スペシャライズドライダーが活躍した2018年のレースを総括します!
3回目となる最終回は、最強女子チームのボエルス・ドルマンスが駆るTarmac Discと、将来有望な若手が揃うハーゲンスバーマン・アクセオンが選んだAllez Sprintを中心にお届けします!
Tarmacが勝った! クラシックライダー・クライマー編はこちら>
Vengeが勝った! スプリンター編はこちら>
■女子レースを支配するボエルス・ドルマンス
圧倒的な戦力を保有し、UCI女子ワールドツアーで最強の座に君臨し続けるボエルス・ドルマンス(オランダ)。チームカラーであるオレンジ色をあしらったバイクで勝ち星を上げ続けている。
ボエルス・ドルマンスの2019年チームバイク。世界王者ファンデルブレッヘンはスペシャルバイクに乗る。
Photo: https://www.boelsdolmanscyclingteam.com/en/team
2018年世界選手権でエイミー・ピーターズが乗っていたTarmac disc。
2018年、2019年ともに黒基調にオレンジがアクセントのデザインだ。Photo:北口圭介
特に世界選手権は2015年エリザベス・アーミステッド(元チーム・スカイのダイグナンと結婚し現在の姓はダイグナン。/イギリス)、2016年アマリー・ディデリクセン(デンマーク)、2017年シャンタル・ブラーク(オランダ)とボエルス・ドルマンスの選手が勝ち続けており、2018年はアンナ・ファンデルブレッヘン(オランダ)が圧倒的な独走で勝利を上げた。
●アンナ・ファンデルブレッヘン(オランダ/ボエルス・ドルマンス)
ボエルス・ドルマンスのエースにして、現在の女子レースシーンにおける最強選手の一人。
2018年シーズンはストラーデ・ビアンケ、ロンド・ファン・フラーンデレン、フレーシュ・ワロンヌ、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュと春のクラシックで連勝、しかもすべて独走勝利を飾った。コースやチーム、選手の数などが違うので少し乱暴だが、男子レースに置き換えるとその凄さがより鮮明になる。
登坂、ダウンヒル、平坦、タイムトライアルとあらゆるコースに高いレベルで対応し、リオ五輪ロードレースで金メダルを獲得するなどワンデーレースでは敵なしの強さを誇る。世界選手権は2018年が初勝利。直前の個人タイムトライアル、チームタイムトライアルでも2位に入賞している。
2018年世界選手権、独走で最終ストレートに戻ってきたファンデルブレッヘン。
これ以上ない強い勝ち方での勝利だった。
ファンデルブレッヘンの世界選手権勝利を記念して作られたTarmac discスペシャルフレーム。
世界チャンピオンの証である虹を模した5色ジャージ「アルカンシェル」がモチーフだ。Photo: just_sullivan
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ボエルス・ドルマンスが2018年シーズンで使用したバイクは、2018年2月にデビューしたTarmac Disc。チーム27勝のうち19勝をこのTarmac Discで飾っている。特にファンデルブレッヘンの9勝はすべてこのTarmac Discによるもので、最強クラシックハンターの頼れる相棒となった。
チームには世界チャンピオン経験選手以外にも有力選手が多数在籍している。クラシックレースで安定した強さを見せ、ファンデルブレッヘンを助けるエイミー・ピーターズ(オランダ)や、個人タイムトライアル・ロードのWナショナルチャンピオンであるクリスティン・マジェラス(ルクセンブルク)など強力なメンバーが揃う。2019年シーズンも台風の目になることは間違いない。
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●世界で最も過酷なMTBステージレース「ケープエピック」
ファンデルブレッヘンの活躍はロードに留まらない。2019年はマウンテンバイクレースのツール・ド・フランスと呼ばれるケープエピックに挑戦することを表明した。
舞台は南アフリカ・ケープタウン。毎年異なるルートが設定されるが、約800qにわたる山岳や動物が生息する国立公園が含まれるコースが特徴。雄大で美しい風景とレースの過酷さで世界的に有名な8日間のステージレースだ。
このレースの最も大きな特徴はデュオチーム。つまり2人1組での参戦が認められており、レース期間中はキャンプをしながら24時間を共に過ごし、支え合う。ファンデルブレッヘンのパートナーは2018年を含む4度の優勝経験を持つアニカ・ラングバット(デンマーク)。ロード世界王者と最強MTBライダーのタッグ、どんなレースを見せてくれるのか楽しみで仕方がない。
使用するバイクはS-Works Epic。S-Works FACT 12mカーボンファイバーのフレームが剛性と強度と全体の軽量性のベストな組み合わせを実現する。フレームには100mmトラベルのRockShox Brainショック、フォークにはBrainを搭載したカスタムのRockShox SID WCフォーク、そして軽量なRoval Control SL カーボンホイールを備えた、最高のハンドリングで操れる最速のXCバイクだ。
MTBライダーでもあるファンデルブレッヘン。ラングバットとペアを組み参戦するケープエピックは2019年3月17日から24日の日程で開催される。
■将来の注目選手が揃う育成チーム、ハーゲンスバーマン・アクセオン
ハーゲンスバーマン・アクセオンというチームをご存じだろうか。次世代のプロロードレース選手の育成を目的とするアメリカのプロコンチネンタルチームである。チームのコンセプトに沿って、所属選手は全員23歳以下。若手の育成に特化した、少し珍しいチームだ。
ゼネラルマネージャーは「史上最強のロードレース選手」ことエディ・メルクスの息子、アクセル・メルクス。若い才能を発掘することに長けており、2009年のチーム設立以来、彼が情熱を持って育て上げた選手達20名以上がワールドツアーチームへと旅立ち、活躍している。
