オーストリア・インスブルックで開催されたロード世界選手権2018。現地観戦レポートの2回目です。
2回目となる今回は、男女エリートのロードレース当日の現地の様子とスペシャライズドライダー、バイクのレポートです。筆者たちはこれが初めての海外レース現地観戦。中継映像や日本のレースとは違う雰囲気に、終始興奮しながら過ごしました!美しいアルプスを背景に繰り広げられた今年の世界選手権。沿道に詰めかけた観客数は、述べ60万人にも達したそうです。
2018年ロ―ド世界選手権 男子ロードレース 選手たちが選んだ機材について>
■おじさん達の世界選手権!?
レース期間中は晴天に恵まれ、朝夕こそ気温一桁まで冷え込むものの日中は半袖でも汗ばむ陽気だったインスブルック。周回コースが設置された石畳の旧市街には多くのファンが詰めかけていた。
フィニッシュエリア付近に歩いて移動していると、選手の応援団とすれ違う。オリジナル応援グッズを持参して気合十分だ。ひときわ目を引いたペテル・サガン応援団。特大の応援旗を誇らしげに見せてくれた男性は、ボーラ・ハンスグローエのポロシャツを着ていた。
オランダは熱狂的なファンが多かった。チームスカイで走るウァルテル・プールスのファンクラブのおじさん達。
まだレースがスタートしたばかりだというのに、フィニッシュエリア付近は場所取りをするファンの姿が。やはりスロバキア応援団が目立つ。サガンの四連覇を願って駆け付けたのだろう。
フィニッシュゲート直前に陣取ったスロバキアのサガン応援団。以前サガンが所属していたティンコフのキャップを被ったおじさんがいて、年季が伺える。サガンがレースを降りた後は旗もしまって、すっかりおとなしくなっていた。
手作りグッズでイタリアのヴィンチェンツォ・ニバリ、ジャンニ・モスコンを応援。モスコンは今年インスブルックに移住したそうで、地元からの声援も集めていた。
驚いたのは、気合の入ったファンのほとんどが妙齢の男性であること。つまり、おじさん。日本でいうとプロ野球大好きなおじさんのようなイメージだろうか。
また、偶然隣で応援することになった地元オーストリアのご家族連れは「近くで大きなレースがあるから見に来たんだよ」と、観戦よりもビールを楽しんでいた。とても気軽な雰囲気で、自転車レースが生活に浸透しているのを感じた。
■女子はファンデルブレッヘンが圧倒的な独走勝利
まずは男子レース前日に行われた女子レースの模様をお伝えしたい。
市街地にはいくつかパブリックビューイングが設置されていた。ランチを摂ったカフェでも中継を流していて、どこにいてもレースの状況がわかるのがありがたい。
まだ勝負は決まらないだろう、とのんびりしていたら、残り約40kmでアンナ・ファンデルブレッヘン(オランダ)がアタック。逃げに追いついて、更にカウンターアタック。追いすがるアマンダ・スプラット(オーストラリア)を振り切って独走態勢に持ち込んだ。
賑わいを見せるパブリックビューイング会場の広場。公式スポンサーグッズを配布していたので、ありがたく頂きました。
距離を重ねるごとに後続との差を拡げていくファンデルブレッヘン。圧巻の走りで最終ストレートに戻ってきた彼女は、「信じられない」という様子で手で顔を覆った後、大きく両手を上げてフィニッシュ。
2017年のシャンタル・ブラークに続くオランダ勢の世界選手権制覇。そしてスペシャライズドが機材を提供するボエルス・ドルマンスの選手が4年連続でワールドチャンピオンに輝いた。
2017年のUCIロード世界選手権について>
独走で最終ストレートに帰ってきたファンデルブレッヘンを大歓声で迎える観客達。
女子オランダチームのエイミー・ピーターズ(ボエルス・ドルマンス)のS-Works Tarmac。コンポはSRAM RED。
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チェーンステーの傷が、激しいレースやトレーニングを物語る。
■荒れる男子レース、勝負どころはヘッレ(地獄)の激坂
女子レースの後、男子レースの最終周回で登場するグラマルトボーデンの登り、通称「ヘッレ(地獄)」の坂を歩いて見に行ってきた。全カテゴリで使用される市街地の登りの後、下らずに更に上へ。登る程にどんどん勾配がきつくなっていく。「このコース、サガンは残れるのだろうか…」我々の不安は、翌日的中することになった。
2017年のUCIロード世界選手権 サガンの歴史的なハットトリック!>
グラマルトボーデンの登り口。市街地の狭い道が「地獄の一丁目」だ。
路上には「地獄の入り口へようこそ(Welcome at the Highway to Hell)」というペイントが。多くのアマチュアサイクリストがチャレンジしていたが、ヘッレにたどり着く前に自転車を降りて押す人も。
柵代わりの横断幕をスタッフが前日夕方に急いで設置していた。地獄らしく悪魔がいるコミカルなデザインだ。
ついに最大勾配28%地点へ到達。歩いて登るのも辛いこの場所が今年の勝負どころとなった。
なんとヘッレを登りきる剛脚サイクリストもいた。
周回コースに入ってから速度を上げていくメイン集団から次々と有力選手が脱落していく。世界選手権四連覇がかかっていたサガンは残り4周回の地点で集団から大きく遅れ、バイクを降りることになった。ペテル・サガンの兄でありチームメイトのユライ・サガン(スロバキア)はS-Works Tarmacのボーラ・ハンスグローエカラーを使用。ブレーキはリムブレーキ。ヘルメットはS-Works Evade IIのスロバキアカラー。シューズは前モデルのS-Works6を使用しているようである。
