元ロード選手という顔も持ち、現在はグラベルレースを主戦場としているアリソン・テトリックだからこその視点で、グラベルライディングの楽しさを解説します。
ますます注目度が高まりつつあるグラベル。グラベルバイクで走れば舗装と未舗装の境界線はなく、荷物を積載したツーリングも行え、楽しみ方は様々です。アリソン・テトリック(アメリカ)は、世界でもっとも過酷なグラベルレースで、2017年コースレコードを更新し、優勝に輝きました。彼女が考えるグラベル、そして新型Divergeについてご紹介します。
Alison Tetrick Best Results:
“All Things Gravel” Alison Tetrick ライブトークの内容はこちらよりご覧いただけます。(英語のみ)
アリソン(以下A): グラベルとは、自由をあなただけの形で表現できるバイクに乗り、真剣になりすぎず、でも己の力に挑戦する「遊び」です。世界各地で人気が急上昇していますが、私たちがこれまで楽しんできた、バイクで行きたい場所へ行くことに変わりありません。オフロードでも通勤でも同じで、結局のところ皆がグラベルを楽しんでいることになります。対象となるライドの幅はとても広く、自動車の少ない道を散策するのも、レースに出るのも、冒険するのも、楽しむことが最大の目的です。
私は世界各地のワールドツアーに約9年間参戦してきました。ロード世界選手権で表彰台に立ったこともありますが、毎年同じレースに出ていているうちに自分の限界を感じ、そのうちこれじゃないと感じ始めました。ロードのトレーニングにはなりませんが、バイクでの散策が好きだったので、320kmを走るグラベルレースのことを聞いたとき、挑戦したくなりました。いざ出たら優勝して、11時間40分41秒というコースレコードを残すことができました。そんなに長い時間、バイクに乗っていたのは初めてでした。グラベルを走るのも初めてで、マウンテンバイクすら持っていませんでしたから、オフロードを走るのは怖かったです。でも、会場で出会う人々がすばらしく、このイベントの虜になりました。ロードレースでは、レース以外の時間のほとんどをチームバスで過ごしますが、グラベルレースではレース後に皆でワイワイ会食します。参加者たちの走りのレベルは関係なく、みんな好きなライドで経験を得るために集まっていて、走り終えたという達成感を感じていています。この雰囲気を楽しむうちに、バイクへの情熱が再び燃え出しました。
A.ロードレース出身なので、空気圧はいつでも88PSIにセットしてきました。グラベルタイヤを低圧で使うものと知ってからは、グラベル、シングルトラック、舗装路など、走る路面によって40〜50PSIにセットしています。また、岩が多ければさらに低めに、スムーズな路面であれば高めにセットします。
グラベルレースの最高峰のグラベルレースでは、起伏の中を走り、路上に落ちている石は鋭く、こぶし程の大きさがあります。このレースでは、42mmのpathfinderで優勝し、記録を残しました。グラベル世界選手権では、路面が裸足で歩けるほどの小石であったため、42mmよりスムーズな路面での転がり抵抗に優れた38mmを選びました。それより細いとBBハイトが下がり、岩にぶつかりやすくなるからオススメしません。オレゴンのレースでは、コースがマウンテンバイクのそれとほとんど変わりなく、マウンテンバイクタイヤのショルダーノブを削り落として使っている選手もいたほどでした。イベントは世界各地で行われるため、事前に地形を把握しておくことが大切です。
A.ロード、シクロクロス、グラベル、マウンテンは、ディスクブレーキ以外に選択肢はないと思います。すばやく減速できれば、バイクの性能を限界まで引き出せます。危険ではなく、整備も簡単だから、どのバイクにも使われるべきだと考えています。
A.トレーニング方法はロード時代と同じです。高強度や長距離など、とにかく乗っています。水分補給は、私自身が製品開発に携わっている1.5Lのキャメルバッグで行っています。ツールなどもその中に入れ、ポケットには補給食を入れ、2本のボトルをバイクに取り付けています。装備はレースごとに異なります。例えば最高峰のグラベルレースでは、トップチューブにもストレージをつけて、レースでは補給食を出し入れしやすいようにしました。また、エイドステーションが2箇所あり、立ち寄るたびにピザやドーナツなどを入れたハイドレーションパックに交換しました。アイスランドのレースでもエイドステーションが2箇所あったのですが、ハイドレーションパックを背負っていたので、そのうち1箇所に立ち寄らないでタイムを短縮させる賭けに出ました。レースの目的が優勝と完走のどちらであれ、早めに水分と栄養を補給しておくことが大切です。レースでは、ジェルや電解質を1時間に250kcal分摂取し、脱水症状やエネルギー切れを起こさないよう注意しています。普段、遊びで走るときは、ハンドルバーバッグを使用していますが、エアロではないため、レースでは使いません。
A.スペシャライズドの風洞実験施設Win Tunnelでキャメルバックを付けた場合のエアロをテストしたところ、3本目のボトルをダウンチューブ裏側に取り付けた場合よりも速い結果が得られました。背中に密着するため、エアロ効果にそれほどの悪影響がないようです。
気温が高くなりすぎた場合を想定し、Prevail ヘルメットを使った方が良いのではとの声もありますが、Evadeは旧モデルよりも通気性が高まっているため、レースではより速いEvadeを選ぶようにしています。