23歳以下の若手のみで構成されるハーゲンスバーマン・アクセオン。才気溢れる選手達もバイクを降りると年相応の若さを見せる。
Photo:http://www.axeoncycling.com/home
チームの卒業名簿には、2018年のブエルタ・ア・エスパーニャでステージ2勝を飾ったベンジャミン・キング(アメリカ/ディメンション・データ)やグランツールをエースとして走るジョージ・ベネット(ニュージーランド/チームユンボ・ヴィスマ)、クラシックレースに強いジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー/トレック・セガフレード)、日本ではドンちゃんの愛称で親しまれるジョセフ・ロイド・ドンブロウスキー(アメリカ/EFエデュケーションファースト)、チーム・スカイの若手として活躍するタオ・ゲオゲガンハート(イギリス)など、有名選手の名前が並ぶ。
2018年まで在籍し、2019年からUAEチーム・エミレーツへ移籍したジャスパー・フィリップセン(ベルギー)やイヴォ・オリヴェイラ(ポルトガル)は早速ツアー・ダウンアンダーのスタートリストに名を連ねている。フィリップセンは第5ステージで勝利しており、若手の育成チームと言えどワールドツアーでも即戦力として通用する実力を持った選手達で構成されていることが伺える。
●ミッケル・ビョーグ(デンマーク/ハーゲンスバーマン・アクセオン)
2017年・2018年世界選手権U23個人タイムトライアルチャンピオン。ツアー・オブ・カリフォルニア第4ステージ(余談だが、このステージはスペシャライズドの本社があるモーガンヒル発着)で6位に入るなど、既にエリートカテゴリでも通用する力を持っている。近年のレース、特にグランツールでタイムトライアルスペシャリストの特性を持つ選手達がオールラウンダーとして活躍していることを考えると、ビョーグの今後が楽しみである。
世界選手権では2位以下に30秒以上の差をつけて優勝。同世代ライダーの中では卓越したタイムトライアル能力を持つ。
2年連続でU23個人タイムトライアル世界王者となったビョーグ。
ビョーグの他にもアメリカ選手権でエリートカテゴリの選手を破って優勝したジョナサン・ブラウン(アメリカ)など、才気溢れる若者が揃っている。
2019年からはチームを離れるが、マウンテンバイク世界選手権U23クロスカントリーで2位入賞のクリストファー・ブレヴィンス(アメリカ)も2018年はハーゲンスバーマン・アクセオンに所属していた。今後はMTBに専念するという。
2018年でチームを卒業するブレヴィンス。引き続きスペシャライズドのバイクでMTBレースを走る。
■最強のアルミ合金製ロードバイク、Allez Sprint
2018年シーズン、ハーゲンスバーマン・アクセオンがチームの機材として使用していたのがAllez Sprint。エアロモデルであるVengeの技術を投入して設計されたAllez Spirintは優秀なアルミ合金製レースバイクだ。
Allez D'Aluisio Smartweld Sprintテクノロジーで溶接されたE5高品質アルミ合金製フレームは溶接部の位置を見直し、戦略的に必要な部位にのみより多くの溶接材を使用することで剛性と乗り心地を高めつつ、軽量化も実現している。また、S-Works FACTカーボンファイバーフォークとVenge FACT カーボン製シートポストにより高い次元で剛性と乗り心地の両立を図っている。
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世界の瀬戸大也選手も選んだAllez Sprint>
ジョナサン・ブラウンはAllez Sprintでアメリカ選手権を制覇。U23カテゴリの選手がアルミバイクで勝利を飾った。
また、Allez Sprintは先日のダウンアンダー・クラシックで2位に入賞したペテル・サガン(スロバキア/ボーラ・ハンスグローエ)が使用していたことでも話題になっている。フルカーボンが主流のレースシーンにおいて、アルミバイクが十分に通用することを証明した。
ダウンアンダー・クラシックのために用意されたボーラ・ハンスグローエカラーのAllez Sprintに乗るサガン。
ホビーライダーが注目すべきはその圧倒的なコストパフォーマンス。レース機材としても使えるバイクが手頃な価格で手に入るのは嬉しい限りだ。
なお、ハーゲンスバーマン・アクセオンへの機材提供は2018年で終了している。
■レースにおけるスペシャライズドバイクの存在感
2018年レースシーンの振り返りを3回に渡ってお届けしてきたが、男女エリート、U23とあらゆるカテゴリでスペシャライズドライダーが活躍し、勝利していることがおわかりいただけたと思う。また、勝ったレースも山岳、スプリント、タイムトライアルと多岐に渡っており、Tarmac、Venge、Allez Sprint、そしてShiv TTとすべてのバイクが高いレベルでロードプロチームの勝利に貢献していることが伺える。
世界選手権ジュニア 個人タイムトライアルとロード両方を制覇し、U23カテゴリを飛び級してワールドツアーで走るレムコ・イヴェネプール(ベルギー/ドゥクーニンク・クイックステップ)をはじめ、2019年も多数の強豪選手がスペシャライズドのバイクでレースを走る予定だ。
アラフィリップの後ろを走るのがイヴェネプール。2018年ベルギー選手権、ヨーロッパ選手権、世界選手権で個人タイムトライアルとロードを勝ち、ジュニアカテゴリを完全制覇した怪物だ。
今年はスペシャライズドのバイクが何勝するか、楽しみである。
【筆者紹介】:池田 綾(アヤフィリップ)
サイクリングライター。最後に紹介した2019年大注目のネオプロ選手、イヴェネプールはエディ・メルクスの再来と言われる超大型新人。なんと元サッカーU15・16ベルギー代表というキャリアを持つ彼の夢は、グランツールで勝つこと。1月末のブエルタ・ア・サンフアンでシーズンイン予定です。チェックしなくては!
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