日本人ライダーとして唯一、モーターサイクルレースの最高峰クラス「MotoGP」にフル参戦する中上貴晶さんに独占インタビュー!
最高速度300km/h以上でサーキットを駆け抜ける、モーターサイクルレースの最高峰クラス「MotoGP」。そのシートを獲得できるのは世界でたった23人であり、まさに最速の選手たちが集まるカテゴリーです。
そんなMotoGPライダーのあいだで今、ロードバイクやマウンテンバイクを使ったトレーニングが取り入れられているのをご存知ですか? 2019年シーズン、日本人ライダーとして唯一フル参戦する中上貴晶選手(LCR HONDA)も、トレーニングにロードバイクを活用しているひとりです。
1月末、マレーシアでのテストを目前に控えた中上選手が、スペシャライズドの直営店「スペシャライズド新宿」を訪れ、今年トレーニングで使用する「Tarmac Men Comp Disc」を受け取り、同時にスペシャライズドの「RETÜL FIT」を受けられました。
今回はそんな中上選手に、MotoGPライダーとロードバイクの関係について伺いました。
●学ぶことが多かったMotoGPルーキーイヤー
中上選手は昨シーズン初めて最高峰のMotoGPを戦ったわけですが、どのような1年だったでしょうか。
中上選手「レベルの高さと難しさを痛感した1年でしたが、それ以上に得るもの、学ぶものが多かったですね。あっという間に1年間、19戦が終わったという印象です。1年間経験することによって、MotoGPの流れを体験することができました。昨年は1年目でMotoGPがどういうものかをまだわかっていませんでしたが、それを理解した2年目は、どっしりと構えて自分の意思を持って戦うことができると思うので、気持ち的には楽です。今年は、結果を出すことに集中できます」
Moto2からMotoGPへとステップアップして、そこはやはりすごい世界だったわけですね。
中上選手「チャンピオンのマルケス(マルク・マルケス、2013〜2014、2016〜2018年MotoGPチャンピオン)もチームこそ違いますが同じホンダのライダーなので、レース以外でも様々なところで接点がありました。マルケスを間近で見ることによって、操縦のレベルの高さなどを知ることができました。今まで感じたことのないような凄さですね」
バイクから得られる様々なデータを、選手はチェックしているのですね。
中上選手「そうですね。数字で見ることができるのはとても重要です。数字と感覚が一致しているときというのは、やはり調子が良いんです。一方で、数字が悪い時というのは調子も悪い。人間なので調子の良し悪しはありますし、天候やコンディションによっても異なりますね」
●MotoGPライダーの多くがトレーニングにサイクリングを取り入れている
中上選手はふだん、どんなトレーニングをなさっているのですか?
中上選手「ジムでのトレーニング、ランニング、ロードバイク、そしてマシンでの練習ですね。偏ったトレーニングはしていません。バランスよくトレーニングするように心がけています」
トレーニングにロードバイクを活用されているということですが、それにはどのようなきっかけからでしょうか。
中上選手「もともと6〜7年サイクリング歴はあるのですが、トレーニングでロードバイクに乗るようになったきっかけは、パーソナルトレーナーに勧められたからです。昨年から本格的に取り入れています。ロードバイクは、フィジカルの面でもメンタルの面でも、良いトレーニングになります。有酸素運動になりますし、ジムでのトレーニングより筋肉痛にもなりにくいです」
MotoGPの選手の中で、他にもロードバイクをトレーニングに取り入れている選手はいるのですか?
中上選手「他のライダーもやっています。ほとんどの選手がロードバイクをやっているのではないでしょうか。クラッチロー(同じチームに所属するカル・クラッチロー選手)も、かなり乗っているみたいです」
●ロードバイクの練習環境には恵まれている
1年間MotoGPをたたかう中で、どのタイミングでロードバイクに乗っているのでしょうか。また、具体的にはどんな乗り方をされているのですか?
