アルミロードバイク「Allez」にハマっている日本屈指のライダー竹谷賢二さん。熱が高じてカスタマイズがとんでもない領域に?特別インタビュー第3回。
普段はハイエンドなS-Worksに乗る竹谷賢二(たけや・けんじ)さん。低価格のアルミロードバイクAllez Sport(アレースポーツ)に乗ってみたところ、その素直なコントロール性能とレスポンスの正確さに驚いたという。ポジション合わせのためのカスタマイズが終わり、次に目指したのは……。
2019年モデル ALLEZ ELITEをチェックする>(前々回)竹谷賢二おすすめアルミロードバイクALLEZ~出会いと第一印象編~>
(前回)竹谷賢二おすすめアルミロードバイクALLEZ~最初のカスタマイズ編~>
アルミフレームALLEZに限界はない
最近の竹谷さんのフェイスブックを拝見すると、Allez Sportにさらに一歩進んだカスタマイズを施されましたね。
「一歩というか百歩くらい進みましたね。コンポをアルテグラに交換して、ハンドルはS-Worksのシャロータイプに、ホイールはRoval CLX32に変えました。ほぼS-Worksないしプログレードに準ずる仕様になりましたね」
※Allez SportにRoval CLX32を装着する場合、別売のエンドキャップが必要です。
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うらやましい限りの贅沢なカスタマイズですが、なぜそこまで?
「走りの粗が目立たないように各パーツを高級なものに交換していくと、逆にフレームの粗が目立ってくるのか?と、Allez Sportの限界を知りたくて、有り得ないスペックまでやってみました」
完成車で10万円前後のバイクのフレームに、普通はここまではしないですよね(笑)。
「そうですね。もしかしたらフレーム単体で言ったら3万円くらいかもしれない。だから明らかな粗や不釣合いが出てくるかなと想像したんですが」
どうでしたか?
「まず意外だったのは、見た目の高級感が上がったこと。強度のために肉厚だったパーツを削ぎ落として、フレームが真の輝きを放ったというか。これがAllez Sport?っていうくらいかっこよくなりましたね」
まるで違うフレームですね。
「そして肝心な乗り味も、Rovalホイールやアルテグラコンポになんら引けをとることなく、むしろ同等以上のグレードに感じられました。S-Works Tarmacを100点とすると78点、スプリントをかける局面で言えばさらに90点をあげられるレベルです。S-Works Tarmacのフレームを約50万円と仮定すると、価格が10倍以上違うフレームということになります。それと比べれば性能も価格差のまま10点台でもいいはずなのに、そんなことはない。78点も感じさせることに驚きました」
高度かつタフな設計思想は、初心者から上級者まで恩恵がある
とんでもなくコストパフォーマンスの高いバイクですね。
「はい。どうしてここまで粗が出ないのか仮説を立ててみたんですが、SpecializedはAllez Sportのフレームを開発するとき、テストライダーにある程度高級なパーツを使わせていたんじゃないかなと。そうやって高級なパーツに合わせて設計しておいて、市場へ出すときに、初心者向けの強度と現実的な価格を持つパーツにデチューンした。そう考えると話の辻褄が合うんです。あくまで自分が考えた仮説ですが」
う〜む、有りそうな話ですね。ではそこまでカスタマイズしたAllez Sport、レースに出場してもいいくらいの仕上がりですか?
「問題なくいけますよ。サーキットでのエンデューロだったら路面がキレイですし、集団に入って時速30~40kmの巡航ならまったく問題ないです。ゴールスプリントのときにまわりがS-Works Tarmacだったりするとキツイですが(笑)。集団巡航であれば全然大丈夫ですね」
それほどの素性なら、初心者のレースデビューにもAllez Sportで問題なさそうですね。
「はい。初心者でもまったく問題ないです。スプリントで時速50km出せるんだったら、そろそろ上のフレームに変えてもいいだろうとは思いますが(笑)、レースに必要とされる性能はさっきの78点に含まれています。あとは自分のような人にも、セカンドバイク、サードバイクとしておすすめできますよ」
と言うと?
「レースなどでバイクを降りない場合だったら良いんですけど、練習中の休憩とかで降りる場合、S-Worksだと破損や盗難が怖いですよね。そういうときS-Worksはデメリットになる。だから純粋に楽しめる、普段用のバイクとしてAllez Sportを1台持っていてもいいんじゃないかと。フェラーリを持っている人がミニも持っている、みたいなイメージ。また、ファーストバイクで使わなくなった高めのパーツを移植すれば、Allez Sportのスペックアップになりますからね」
理想は高く、値段とスペックは乗りやすく
たしかに。普段の練習に、必ずしもハイエンドカーボンバイクが必要ではないですね。
「あえてそういう風にAllez Sportに乗ってみたら、また違うものが見えてくるかもしれないし。その中から何を感じ取れるかです。S-Worksが良いっていうのは簡単ですよね。誰でも言えますよ。S-Works Tarmacのこの走りがいいんだよ、なんてね。でも本当はもっとうまく走らせられるんじゃないの?みたいな(笑)。自分は乗っているのか乗らされているのか、Allez Sportに乗ればわかるんじゃないですか。いままで軽さに逃げていたかもしれないとか、じつは速さがほとんど変わらなかったとか。ライダーの現実をリニアに示してくれる面もあるんです」
入門用バイクなのにレベルの高い人が乗っても得るものがある。
「はい。半年間乗り込んで感じたAllez Sportの真髄は“理想は高く、でも値段とスペックは乗りやすく”です。だから初心者はもちろん、上級者にもおすすめできるんです」
S-Worksを凌駕するコストパフォーマンスに、あらゆるライダーが恩恵を受けられる奥深さ。竹谷さんにインタビューしてわかったのは、Allez Sportにはハイエンドバイクとは違う、もうひとつの“高性能”が備わっているということ。
ただし貴方が本当にAllez Sportを購入するならば要注意。竹谷さんのようにハマりすぎて、引き返せなくなる可能性があるのだから……。
【筆者紹介】:成田ケンイチ
輝かしい実績と実力を持つ竹谷さん。キビシイ方に違いないと身構えてお会いしたところ、とても気さくな楽しい方で、話にグイグイ引き込まれました。スペシャライズドストア新宿店でペダリング講座やスペシャライズドストア銀座店でプレミアム朝活も担当されています。筆者も是非一度お願いしたい……。
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