グランツール最高峰「ツール・ド・フランス」が始まります。今年は女性版も熱い!開幕前の予習で何倍も楽しく観戦できます。
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夏が来た。ツール・ド・フランスが始まる。五輪、サッカー・ワールドカップとともに世界3大スポーツイベントに数えられることもあるグランツール2戦目にしてロードレースの最高峰である。
ツールは7月の風物詩。「フランス一周」という名前の通りフランス各地を巡る21日間のステージレースというのがお約束だが、今年はデンマーク・コペンハーゲンで開幕し、スイス、ベルギーにも入国するルートが設定されている。2022年大会の開催期間は7月1日(金)から7月24日(日)まで。最終日は恒例のパリ・シャンゼリゼを駆けるスプリントで締めくくられる。
そして、今年は男子選手たちのツール最終日が女子選手たちのツール開幕日となる。7月24日(日)から31日(日)の8日間で第1回「ツール・ド・フランス・ファム・アヴェク・ズイフト」が開催されるのだ。つまり7月いっぱいツールを楽しむことができるというわけである。順番にレース概要と注目スペシャライズドライダーをチェックしていこう。
ツール史上最北の地デンマークからスタートする今年のツールの総走行距離は3,446.5km。個人タイムトライアルステージが2、平坦ステージが6、丘陵ステージが7、山岳ステージ6のうち山頂フィニッシュは5という構成は一見するとクライマー向け。だが数々の罠が仕掛けられており、一筋縄ではいかない。
ツール・ド・フランス2022コース。
開幕から3日間をデンマークで過ごした後フランスへ飛び、スイス、ベルギーに立ち入りながらパリを目指す。
■ツール・ド・フランス2022ステージ詳細
出場選手は21回のステージ優勝と特別賞を争う。その日までのステージを最も速く走った選手=積算走行時間が最も短い選手には「総合賞」が、コースに設定されたスプリントと山岳ポイントを最も多く収集した選手にはそれぞれ「ポイント賞」と「山岳賞」が与えられる。25歳以下の選手を対象とした若手総合賞(ヤングライダー賞)も設定されている。
■特別賞ジャージ一覧
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特別賞の選手たちは翌日のステージで専用のスペシャルジャージを着用して走る。最終ステージ後に大会を通じた成績が確定するが、たとえ1日でもスペシャルジャージを着用することは大変な栄誉。今年の第1ステージは個人タイムトライアル。初日のマイヨ・ジョーヌ獲得を目指してカスパー・アスグリーン(デンマーク/クイックステップ・アルファヴィニル)らタイムトライアルを得意とする選手たちが激しく火花を散らすだろう。
Shiv TTを自在に駆るアスグリーン。スプリントトレインの牽引役としても活躍する。
出発地デンマークの出身ゆえこのツールにかけるモチベーションは高い。 © 2022 Getty Images
ツールの総合賞ジャージ「マイヨ・ジョーヌ」は全ての自転車選手たちの憧れ。
ジュリアン・アラフィリップ(フランス/クイックステップ・アルファヴィニル)は2019年から3年連続でこのジャージを着用。
今年は落車負傷の影響でツールには出場せず、シーズン後半に照準を合わせる。© 2021 Getty Images
今年の目玉は第5ステージ。「北の地獄」の異名を持つパリ〜ルーベに登場する区間を含むパヴェ(石畳)セクターが登場する。総合上位を狙う選手にとっては落車やメカトラによりタイムを失う可能性がある危険なステージだが、2018年パリ〜ルーベチャンピオンであるペテル・サガン(スロバキア/トタルエネルジー)は胸を躍らせているに違いない。もっともサガンがこの日までにステージ勝利を掴んでいる可能性もあるのだが。なぜならば第2ステージや第4ステージは風の強い地域を走る。コースに吹き付ける風は集団を破壊し、レースに波乱を巻き起こす。しかしサガンのようなクラシックスペシャリストにとって風はよき友人。ライバルを蹴散らす頼もしい味方になってくれるのだ。