中上選手「シーズン中、レースは2週間に1回のペースで週末に開催されています。僕はスペインのバルセロナに拠点を置いているので、ふだんはバルセロナに滞在して、レースの前の水曜日に開催地に入ります。そのスケジュールだと、だいたい1週間はトレーニングに充てる時間があるんです。シーズン中はハードなトレーニングをして筋力をアップさせるのではなく、主に充電して次のレースウィークに備えるのですが、その中でも週に2〜3回はロードバイクに乗るようにしています」
ロードバイクでトレーニングする機会が、思いの外多いのですね。
中上選手「トレーナーと一緒に、ヒルクライムに行ったりしています。バルセロナからならフランスとの国境近くまで行くこともできますし、ロードバイクの練習環境には恵まれていますね。トレーナーは50代なのですがかなり強い人で、ヒルクライムで彼に勝つことができないんです。いつか勝ちたいと思っています」
ロードバイクに乗る環境として、スペイン、とくにバルセロナ近郊はいかがですか?
中上選手「山も近いですし、練習環境はすごく良いですね。そもそも、ロードバイクに乗っている人が多いです。クルマを運転している人も、自転車に対するリスペクトがあると感じます。クルマが自転車を追い抜くときも無理はしない人が多いですし、狭い道で対向車が来たときも、自転車を優先してくれる。自転車レーンも多いし、場所によっては高速道路も走れますよ」
自転車で走れる高速道路があるって、すごいですね!
運動強度はどうでしょう。例えばロードバイクでトレーニングするとき、心拍はどれくらい……といったようなことは意識されていますか?
中上選手「MotoGPのレース時間は40分から45分といったところなのですが、ライダーは心拍200近くで乗っています。ロードバイクのトレーニングだと、160〜180程度、最高で185くらいまでは上がりますね。それが2時間とか、3時間とか。心拍トレーニングとしてはちょうど良いと思います」
なるほど、レース中はかなり心拍が上がっているんですね。他に何か感じられているメリットはありますか?
中上選手「基礎体力が上がること、そしてメンタルが鍛えられるのも良いと感じています。速いトレーナーを追いながら、長い坂を諦めることなく登っていくことが、ハードなMotoGPを戦う上でのメンタルトレーニングにも繋がっています。登りきったときの達成感も得られますし。また、昨年から本格的にロードバイクをトレーニングに取り入れてみて、MotoGPのマシンとライディングポジションも似ていると感じます。同じ前傾姿勢で、体幹が重要だという点も共通しています。これも、ロードバイクを取り入れる大きな理由のひとつですね」
●パーソナルトレーナーの勧めで出会ったスペシャライズドのバイク
今回、中上選手は新たにスペシャライズドの「Tarmac Men Comp Disc」を手に入れられたわけですが、もともとスペインでスペシャライズドのロードバイクに乗られていたのですよね。スペシャライズドとの出会いを教えてください。
中上選手「パーソナルトレーナーはトライアスロンをやっていて、もともとスペシャライズドのロードバイクに乗っていました。その彼が、スペシャライズドなら間違いない、いいバイクだぞと。そして、ロードバイクを貸してくれたんです。実際に乗ってみると、確かにかなりクオリティの高いものだと感じました」
今回はTarmac Men Comp Discに乗るにあたり、スペシャライズド新宿でRETÜL FITを受けられましたが、フィッティングを受けてみようと思ったのはなぜですか?
中上選手「ただ乗るだけではなく、ちゃんと自分に合わせたロードバイクでトレーニングしたかったからです。フィッティングを受けるのは初めてでしたが、少しの変化でも実感することができ、MotoGPのセッティングと一緒だなと感じたり、いろいろ発見がありました」
今回バイクを新調されて、フィッティングも受けました。これからロードバイクでやってみたいことは、ありますか?
中上選手「トレーニングにロードバイクを本格的に取り入れてみて、モーターサイクルに乗っている感覚に似ているところがあると感じました。例えば、ロングライドの楽しみは、ツーリングに似ている感覚もあります。大型二輪の免許も取ったので、ロードバイクとモーターサイクルをシンクロさせて、もっともっと走って、お互いの良さを伝えられたらと思っています」
●MotoGP2年目の中上選手に期待しよう!
