シーズンイン直前、選手は何をしているのか。スペシャライズドサポートチームのトレーニングキャンプをのぞいてみましょう。
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トレーニングキャンプとは何か。チームで行う合宿練習である。部活などで経験した方もいるだろう。多くのプロロードチームも年末から年明けにかけてトレーニングキャンプを行う。
冬眠から目覚める動物のように、彼らは始動する。行き先は暖かく、雨の少ないところが好まれる。オフシーズンの空気を脱ぎ捨てて、ゆっくりとギアを入れていくのにふさわしい。レースシーズン前に流れる空気は柔らかく、笑顔も目立つ。
選手もスタッフも入れ替わりが激しい業界だ。トレーニングキャンプが顔合わせの場になることは多い。昨年から引き続きの同僚には挨拶代わりの近況報告、新顔には自己紹介。レースシーズンが始まれば、チームはグループに分かれて世界中を転戦することになる。全員が一堂に会する貴重な時間だ。
チームの集合写真や選手のプロフィール写真を撮影するのもこのタイミング。
ボーラ・ハンスグローエの選手たちがラルフ・デングGMとタイトルスポンサー・ボーラ社のシステムキッチンを囲む一枚。Photo:©BORA / Anja Prestel
撮影は一日かけて行われることもある。準備中も楽しそうなチームSDワークスの選手たち。
今季加入したエレナ・チェッキーニ(写真の一番右)は元イタリアチャンピオン。2019年までドゥクーニンク・クイックステップに所属していたエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア)のパートナーでもある。Photo:©GettySport
合宿中は運動やゲームを通じて交流を深めることも。ドゥクーニンク・クイックステップは高跳びに挑戦。
ダヴィデ・ブラマーティ監督が華麗なジャンプを披露(成功の前に何度か失敗していたようだ)。Photo: ©Wout Beel
乗って、乗って、乗りまくる。サドル、ハンドル、そしてペダルの感覚を思い出す。距離を乗り込んでいく。過酷なレースを戦い抜くための肉体を作り上げるために、長い時間を自転車の上で過ごす。
ドゥクーニンク・クイックステップはスペイン・バレンシア州南部のアルテアに滞在。
昨年末にも10日間の合宿を行っており、年明けに再合流。外に出る日は100〜200q程を走る。Photo: ©Wout Beel
ボーラ・ハンスグローエの合宿地は「イタリアの湖水地方」と呼ばれるガルダ湖周辺。
ペテル・サガン(スロバキア)を中心に実戦さながらのスプリントリードアウトトレーニングを行う。
サガンのレーススケジュールは未定だが、4月の石畳クラシック―ロンド・ファン・フラーンデレンとパリ〜ルーベ、7月の東京五輪、そして9月のフランドル世界選手権をターゲットにする可能性が高そうだ。Photo:©Chiara Redaschi
雨の日はインドアライドに切り替えることもある。トレーニングキャンプの期間中、ZWIFTで何度か選手を見かけた。レースシーズン中と比べるとスピードはマイルド。頑張ればついて行けそうだ。
集中した表情のジョアン ・アルメイダ(ポルトガル)。昨年のジロでの大躍進が記憶に新しい。
地元紙によるインタビューによると、彼の今年の目標はブエルタ・ア・エスパーニャ。Photo:© Wout Beel
トレーニングに欠かせないのがコーヒーだ。プロアマ問わず、コーヒーを愛するサイクリストは多い。プロ選手にとっても、カフェストップはモチベーションのひとつである。
ドゥクーニンク・クイックステップにはキャンピングトレーラー型のコーヒースタンドが同行。筆者の知る限り、こんなチームは他にない。Photo:©Wout Beel
世界王者の証、虹色のジャージ「アルカンシェル」を着るジュリアン・アラフィリップ(フランス)もコーヒーが大好き。
アラフィリップの横には昨年の大事故からの復帰を目指すファビオ・ヤコブセン(オランダ)の姿が。彼は12月と1月、両方のトレーニングキャンプに参加している。Photo:©Wout Beel
ドゥクーニンク・クイックステップきってのコーヒー通、カスパー・アスグリーン(デンマーク)はチームのバリスタ。
実は彼がプロデュースしたウルフパック公式のコーヒー豆がウェブショップで販売されていることをご存じだろうか。
残念ながら日本からは購入できないのだが、気になるアイテムだ。次回渡欧の際に購入したい。Photo:©Wout Beel
そして、お待ちかねの休息日がやって来る。トレーニングの一環で、体を回復するための時間だ。この日はリラックスして自転車に乗る。疲労を抜くことが目的なので、強度を上げすぎず、距離も20〜30qにとどめて短時間で切り上げる。
美しいガルダ湖の景色を楽しみながら休息日を過ごすサガン。何とも言えない表情に注目。