ツール・ド・スイスとスロバキア選手権を勝ちコンディション上々のサガン。
今年のツールも盛り上げてくれるはずだ。
逆に風を御してフィニッシュ前の集団スプリント勝負に持ち込みたいのがスプリンターだ。満を持して初のツールに挑戦するファビオ・ヤコブセン(オランダ/クイックステップ・アルファヴィニル)は頼もしいスプリントトレインとともにコペンハーゲンに乗り込む。平坦ステージでは最高時速80km超のハイスピードバトルをお楽しみに。
2020年8月レース中の落車事故で瀕死の重傷を負いながら昨年レースに復帰、勝利を量産しているヤコブセン。
その実力は現プロトン最強の一角をなす。初ツールでのステージ勝利に期待がかかる。© Getty Images
今年のツールは早めに集団から抜け出してステージ勝利を狙う「逃げ屋」にも大いにチャンスがある。スタート後間もなく巻き起こるアタックの応酬を制し、フィニッシュまで逃げ切る脚と野心を持つ勇者に勝利の女神が微笑む可能性が秘められたステージが数多く用意されているのだ。ツールを走るスペシャライズドライダーの中にはステージ勝利経験のある選手も多い。Tarmac SL7が集団を先行して走っている日は要注意だ。
ツール前哨戦クリテリウム・デュ・ドーフィネで逃げ切り勝利を演じたアレクシー・ヴィエルモ(フランス/トタルエネルジー)。
先行する逃げグループがそのままフィニッシュに到達するケースは意外と多い。
📝 REPORT: BORA - hansgrohe's successful national championships - four titles and a total of eight medals.
— BORA – hansgrohe (@BORAhansgrohe) June 26, 2022
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📸: Sprintcycling / Reinhard Eisenbauer pic.twitter.com/Cb6WhQ3bzJ
ナショナル選手権を勝った選手全員がツールメンバー入りしたボーラ・ハンスグローエ。ステージハンターが揃う。
ドイツはレナード・ケムナ(個人タイムトライアル)とニルス・ポリッツ(ロードレース)が勝利。
オーストリアはフェリックス・グロスシャートナーが個人タイムトライアルとロードレースの二冠を達成。
ツールは長い。総合成績に焦点を合わせるチームは21日間を戦い抜く必要がある。そしてツールは山岳めぐりの旅でもある。ヴォージュ山塊、ジュラ山塊、アルプス山脈、中央山塊、そしてピレネー山脈。山岳はすべからく総合争いの舞台になるため、脚を温存しながら攻撃の機会に備えなければならない。
だから序盤から中盤にかけては逃げ屋たちに勝利を譲り、ライバルたちからタイムを失わない守りのレースに徹するのがセオリーだ。もちろん裏をかいて奇襲を仕掛けるチームもないわけではない。ただし最終日を総合上位で終えたい選手たちは終盤までスタミナを残しておく必要がある。特に最終週の第17・18ステージは2日連続の難関山岳山頂フィニッシュが、第20ステージは総合成績を決する41kmの個人タイムトライアルが待っている。
ジロ・デ・イタリアで総合優勝を果たしたボーラ・ハンスグローエが総合エースとしてツールに送り込むのはアレクサンドル・ウラソフ。クライマーであり、パンチャーであり、タイムトライアルにも強い。今季チームに合流してから出場したステージレース全てで好成績を連発。初出場のツールで総合上位入賞を目指す。
ステージ3勝に加えてツール・ド・ロマンディでは総合優勝と今季好調のウラソフ。
世界最強のオールラウンダーがぶつかり合うツールでどこまで上位に食い込むことができるか注目。
なおメディアの露出が多く話題づくりに最適なツールではいくつかのチームがスペシャルジャージを用意する。ボーラ・ハンスグローエもその1つで、白を基調としたデザインのジャージを準備している。
ボーラ・ハンスグローエのスペシャルジャージは夏らしく爽やかな色合い。
