有名なトレイルで走るという夢を抱きつつも、残念ながらマウンテンバイクのメッカに住んでいなければ、あなたならどうしますか?
―カイオ・スザートとエドゥアルド・アルーダは自分たちでトレイルを作ることにしたのです。
カイオ・スザートとエドゥアルド・アルーダから溢れ出るもの、それはパッションです。この2人のブラジル人トレイルビルダーには、バイクがただの遊び道具ではなく、ライドが人生や世界をより豊かに変えるという信念があります。 ブラジルという広い国の異なる地域で育ったカイオとエドゥアルドは、人生は毎朝ベッドから這い出て、給料を稼ぐために仕事に出かける以上のものであるという信念でつながっています。2人は日常でそんな信念を体感するべく、意識して生きようとしました。そして彼らは、そのカギを握るものが、トレイルとマウンテンバイクであると思ったのでした。 2人はすぐに協力し合いながら、そんな夢を実現して行こうとしました。しかしまず初めに、トレイルビルドやマウンテンバイク映像作りに加え、人々を乗る気にさせる方法を学ぶ必要がありました。結局、2人はブラジルでの文化的変革のベースを作ることとなりました。それは、マウンテンバイクに乗ることに新たな意味を生むものでした。カイオにとって、フリーライド生誕の地であるブリティッシュコロンビア州を訪れたことがすべての始まりでした。BC州に無数に広がる世界レベルのトレイルを走ることで、自身が追い求める活動に必要なものがはっきりしたのです。それは、初めてウィスラーを訪れた時の最終日。彼はあることを悟りました。
すべてが1つになり出したその瞬間を、彼は今でもはっきりと思い描くことができます。
「辺りは暗くなり、その日最後のトレイルを下りているときだった」と、思い出すカイオ。
「明日、僕はリオデジャネイロに帰る。でも、どうしてここが僕の故郷のように感じ、本物の故郷をそう感じることがないのだろう?」
カイオは、ブラジルに帰るのは自分自身のためだけでなく、ブラジルでマウンテンバイク革命が起きるのを待ち侘びている人々のためでもあると気づきました。 この革命を待ち侘びるどころか、そのために動く準備ができていたライダーのうちの1人が、エドゥアルドでした。カイオがウィスラーで悟ったのとほぼ同時期に、エドゥアルドはトレイルビルドの勉強に没頭していました。彼もプロトレイルビルダー養成コースを受けるべく、BC州を訪れました。しかし、彼が到着すると、コースが予想外にも使用不可となっていたのです。
それでもくじけないエドゥアルドは、周辺の街を調べ、なんとか地元のトレイルビルドクルーとつながることができました。彼らはエドゥアルドに、重機の扱い方を教えました。また、何もない森にトレイルを計画する方法を教え、本物のトレイルビルダーになれるよう道具までも与えたのです。
「マウンテンバイクとトレイルビルドは、僕の血の中を流れている」と、微笑みながらエドゥアルドは言い、腕に刻まれた、山を抱くように走るトレイルのタトゥーを見せてくれました。陳腐な表現だとわかった上であえて言わせてもらうと、エドゥアルドは確固とした信念を持ち、有言実行の男なのです。
カメラ担当のカイオと、レーキ、ショベル、重機を操るエドの2人は、ブラジル人サッカー選手の巧みなボールさばきの如く、バイクを走らせます。彼らは、母国をマウンテンバイクのメッカにするための土台作りに奔走中です。その実現は、時間の問題でしょう。
「皆、マトリックス(ヴァーチャルリアリティ)から離れる必要があるから、僕は赤い錠剤の準備に忙しいんだ」と、
赤い錠剤が現実世界を、青い錠剤が仮想世界をもたらす映画『マトリックス』を引き合いに出し、カイオはクスクス笑いながら言いました。
今回の話では、カイオとエドの赤い錠剤が、あなたを果てしなく続くマウンテンバイクトレイルの世界へと連れて行ってくれます。赤い方をぜひ、お選びください。
カイオ (左)と エドゥアルド (右)
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