機能性のシンプリシティが、今どきのいいヘルメットの条件である
MTB用ヘルメットなら、軽いが一番だ。
まずMTBライドにおいては、軽いということだけでヘルメットは快適だ。被りくらべればよくわかるが、オフロードででは重いヘルメットはぶれやすい。そういった意味で、スペシャライズドのMTB用ヘルメット『Ambush』は使いやすい。S/Mサイズで重量300gだ。
機能性のシンプリシティが、今どきのいいヘルメットの条件である。スペシャライズドのMTB開発クルーは、一つの機能を見直すことで、軽さを保ったまま、MTBらしいスタイリングと最もMTBらしい機能を盛り込んだ。これはスペシャライズドのメット開発野郎の挑戦物語である(と思う)。
MTB専用として、ぜひとも盛り込みたかった機能は、可動式のバイザーだろう。ゴーグルの使用も見越した、他のヘルメットには類をみない作りである。
エンデューロレースでは、ゴーグルを使うことが多い。アイウェアの形を選ぶより、ゴーグルの方が確かに目に風も土もゴミも入ってこない。
ただし走り終わった時にはゴーグルはあると邪魔なので、しかも登りはゆったりというのが今どきのスタイルだ。そこでゴーグルは頭の上にひょいとイケルッ感じが良い。
後部にあるストラップの引っ掛かけも、ゴーグルを外すと見た目にはわからないが、実際につけるとなるほど、となる位置にある。また、バイザーの角度が変えられるということは、バキンと上に向けて、BMXレーシングスタイルに、ガチッとしたまで下げて雨よけに、みたいな使い方もできる。むやみにヘルメットおしゃれさんになることもできる。もちろん通常のアイウェアとも相性がいい。こめかみ部のストラップが完全にゆるいため、アイウェアのテンプル部と干渉することがないからだ。アイウェアをつけたまま、ヘルメットは脱げる。
ヘルメットはもともと、あごひもが安全さの基本である。
まずあごひもを絞め、後ろの一体式ダイヤルを回して、頭の形に合わせる、というのが基本の使う作法である。
あごひもがしっかりと(しかも苦しくなく)締まっていれば、つまりあごひも部のスライダーがスイッと調整しやすければ、より確実にヘルメットは頭についたままとなる。
一方で、ひもに関して言えば調整可能な箇所は、そこだけだ。あごひもの基本がしっかりできていれば他の細かな調整はいらないだろう、という割り切りの判断であろう。細かくフィット感を調整させるものが、多くのひもやパーツで重量を増やし、かえってヘルメットのシンプルさを失ってしまっていそうだからだ。
だからこその、あごひも重視政策、もとい制作である。パッケージにも書いてある「万人にフィットする」というの、言葉通りにシンプルに実現しているわけだ。
なんにせよ、ヘルメットはあごひもをしっかりと締めている方が安全で快適だ。それをこのヘルメットは思い起こさしてくれる。
このヘルメットの重量は300gだ。数値としては軽い部類に入るはずだ。軽いというヘルメットの理想形を、あごひもの動きを軽く、スムーズにするという、ヘルメットならではの装着動作にまとめたのではないだろうか。
それはおそらく、ひもやナイロンストラップ群を含めた、トータルとして軽量なMTB用ヘルメット作りに挑戦したという結果であるように思う。Ambushヘルメットは、実はこういった細かなこだわりのヘルメットであることを見るに、車体メーカーの作るアクセサリーだからこそ、気合いが入っているんだろうなと思う。開発陣に、一度会ってみたいし、一緒に乗ってみたいとも思う。
【筆者紹介】:中村浩一郎
MTB関連記事の執筆や翻訳を行う。冬こそ山ライドのシーズンかなとも思い、すこしずつウィンターライドの準備を始める。雪が降ったら27.5+のタイヤは楽しそうだね。
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