ツール・ド・フランスを戦い抜いた男子選手たちがパリ・シャンゼリゼに向かう7月24日(日)、その少し前に女子選手たちがパリ・エッフェル塔から新しいレースを走りだす。「ツール・ド・フランス・ファム・アヴェク・ズイフト」、ツールの名を持つ8日間のステージレースだ。
ツールの名を冠した女子レースは確かに今までも存在していた。1980年代にはツールの女子部門として男子のコースの一部を走るステージレースが開催されていたし、直近ではワンデーレース「ラ・クルス by ツール・ド・フランス」がレースカレンダーに組み込まれていた。しかし今年から始まるツール・ファムはこれまでのどのレースとも違う。女子のためにデザインされたコースを走る、女子のための新しい「ツール・ド・フランス」なのだ。
■ツール・ド・フランス ファム2022ステージ詳細
個人タイムトライアルこそないものの、多彩な地形が8日間に詰め込まれている。特筆すべきは最終日で、男子ツール第7ステージにも登場するラ・プランシュ・デ・ベル・フィーユにフィニッシュする。「シュペール(スーパー)」が頭に付くのはスキー場管理道路まで登るから。そこは最大勾配24%の未舗装路が待ち構える難所。最終日の総合逆転もあり得る、大きなドラマを生む可能性を秘めたコース構成なのである。
ツール・ド・フランス ファム2022コース。パリを出発し東を目指す全8ステージ構成。
シャンパーニュ地方の白い未舗装路が登場する第4ステージも注目ステージの1つ。
スペシャライズドサポートチームのチーム SDワークスが目指すのは、もちろん第1回ツール・ファムの総合優勝だ。チームのエースは2人、デミ・フォレリング(オランダ)とアシュリー・モールマン(南アフリカ)。フォレリングは登坂力とスプリント力に優れたオールマイティーなパンチャーで、存在感を示さない日はないだろう。ベテランクライマーのモールマンは今季で引退を決めており、彼女にとっては最初で最後のツール・ファムとなる。絶対に何かを成し遂げると心に決めているはずだ。
イツリア・ウィメンで3ステージ全勝という驚異の強さを見せたフォレリング。
成長著しい25歳がキャリア最大のレースに挑む。
第8ステージのフィニッシュ「ラ・シュペール・プランシュ・デ・ベル・フィーユ」は試走済のモールマン。
第1回ツール・ファムの最終決戦にふさわしい難関山岳を彼女がどう料理するか見もの。
平坦ステージはロッタ・コペッキー(ベルギー)の出番だ。スプリントはお手のものだが、今季は大いに登れる脚も見せつけている。丘陵ステージでも勝てる可能性は十分。荒れた展開になれば、なおさら勝機を見出すことができるに違いない。
今年のクラシックシーズンは無類の強さを誇ったコペッキー。
トラックレーサーでありシクロクロッサーでもある生粋の自転車選手で、お茶目なキャラも魅力のひとつ。
特別賞ジャージの構成は男子ツールと同じだが、純白のマイヨ・ブラン(白いジャージの意)のみ対象者が異なる。開催年において23歳以下の個人総合成績首位の選手が着用対象となるのだ(男子は25歳以下)
SDワークスは才能あふれる若手が揃うチームだが、誰がツール・ファムメンバーに選ばれるかはまだわからない。20歳のカタブランカ・ヴァシュ(ハンガリー)、21歳のアンナ・シャクリー(イギリス)とニアム・フィッシャーブラック(ニュージーランド)、22歳のロンネケ・ウネケン(オランダ)。誰が選ばれても上位入賞が期待できる。
フォレリングと若手選手たちはビッグレースに備えて高地トレーニングへ。準備は万端だ。
1チームあたりの人数は男子8名に対して女子は6名。少数精鋭で起伏に富んだ地形をカバーする必要があるとなれば、展開はより激しく、レースはより面白くなるはずだ。
※出場選手の情報は2022年6月27日時点のものです。
【筆者紹介】
文章:池田 綾(アヤフィリップ)
ロードレース観戦と自転車旅を愛するサイクリングライターです。いよいよツール!美しくも厳しい自然、アタックに次ぐアタック、サプライズな勝利。自転車を嗜む人を魅了する要素が詰まった魔法のようなレースです。世界一華やかで過酷なエンデュランススポーツを是非チェックしてみて下さい。
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