆に動かしにくくもなるよね。そんな時、どこを押せば動かしやすくなるかが分かると、その結果、疲れづらくなるよね。だって、無駄な力を使わなくなって、余分な動作が減るから。そんな感じで、ムダナク踏める場所というのが、Retulを通じて分かってくる。
それを、サドルの高さや前後位置、クリートの位置、ハンドルバーの高さや前後位置、シューズに入れるサポートのフットベッドであったり、もう細かな部分を、全て0から調整することから始まる。
そこからシューズのクリート、スタンス幅や位置、フットサポートをどんなものを使うのかなどで、自分に本当に合ったポジションを導き出せるんだよ。そういった細かな調整をすることで、楽にペダリングができるようになる」
コイチロ「なるほど、バイクに乗る時の、全身のアライメントを取る、ということだね。まず『ゼロはどこ?』から探し出すみたいな」
コウジ「そうそう。ちょうど体力が落ちてきているから、正しい出力方法を知っているか・いないか、は大きく違うと思う。自己流はやっぱり、この時代違うよね」
コイチロ「そっか。あなたは、っていうかボクは25年間自転車に乗ってきているけど、それはタマタマ今目の前にあったポジションに、カラダを合わせて来ませんでしたか? と問われているわけだね(笑)」
コウジ「50の声も聞こえてきて、今からやるんなら、自分の力を余すところなく出しましょうよ、ってこと。この年令になると、自分の目標点はあるんだけど、でもその照準に本当に合っているのかは、客観的に見ないとわからない。だから、それをピッタリを合わせたい、というのがRetulなんだ」
コイチロ「50才で、使えるツールを全て駆使して、今の50才ならでは走りを見せてやろうと、いや、自分に見せてもらおうと。それがRetulであると。なるほどね。で、それは、どこで受けられるの?」
コウジ「いま、全国のスペシャライズドのリテーラー、24箇所で受けられる。メソッドを使って、ライダーの個々の特徴に合わせたポジションを教えてくれる」
コイチロ「だんだんその気になってくるね。まずは通勤だけでも違うかもね。今度は体の数字を見せてよ。で、その初レースはなに?」
コウジ「7月24日の全日本選手権クロスカントリーだ」
コイチロ「すごいね、いきなり全日本選手権って出られるんだ。どうやって出るの?
コウジ「できるよー。全日本選手権はレベル、カテゴリー以上に年齢が大事だから。ボクは50才オーバーのクラス。50才以上のクラスに登録すれば、でられる。」
コイチロ「楽しみだね」
コウジ「50才以上の年齢別だから、僕の50才が一番若い、ってことになるんだよね。でもまあ、マウンテンバイクの、特にレースの世界って『衰えを知らない人』が多いからね。さて、どうなるかな」
体が動くうちに、という50才コウジくんの本気は切実だ。動くなら、動かせるだけ動きたい。そんな気持ちを可能にするRetul。バイクに設定した0ポジションに、まず合わせることで、自分本来の動きとバイク本来の特性とをリンクさせられる。特にスタンディングでの重心移動も大切なMTBでは、ニュートラルこそがスムーズさへの鍵となる。そして次回のコウジくんは、目を輝かせながらサドルを語る。むかし気質のサイクリストはサドルを語るときにこそ嬉しそうである。
【著者紹介】:中村浩一郎
未だ骨折中。あのね、中年になって骨の付く感じが3ヶ月間なければ、超音波発生機で骨の癒着を促進できるメカを貸してもらえる。1年間借りられて37,500円のレンタル料。骨折仲間のカメラマンも今、同じ年齢で同じ器具を使っていると言うから、40代なかばなら普通の時代のようだ。
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