トライアスロン界の生けるレジェンドが、今シーズン再びITUサーキットに復帰。彼の見据える究極のゴールとは?
WTS世界チャンピオン5回、アイアンマン70.3世界チャンピオン3回、そして昨年、満を持してフル・アイアンマンにも進出した、トライアスロン界の生けるレジェンドが、今シーズン再びITUサーキットに復帰しました。
—— 1年のブランクを経て、ワールドトライアスロンシリーズ(WTS)への復帰を果たしましたが、その意図は?
来年の東京オリンピックだよ。目下の目標は、スペイン代表の座を獲得すること。そのため、今年1年のWTSシリーズ戦と8月に東京で行われるオリンピックテストイベント、そして9月のWTSグランドファイナルは非常に重要になってくる。さらに、その1週間後に行われるアイアンマン70.3の世界選手権も狙ってるんだ。
編注)ゴメスは2008年北京オリンピックでは、優勝候補筆頭に挙げられていたがラスト勝負に敗れ4位。2012年ロンドンではアリスター・ブラウンリーに敗れて銀メダル。前回リオでは、代表に選出されていたものの直前にクラッシュで負傷し出場が果たせなかった。2020年東京は、彼にとって4度目の正直となる。
—— 昨年はコナにも出場しました。そして、今年も横浜の2週間前にITUのロングディスタンスレースで優勝していますよね。ロングとショート(オリンピックディスタンス)の両立は可能ですか?
僕が一番得意な距離はオリンピックディスタンス(スイム1.5km、バイク40km、ラン10km)と70.3(ハーフアイアンマンディスタンス、スイム1.9km、バイク90km、ラン21.1km)なんだ。今やってるトレーニングは、両方の距離で高いパフォーマンスを発揮できると信じてる。実際、2014年はWTSと70.3の両方で世界チャンピオンになっているし、2017年は70.3で世界チャンピオン、WTSで2位。ただ、スプリントディスタンス(オリンピックディスタンスの半分)になるとちょっと話が違ってくる。スピードのレベルが一段上がるからね。この距離でトップレベルのパフォーマンスはもう難しいと思ってる。一方で、アイアンマン(スイム3.8km、バイク180km、ラン42.2km)も、トレーニングの組み立てがまったく変わってしまうので、両立はできない。
2019年アイアンマンワールドチャンピオンシップ
——昨年はハワイ・コナでのアイアンマン世界選手権を経験しました。
ITUサーキットを長くやってきて、何か新しいことをやりたいと思っていたからね。初アイアンマンとなった去年のケアンズでは、勝てなかったけど7時間台で2位と、そのパフォーマンスには満足してる。ただ、コナではうまくいかなかったね。レース中の補給に問題があって、ランの途中で失速してしまった。結果こそ出せなかったけど、すごくいい経験になったし、やってよかったと思ってるよ。僕がコナで勝てる日が来るのか、それはわからないけど、次回は少なくとも去年よりはいいレースができると思う。コナは難しいね。独特だ。暑さと湿度、そして風が勝負を分ける大きな要因になる。そして、世界選手権ならではの競争の激しさ。ひとつ言えるのは、アイアンマンとITUレースは全く違ったスポーツだということ。向き不向きも当然あると思うよ。
New SHIV Debut 〜 アイアンマンの聖地、KONAで求められるバイクとは>
——アイアンマンのトレーニングがショートのレースで役立っているということはあるんでしょうか?
スタミナがついたこと、そしてバイクのレベルが上がったことは大きな収穫だね。一方で、ランでのスピードも落ちてないんだ。スプリントディスタンスでの切れ味はもうないけど。一方で、バイクコースの起伏が激しいレースや、暑さの中でのレースなど、タフな条件になればなるほど僕に有利になるだろう。そういう意味でも、8月のお台場でのテストイベントはイケると思ってるんだ。
2019年横浜トライアスロン Photo:ⒸTommy Zaferes
—— ところで、ハビエル・ゴメスといえば、ゴール前の直線でのラストスパート、というイメージがあります。印象に残っているシーンはありますか?
2013年ロンドンではジョナサン・ブラウンリーと、2014年横浜はマリオ・モーラと、そして2015年横浜ではアリスター・ブラウンリーとの一騎打ちが印象深いね。アリスターの時は、彼がかなり早い段階でスパートをかけてきて、僕はその後ろに必死でくらいつきながら、最後のアタックポイントを狙ってた。ある時一瞬、彼に失速の兆しが見えて、「今しかない!」と一気にスパートをかけたんだ。最後まで持つかどうか自分でもわからず、ただただ「最後まで持ってくれ」と祈りながら走ってたよ。このシーンは今でもビデオで見返すことがある。本当にスペシャルな勝利だった。こういう時、少しでも判断を誤ると、ゴール直前で失速することもある。このあたりは自分と相手の状態を察知する感性と長年の経験がものを言うんだ。ほんの些細なことが勝敗を分ける。タイミングだったり、メンタルの強さだったり、自信だったり。スプリント勝負というのは究極のメンタルゲームだね。
2013年WTSロンドンでの、ジョナサン・ブラウンリーとのスプリント勝負
2014年横浜での、マリオ・モーラとのスプリント勝負
2015年横浜での、アリスター・ブラウンリーとのスプリント勝負
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どれを見ても息を飲むスプリント勝負!ゴメスが走りながらも相手の様子をうかがっているのがとても良くわかる動画でした。
Vol2では、トップレベルで競技を続ける秘訣や使用しているスペシャライズドのバイクについてご紹介いたします。
インタビュアー:東海林 美佳
一般女性誌からスポーツ誌まで幅広いジャンルで活躍するエディター&ライター。アイアンマンハワイをはじめ、海外レース、海外選手の取材を多数手がける。記事はこちらから>
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