スキンスーツを着てテストもしましたが、少し暑いのと動きにくいので、タイムトライアル以外では着用していません。最速のウエアであることは間違いありませんが、バイクにバッグやレースプレートを取り付け、補給食などをポケットに入れ、ハイドレーションパックを背負った場合、グラベルレースでの有効性を確証できず、ホッとしました。これは、グラベルでは時速32km以下で走ることがほとんどで、スキンスーツはそれ以上の速度に効果的となるためです。また、ネルシャツはグラベルレースで人気のアイテムですが、着ても速く走れないそうです。見た目に気を使うのは素敵なことなんですけどね。
A.いつ仕掛けていつ休むのかなど、戦略が重要です。トレーニングする距離は重要じゃなく、補給やペースが大切です。スタート直後から先頭を目指して全開で走る選手は多いですが、12時間近く走るため、ペースはある程度抑えるべきです。しかし、私は先頭集団にできるだけ長く留まり、いくつかの区間タイムから展開を逆算するようにしています。エイドステーションでは必要なものを手に入れたらすばやく出るといいでしょう。距離はたまに長く乗るだけでOKです。私も9割はロードトレーニング。住んでいる街にグラベルはなく、グラベルバイクに乗るのはファンライドの時だけです。
A.ダートは確かにロードと違い、走行抵抗が大きいですが、必ずしもたくさん走らなくていいと思います。最高峰のグラベルレースでは緩やかな起伏ばかりですから、下りや路面が荒れた時に落ち着いて走るようにしましょう。体幹の強度、栄養や水分の補給は大切です。また、気の持ちようも大事です。気が散るし、一人だし、暑いし、風が吹き付けますが、平静を保つことが大切でしょう。また、レースでは滑りやすい路面の高速コーナーが時折現れるので、バイクの安定のさせ方や正しいライン取りの練習が必要です。
A.長時間乗っているうちに空気圧は下がっていくので変えません。ただ、路面がマディーになるとタイヤクリアランスを広げないといけないので、落とすことがあります。また、エイドステーションでスローパンクしていないかをチェックします。
A. ジオメトリーとタイヤクリアランスです。Roubaixはアドベンチャーロード、荒れた路面もスムーズに走れるよう、太いタイヤを履けるクリアランスを備えています。それに対して、DivergeはSUV的バイク。細めのロードタイヤからマウンテンバイク並みに太いタイヤまでも履かせられます。Divergeで特に気に入っているのは3点。まず、Future Schokは最高です。ロード出身なのでオフロードは苦手でしたが、それがあるから安心して走ることができ、疲労も軽減されます。次に、ジオメトリーがすばらしいです。ステム長を10mm短くし、重心を後ろに移動できるようになったので、ロード性能を保ったまま、テクニカルな路面も安心して突き進めるようになりました。最後に、タイヤクリアランスが十分に広いため、速さと快適さの両方を備えた完璧なタイヤを選べます。
A.SWAT Doorにはジャケットやパンク修理キット(ツール、ポンプ、CO2ボンベ)などを入れています。バイクの中心にギアを入れられるから重心が下がり、テクニカルなセクションでの安定性や反応性が高まります。また、出し入れが簡単なのも気に入っています。
A.最高峰のグラベルレースから舗装路のセンチュリーライドまで出られるDivergeを持っていきます。
新型Divergeについて詳しく>
新型Diverge開発ストーリー>
スペシャライズドグラベルバイクをチェック>
A.悪天候に備えるためジャケット、長い下りやレース前後のキャンプで使える薄手のダウンジャケット、ハイドレーションパックなど、どんな状況にも対応できるように備えておきます。準備が大切だと思います
+++++++++++++
通常のロードジオメトリーは使われず、高速域での安定性と安心感が高いプログレッシブジオメトリーが使われています。旧ジオメトリーと比べ、リーチとフォークの位置を前に出し、ヘッドアングルを寝かせ、フォークオフセットを増やしてあります。リアトライアングルがタイトなため、ハンドリング性は機敏なままです。
ジオメトリーの開発では、プロトタイプに細かな変更を何度も加えました。中には、ヘッドチューブを4本のボルトで固定し、フォーク長やヘッドアングルを変えられるようにしたテストバイクもあります。
グラベルではタイヤチョイスが重要であり、38mmからマウンテンバイクタイヤまでをコースに合わせて変えるため、十分なクリアランスを設けました。700c x 47mmや27.5 x 2.1インチのタイヤを履くことができます。チェーンステーの幅をタイヤに合わせて広げると、チェーンリングと接触してしまうため、カーボンパイプの代わりに薄い板状のカーボンを使って剛性とクリアランスを確保しました。
320kmを走る最高峰のグラベルレースでは、さまざまなアイテムを運ぶ必要があります。ダウンチューブのSWAT ストレージはもちろん、ウォーターボトルケージの台座を6箇所用意しました。内訳は、フロントトライアングル内側に2箇所、ダウンチューブ裏側に1箇所、フォークレッグに左右1箇所ずつ、トップチューブ上側に1箇所です。
フレーム重量は1kg弱、ライダーファースト・エンジニアードで作られているため、どのサイズに乗っても、それぞれの体格に合わせて最適化された剛性やハンドリング性を体感できます。
アグレッシブな路面の走行を想定し、新型Rhombusタイヤも用意しました。幅は42mm、チューブレス対応です。タイトに敷き詰められたセンターノブは転がり抵抗を減らし、交互に配置されたショルダーノブはコーナリンググリップを高めます。
新型Divergeについて詳しく>
新型Diverge開発ストーリー>
スペシャライズドグラベルバイクをチェック>
関連記事
非日常へ導く究極のグラベルバイク 新型Divergeデビュー(2020年5月8日)
新型Divergeに関するFAQ(2020年5月8日)