2月からマレーシアでのテストが始まって、いよいよ2019年シーズンが始まりますね。
中上選手「今年はとにかく結果、まずは1勝ですね。MotoGPというワードがまだまだ世の中に浸透していないところがあるので、自分が先頭を切って結果を残すことで、MotoGPをひとりでも多くの人に知ってほしいです。バイク(モーターサイクル)と聞けばMotoGPが思い浮かぶようにしたい。それはレース結果とは違った目標ですが、結果を出すことでついてくることあるも思います」
短い日本滞在期間の中で、フィッティングにインタビューと、今日はありがとうございました。中上選手のMotoGP勝利、待ってます!
中上選手がRETÜL FITを受けている間にも少しお話を伺ったのですが、小さい頃に「自転車に乗る前にポケバイにまたがっていた」というエピソードや「勝負の世界にいるので、くだらないことでも負けず嫌いが出てしまう」といった言葉から、生粋のレーサーだと感じる一方、その話ぶりはとても穏やかかつ明瞭。聞けば、集中するときは集中する、リラックスするときはリラックスと「切り替えを大事にしている」とのこと。
MotoGP参戦2年目となり、昨年とは違った心の余裕も生まれるであろう中上選手。その活躍を願わずにはいられません。
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【Tarmac Men Comp Disc】
狙ったとおりのコーナーラインを走行し、仲間の後ろをピタッとマークし、下り坂を気ままに流して走る。そんなライドを楽しみたい方には、Tarmac Men Comp Discがぴったりです。最上位グレードのS-Worksと同じ特徴を多く採用した、ライドを楽しくさせてくれる、満足できる1台です。
■どのサイズでも同じパフォーマンスを発揮できるライダーファースト・エンジニア―ド 設計が、Tarmac伝統の上りでの反応性や、高速ダウンヒル性能を実現します。FACT 9r フレームは、コストパフォーマンスに最も優れています。
■正確な変速と高い制動力に定評があるシマノ・アルテグラのドライブトレインと油圧ディスクブレーキ。
■DT R470 ホイールは、信頼性が高いシールドカートリッジハブ採用。スポークはフロントとリアに41本で組み上げられ、軽量化と耐久性を両立しています。
Tarmac Men Comp Disc グロスメタリックホワイトシルバー/ロケットレッド/ターマックブラック
【中上貴晶選手プロフィール】
Birthday 1992/2/9
From 千葉県千葉市
Height/Weight 175p/70s
Team LCR Honda IDEMITSU
Machine Honda
>Dream MotoGPチャンピオン
Web site https://www.taka-nakagami.com/
Hobby スノボ、ドライブ
Philosophy for life 日々精進
4歳 ポケバイに乗り始める。3年連続で全日本ポケバイ選手権優勝
9歳 ミニバイクレース参戦 ミニバイク全国大会 優勝 【最年少出場・優勝記録】
12歳 ロードレース GP125クラス参戦【MFJ GP-mono 特別賞受賞】
13歳 東日本チャレンジジカップ選手権 GP125クラスチャンピオン、全日本ロードレース選手権スポット参戦、【MFJルーキー・オブ・ザ・イヤー受賞】
14歳 全日本ロードレース選手権 GP125クラスチャンピオン全戦全勝、【最年少優勝記録・最年少チャンピオン】スペイン選手権 GP125クラス ランキング12位
15歳 MotoGP世界選手権最終戦バレンシア ワイルドカード初参戦 スペイン選手権 ランキング6位
16歳 MotoGP世界選手権 GP125クラス参戦
17歳 MotoGP世界選手権 GP125クラス ランキング16位
18歳 全日本ロードレース選手権 ST600クラス参戦
19歳 全日本ロードレース選手権 J-GP2クラス チャンピオン
20歳 MotoGP世界選手権Moto2クラス参戦 ランキング15位
21歳 MotoGP世界選手権Moto2クラス参戦 ランキング8位
22歳 MotoGP世界選手権Moto2クラス参戦 ランキング22位
23歳 MotoGP世界選手権Moto2クラス参戦 ランキング8位
24歳 MotoGP世界選手権Moto2クラス参戦 ランキング6位
25歳 MotoGP世界選手権Moto2クラス参戦 ランキング7位
26歳 MotoGP世界選手権MotoGPクラス参戦 ランキング20位
27歳 MotoGP世界選手権MotoGPクラス参戦
インタビュアー:須貝弦
万年ビギナー状態だが、それでも自転車で地元の里山をめぐることを心のヨリドコロとするフリーライター。
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