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集団内で走るボブ・ユンゲルス(右・ルクセンブルク)とローレンス・デプルス(左・ベルギー)。二人とも通常のクイックステップ・フロアーズカラーのS-Works Tarmacのリムブレーキモデルを使用。ジャージ以外はチームで使用しているバイク、ヘルメット、シューズのようである。
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集団で走るオーストリアチーム。S-Works Tarmac Ultralightディスクブレーキと、S-Works Tarmacリムブレーキのボーラ・ハンスグローエカラーを使う。ヘルメットはS-Works Prevail IIだが、オーストリアカラーとボーラ・ハンスグローエカラーが混在しているのが面白い。
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集団内でチームメイトと走るジュリアン・アラフィリップ(フランス)。通常のクイックステップ・フロアーズカラーのS-Works Tarmacのリムブレーキモデルを使用。ヘルメットはS-Works Prevail II。今回のコースはアラフィリップ向けと言われていたので、ヘッレでの彼の失速に観客がどよめいていた。
地元オーストリア、フランス、イギリス、イタリア、スペイン、オランダが次々と先頭に出て攻撃を仕掛ける。そして最後の周回、ついに選手達はヘッレ(地獄)の激坂へ。ここで優勝候補の1人、ジュリアン・アラフィリップ(フランス)が遅れてしまう。
先頭はアレハンドロ・バルベルデ(スペイン)、ロマン・バルデ(フランス)、マイケル・ウッズ(カナダ)に絞られた。最後の下りと平坦で先頭3人に追いつい たトム・デュムラン(オランダ)は最終ストレートのスプリントに挑む脚が残っておらず、三つ巴の争いを制したのはバルベルデ。オスカル・フライレ以来のスペイン人世界王者が誕生した。
バルベルデの勝利に貢献したエンリク・マス。スペインチームを牽引する姿が印象的だった。バイクはS-Works Tarmacのクイックステップ・フロアーズカラー。ブレーキはリムブレーキ。ホイールはRoval CLX 32。スペシャライズドがサポートしている選手でCLX32を使用していたのはマスだけだった模様。クライマー系の選手のヘルメットはS-Works Prevail IIが多かった。Roval ホイール CLX 32をオンラインストアチェックする>
バルベルデへのメダルプレゼンターとして登壇したサガン。サガン自身がこの役割を希望して、サプライズゲストとして登場したという。残念ながら四連覇とはならなかったが、チャンピオンにふさわしいサガンの振る舞いに会場は大いに沸いていた。
https://twitter.com/Yorkshire2019/status/1048882255047872513
■つわものどもが夢の跡
レース終了後、チームバスエリアに移動してみた。特に規制はなく、一般人も入ることができる。
男子は188人中76人のみ完走という厳しいレースになったため、途中リタイヤ(または足切り)の選手は早々にチームバスに乗り込んで、姿を見せることはなかった。
フランスのスタッフがアラフィリップの荷物をクイックステップ・フロアーズのチームバスへ持ってきた。
完走した選手も厳しい表情でチームバスに戻ってくる。そんな中、スペインチームは大いに盛り上がっていた。アルカンシェルをまとったバルベルデの帰還に盛り上がるスペインチーム。マスをはじめチームメイトも嬉しそうだ。
2回にわたってお送りしたレポート、少しでも現地の雰囲気が伝えられたら幸いです。
実は男子レースは豪華にVIPエリアのチケットを購入して、フィニッシュゲート手前50mで観戦しました。(お金を払えば誰でも入ることができます)クイックステップ・フロアーズのGMルフェーブル氏に遭遇したりと思わぬサプライズがあり、刺激的でした!VIPエリアはモニター、飲み物、食べ物完備の豪華さ!周回コースに入る頃には混雑していました。
翌日のフィニッシュゲート。ボードが気持ちいいくらいに破壊されていた。重機にはボエルス・ドルマンスのスポンサーであるボエルス社のロゴが。
【筆者紹介】
Photo&Text:(右)北口圭介(キタグチケイセ)
S-Works Tarmacを筆頭にロード4台を所有するギア好き。しかも全てがチームバイクというロードレース観戦マニア。今回の現地観戦で、走る選手達を撮影しながら機材を特定するという特技を習得した。
Photo&Text:(左)池田綾(アヤフィリップ)
ロードレース観戦とグルメポタを愛する週末ライダー。愛車はイヴェネプールと同じセッティングのS-Works Tarmac。男子レース当日はもちろんアラフィリップを応援していましたが、残念でした。来年以降に期待!
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