マウンテンバイク、それもクロカンレースに出走するSBCU先生渡辺孝二、つまりコウジくんが“職権を乱用し”最先端のMTB用フィットをする模様を写真で抑えた。
「もしもし、コイチロくん?」「コウジくん、なに電話、どうしたの?」「今度さ、Retulを使ってBody Geometry FITするんだけど、来ない?」「えー面白そうじゃん。いいよ。行くよ。見とどけるよ」
7月21日の全日本選手権、その50才台クラスの最若手選手としてレースデビューをキメるコウジくん。今そのスペシャライズド・ジャパンのSBCU先生であるという立場を利用して?最先端ツールRetulを使ってBody Geometry FITを実施し、最高の状態で全日本に臨もうというのだ。
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で、実際に何をするのかを見てくれないかという。いいよ。ということで7月11日、スペシャライズド・ジャパンの社屋にやってきた。フィットを担当するフィッターはこちらもSBCU先生である佐藤修平さん。
SBCU先生が語る、「BODY GEOMETRY FIT」とは?>
コウジくんとコウジくんが乗るEpicが準備してあったのは、スペシャライズド・ジャパンの本社2階の展示室。中央にあるのがRetulの台。後でわかるがこの台の精度はとても重要で、左右にとても精密な回転を行う。これに自分のバイクをのせる。
「まずはニュートラルなポジションを出すことなんですね。自転車のように直線でできたものに、人間という有機物を合わせるのは難しい。しかもペダリングは円運動ですしね」。
「基礎の基礎が出来ていない人。自転車には乗れちゃうけれど、乗っちゃって来ちゃっただけかもしれません」。そこで基礎をしっかりとするほど、そこからの伸びしろは大きくなる。
まず『アセスメント』を行う。これはライダーとしての渡辺孝二を知ることである。問診に始まり、ペダリングに必要な部位の動き、可動域などを見るのだ。その問診でのコウジくんへの一問一答。
自転車に乗ってどれくらい? 32年。
週あたりの乗車時間は? 5時間ぐらい。
自転車以外のスポーツは? ランニングと水泳。
自転車での直近のゴールは? クロスカントリーレースで速く走る。
気にかかるところ:左膝、慢性ではないが、強度を上げると痛くなる感じ。
これまでの怪我や現在の運動状況などを聞く。そして次に坐骨の幅をみる。一人ひとりの骨盤の大きさに対して合うサドルがあるようだ。そこから、いろんな所の可動域をみていくわけだ。ベッドに寝て測ったりする。「自分が知らなかった体の現状がわかります。Body Geometry FITのキモは、このアセスメントとも言われています」と佐藤フィッター。「自分のことって実はよくわかんないからね。感覚と実際の数値との基準点を見つけるためにいいんだよね」とコウジくん。
アセスメントが終わると、バイクにまたがるフィッティングが始まる。Epic HTにコウジくんはまたがるのだが、ここでカラダ側面にLEDハーネスという光を出す機械を付ける。それをRetulの3Dモーションキャプチャーが、LEDの光を捕捉してリアルタイムで反応、ペダリングに対する真横からの膝の位置等が正確に分かるのだ。
自分の今あるカラダの動きをリアルタイムで連動させて、その動きを数値にする。その数値に対して、Body Geometry FITが『0ポジション』とする、ライダーにとって最も無駄のないペダリングができるポジショニングを、ペダル、サドル、ハンドルステム、クリート、インソールなどトータルで導き出すというもの。
これがRetulを使ったBody Geometry FIT。個々それぞれにペダリングのクセはあるが、それはそれとして、プロライダーを含む数多くのエビデンスを元にスペシャライズドが作った標準点を探し出すためメソッドである。
今回のコウジくんの場合、レースでの限界値アップを目的としているので、レースでの全開と同じぐらいのペダリングで理想的な出力を求めたい。そのため、3Dキャプチャーで捉えるペダリングも、いわゆる全開に近い。軽く漕いだぐらいじゃ角度が出ない。ものすごい汗がでる。ゼーゼーになる。ロードプロ選手が休息日にBody Geometry FITをしたら「これ全然休日にならない」と言われたとか。
見る順序をざっというと。サドル角度と位置、次にクリート&ペダル、そしてハンドルまわり。目指すのは快適性。「快適であることがハイ・パフォーマンスにつながるのが、データで証明されています」(佐藤さん)。つまりは気にせず踏めて知らずにハイパワー、ということである。言われてみればその通りなのだが、さてコウジくんはどう感じるか。
その後に乗ってみると、最初のペダリング時には赤かった数字群がぜんぶ緑、バランスよく指定の数字になっている。それだけで「同じ力でギアを2枚重く踏めるようになっている。疲れる筋肉が一つに絞られていない。回すよりも踏む方が、今は気持ちいい」とコウジくん。
いわゆるビフォーアフターがいきなり顕著に出た。いわゆるアライメントが出た、真芯が出たという状態だ。みっちりやると大体1時間〜1時間半ぐらいのセッションだ。
「これでハードに練習する準備ができた。自分の中にある不安がどんどんなくなっていくよね。まあそろそろヒトの意見を取り入れても良いだろうと、思える50才になったということかと。大人になって、科学に頼ろう!っていう」レースは3週間後、RetulとBody Geometry FITで無駄なく高められた出力で、全日本50代クロスカントリーチャンプの称号をもぎ取るのだ!
このRetulを使うBody Geometry FITは、スペシャライズドのバイクではなくても受けられる。価格はお店ごとに異なるが、おおよそ3万円でお釣りが来るぐらいだという。全国のフィッターのいるショップで受けられる。詳しくはこちら。
そしてやっぱりあった<Sワークス フィットプレミアム>。そもそも買う時にBody Geometry FITを行って、それに必要となるステムやサドルの交換は無償、というシステムだ。乗り出しから自分ポジションでスパンと行ける。小銭はあるが時間のないオヤジMTBerにはいいかもしれない。自分が「オヤジダウンヒラー」と呼ばれる世代になったことにここで気づき驚く。
【著者紹介】:中村浩一郎
MTBライダーなら一度はするかも知れない鎖骨骨折。手術するにせよ2週間でわりと日常生活には回復できるからいいが、40才台も半ばを超えるとこれ、付くのに半年かかることもあるという。やったの2月末だからいま5ヶ月弱。とほほだ。「もしかして牛乳を口から飲んでます? 鼻から飲まなきゃダメですよ」とスペシャライズド・ジャパンのエースに言われた。
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SBCUコウジ先生と読み解く、マウンテンバイク、その楽しみかた Vol.3(2017年7月14日)