2018年レースシーンで勝利を重ねたスペシャライズドライダー達。彼らの活躍を改めて総括し、全3回でお届けいたします。
第1回目のテーマはスプリンターとVenge。Venge ViASと今年モデルチェンジを果たした新型Vengeの勝利の軌跡を振り返ってみましょう。
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■2018年チーム勝利数−今年強かったチームはどこ?
最初に2018年シーズンのチーム勝利数を確認しておこう。
2018年ワールドツアーチーム勝利数ランキング
順位 |
勝利数 |
チーム名 |
TOP3入賞数 |
1 |
73 |
クイックステップ・フロアーズ |
151 |
2 |
43 |
チーム・スカイ |
98 |
3 |
37 |
ミッチェルトン・スコット |
92 |
4 |
33 |
ボーラ・ハンスグローエ |
106 |
4 |
33 |
グルパマ・FDJ |
77 |
4 |
33 |
チーム ロットNLユンボ |
72 |
※4位には同数で3チームがランクイン。
クイックステップ・フロアーズが73勝という驚異の数字で2位以下に大差をつけて首位を獲得。2位はチーム・スカイ、3位はミッチェルトン・スコットとグランツール優勝を手にした強豪チームが続く。
最多勝利数を叩き出したクイックステップ・フロアーズは「ウルフパック(狼の群れ)」を自称。絶対的なエースを決めず、戦局によって柔軟に立ち回りながら勝利を狙うという独自の作戦を展開し、所属する選手27人のうち約半数となる14人が勝ち星を上げた。個の力とチームワークにより勝利を量産したことが伺える。
また勝利数ランキングでは4位だが、TOP3入賞数ではクイックステップ・フロアーズに次ぐ2位のボーラ・ハンスグローエも安定した強さを見せたと言えるだろう。
独走力に優れた選手が多く所属しているクイックステップ・フロアーズは世界選手権チームタイムトライアルでも勝利。タイムトライアルではShiv TTが使用されている。© Tim de Waele - Getty Images
ツール・ド・フランス参戦中のチームバスから。チームの雰囲気の良さが感じられる一枚。
■2018年輝いたスプリンター達−ベテランから若手まで
チーム勝利数の稼ぎ頭はなんといってもスプリンター達だ。エアロロード第二世代のVenge ViAS、そして三代目となる新型Vengeを駆った選手達の活躍を改めて振り返ってみよう。
ツール・ド・フランスでポイント賞ジャージを獲得したサガンのために用意されたマイヨ・ヴェール仕様の新型Venge。
⚫︎ぺテル・サガン(スロバキア/ボーラ・ハンスグローエ)
今年のサガンはお気に入りだというVengeでの7勝を含む9勝をマーク。Venge ViASで2勝、そして新型Vengeで5勝。実はツール・ド・スイス第2ステージはローンチ前の新型Vengeで勝っている。
ツール・ド・スイス第2ステージでインタビューに答えるサガン ©Cyclingimages
新型Vengeを手にしたサガンの勢いは止まらず、スロバキア選手権を勝った後はツール・ド・フランスでステージ3勝。第17ステージでは落車し怪我に苦しみながらもパリ・シャンゼリゼまで走り抜き、自身6度目となるポイント賞を獲得した。
ツール・ド・フランス第13ステージで集団スプリントを制し3勝目を上げたサガン。ツールでの勝利は全て新型Vengeによるもの。
スプリントで猛威を振るったサガンだが、今年のベストレースを1つ選ぶとしたらパリ-ルーベだろう。黄金に輝くスペシャルカラーのRoubaixで、2017年ロンド・ファン・フラーンデレンに次ぐモニュメント勝利を飾った。世界チャンピオンがパリ-ルーベを制するのは1981年のベルナール・イノー以来の偉業だが、過去の実績に満足せず挑戦を続けるのがサガン。来季はリエージュ-バストーニュ-リエージュに参戦すると表明した。
全モニュメント制覇−サガンならばいつの日かこの偉業を達成できるかも、と期待してしまうのは、スプリントからクラシックまで対応する彼の稀有な脚質ゆえだろうか。
スペシャルカラーのRoubaixで石畳の王となったサガン。
⚫︎フェルナンド・ガビリア(コロンビア/クイックステップ・フロアーズ)
2018年はスプリントで9勝。Venge ViASで地元コロンビア・オロ・イ・パス開幕3連勝を含む7勝を上げ、今年デビューを果たしたツール・ド・フランスでは新型Vengeで2勝。栄光のマイヨジョーヌに袖を通した2人目のコロンビア人、そして史上初めてツールの集団スプリントで勝利したコロンビア人となった。
ツール・ド・フランス初日勝利の表彰式でのガビリア。安心したような笑顔を見せていた。
偉大な記録とあわせて、今年のガビリアの勝利は全てディスクブレーキ仕様バイクでの勝利である点にも注目したい。
ツール・ド・フランスで本格的に使用解禁されたことを受け、ディスクブレーキをチョイスする選手が増えている。ディスクブレーキを操るにはトレーニングが必要だと言われているが、トラック競技で2度世界チャンピオンを経験するなどバイクコントロールに長けたガビリアにとっては朝飯前だろう。
ツール・ド・フランス第1ステージで開幕勝利を上げたガビリア。第4ステージでもサガンと新型Venge対決を繰り広げ勝利。