余談だが、レース観戦を始めた頃、選手たちが休息日に休んでいるわけではないと知って驚いた。レースシーズンが始まると、強弱はあれ彼らのスイッチは入ったままになる。トレーニングキャンプは、スイッチを入れるための儀式なのかもしれない。
最適なライドポジション。それは、空気力学と選手の特性の間にある。柔軟性やパワーの絶対値は選手によって異なる。空力を優先すると、出力が下がってしまう選手も存在する。だからデータと分析が重要だ。天候や地形の影響を受けず安定した環境にあるベロドローム(トラックレースを行う自転車競技場)を使って、走行データを計測する。ハンドルの位置やサドルの種類を変更しながら、計測を繰り返す。時間と手間をかけて、それぞれの選手にとって最適なポジションを見つけ出すのだ。
ベロドロームでのテストはひとりずつ行う。もちろん事前のバイクフィッティングも欠かせない。
時間をかけたチューニングに、トレーニングキャンプはうってつけだ。Photo:©Wout Beel
スペシャライズドは全てのサポートチームにバイクフィッティングの支援を行っている。機材を開発して、提供して終わりではない。もっと速く、望む場所へ届くように。バイクを選手の最高の相棒にするために、妥協はしない。
選手たちの支援を通じて得られたフィードバックは、次回のプロダクト開発に活かされる。プロチームとの交流を通じて得たノウハウはアマチュアにとっても有用なもの。フィッティングもプロダクトも、望めば誰もが世界最高水準を手に入れることができるのだ。
Retul Fit中のサガン。私たちも同じサービスをRetül展開店で受けることができる。
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専用のツールを使って製作するカスタムフットベッド。パフォーマンスと快適性を高めてくれるオリジナルのインソールが30分程で完成する。
こちらも同様のサービスを取扱店で展開している。気になる方はぜひ問い合わせを。
動画に登場するネオプロのマチュー・ウォールス(イギリス)は早速S-Works Aresを使っている模様。
たった一秒が勝敗を分ける:S-Works Aresについて>
トレーニングキャンプ期間、メディア向けの記者会見を行うチームは多い。チームの体制や主要選手の目標がお披露目される場である。ロードレースファンは是非チェックしておきたい。誰と誰がどのレースで対決することになるのか、強豪が揃うレースを勝つのは誰か。想像をめぐらせて、シーズンインを楽しみに待つ。
マーク・カヴェンディッシュ(イギリス)は5年ぶりにドゥクーニンク・クイックステップに復帰する喜びを語った。
「今年もレースを楽しみたい。もし勝てないとしても、チームに貢献できると思っている。僕が以前ここにいた時、チームメイトがそうしてくれたように」
一時離脱中の選手の動向も気になる。怪我の多いスポーツだ。危険がないことを、そして負傷してしまった場合には早い回復を願うばかりである。
昨年のイル・ロンバルディアで骨盤を骨折し、療養とリハビリを続けるレムコ・エヴェネプール(ベルギー)。
トレーニングキャンプに参加しているがバイクの上に戻るのはもう少し先。焦らず完全回復を目指す。
復帰が間に合えば、ジロ・デ・イタリアでグランツールデビューを飾る。Photo:©Wout Beel
ボーラ・ハンスグローエの選手たちはトレーニングキャンプ終盤に交通事故に巻き込まれてしまった。
今季加入のウィルコ・ケルデルマン(オランダ)は脳震盪と椎骨骨折を負ったものの、事故の数日後にはZWIFTでトレーニングに復帰。
昨年のジロ・デ・イタリアで総合3位だった彼は、今年ツール・ド・フランスの総合リーダーに指名される予定だ。
最後に各チームの初戦を確認しておこう※。ドゥクーニンク・クイックステップは2月3日開幕のボルタ・ア・ラ・コムニタ・バレンシアナ(スペイン/ステージレース)、ボーラ・ハンスグローエはバレンシアナに加えて同日からスタートするエトワール・ド・ベセージュ(フランス/ステージレース)にも出場する。SDワークスは2月18日セッティマーナ・チクリスタ・バレンシアナ(スペイン/ステージレース)が初戦だ。※2021年1月24日時点情報。
世界はいまだパンデミックの中にある。いくつかのレースは既に延期や中止が決まった。しかし対策を施しながら開催を目指すレースも多い。間もなくスペシャライズドサポートチームの活躍をご覧いただけるはずだ。素晴らしい走りと勝利をお約束する。どうぞ、お見逃しなく。
レースで会いましょう!
【筆者紹介】
文章:池田 綾(アヤフィリップ)
ロードレース観戦と自転車旅を愛するサイクリングライター。トレーニングキャンプの写真がSNSに上がってくると、もうすぐシーズンインだと実感します。寝不足の毎日が待ち遠しいです。
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