⚫︎エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア/クイックステップ・フロアーズ)
今季18勝。ツアー・ダウンアンダーからブエルタ・ア・エスパーニャまで、2018年シーズンを通じて強かった。さすが最多勝利チームの最多勝利選手、ガッツポーズをこんなに見た選手は他にいないというくらいに勝った。気持ちいいくらいの勝ちっぷりだ。
母国イタリアでも大活躍。ジロ・デ・イタリアではステージ4勝に加えてポイント賞も獲得。ナショナルチャンピオンジャージも手に入れ、大成功のシーズンを過ごしたと言っていいだろう。
ガビリアの移籍に伴い、2019年は彼がクイックステップ・フロアーズ(2019年からドゥクーニンク・クイックステップ)のエーススプリンターを担うと思われる。グランツールのステージ勝利はもちろん、クラシックでの勝利も重視するチームだから、ヴィヴィアーニがどのレースに出るのか大変気になるところだ。
ジロ・デ・イタリアでポイント賞ジャージを獲得したヴィヴィアーニのために用意されたマリア・チクラミーノ仕様のVenge ViAS
ジロ・デ・イタリア第3ステージでスプリント勝利を飾ったヴィヴィアーニ。ジロではVenge ViAS、ブエルタでは新型Vengeでグランツールのスプリントステージを7勝した。
⚫︎パスカル・アッカーマン(ドイツ/ボーラ・ハンスグローエ)
⚫︎サム・ベネット(アイルランド/ボーラ・ハンスグローエ)
ボーラ・ハンスグローエのスプリンターはサガンだけではない、と言わんばかりに活躍したのがこの2人。
アッカーマンはサガンと並ぶ9勝をマーク。グランツールには出場していないが、ツールに出ているトップスプリンター相手に勝利を飾っており、来季以降の活躍が非常に楽しみな選手だ。
クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ第2ステージの大集団スプリントを制したアッカーマン。実はこの時乗っていたのが新型Vengeで、記念すべき新型Vengeの初勝利となった。
ベネットはジロ・デ・イタリアでステージ3勝。更にシーズン終盤のツアー・オブ・ターキーではステージ3勝に加えてポイント賞を獲得。ジロ最終日のスプリントでヴィヴィアーニを破った勝負強さが印象に残っている。
ジロ・デ・イタリア第7ステージで同じVenge ViASを駆るヴィヴィアーニに競り勝ったベネット。嬉しいグランツール初勝利を飾った。
彼はウィリーでゾンコランを登ってファンサービスするなど、とてもお茶目な選手。是非Instagram(@sammmyben)をチェックしてみてほしい。
⚫︎アルバロホセ・ホッジ(コロンビア/クイックステップ・フロアーズ)
⚫︎ファビオ・ヤコブセン(オランダ/クイックステップ・フロアーズ)
クイックステップ・フロアーズの新星スプリンターコンビは新型Vengeでそれぞれ3勝。ワールドツアーレースの勝利を既に経験しているあたり、若手実力派という言葉がよく似合う。
新型Vengeとともにキャリアを歩み始めたこの2人、ガビリア移籍後のチームでヴィヴィアーニとともにスプリント勝利を量産するエンジンになってくれるはず。是非名前を覚えておいていただきたい。
ツアー・オブ・広西第6ステージで雨の集団スプリントを制したヤコブセン。ディスクブレーキはウェットコンディションでも安定したバイクコントロールを実現する。© Tim de Waele - Getty Images
ツアー・オブ・ターキー第5ステージの集団スプリントで勝利したホッジ。ビッグネーム相手に新型Vengeで好勝負を演じた22歳は、ガビリアに次ぐコロンビアンスプリンターとして期待を集めている。© Getty Image
■Vengeが導く勝利
エアロモデルとして投入されたVengeはトップスプリンター達の支持を受け、彼らの勝利に貢献してきた。2017年は48勝、そして2018年は66勝と着実に勝利数を伸ばしている。この66勝のうち58勝がディスクブレーキモデルによるものであり、ディスクブレーキがプロトンに浸透しつつあることにも触れておきたい。
今年デビューした新型Vengeは既に37勝を上げている。先日開催されたツール・ド・おきなわ市民レース210qを勝ったことも記憶に新しい。この国内最高峰の市民レースでは有力選手が新型Vengeをチョイスしており、脚を止めていても進むバイクだと話題を呼んだ。まさに勝つために生まれたバイクと言えるだろう。来季はどこまで勝利数を伸ばすのか、楽しみである。
Vengeでツール・ド・おきなわ優勝!紺野元汰さん独占インタビュー!はこちらから>
次回はTarmacで勝ったクラシックライダー・クライマー達を中心にお届けします。
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【筆者紹介】:池田 綾(アヤフィリップ)
サイクリングライター。愛車は2018ロード世界選手権でのイヴェネプールとほぼ同じセッティングのS-Works Tarmac SL5。グルメポタが大好きな週末ライダーです。
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