"You are an IRONMAN" 世界最高峰の舞台でアイアンマンになることができた。この言葉には多くの意味があり、本物だけが呼ばれる特別なコールなのだ。
今年のアイアンマンレースが終わった。
長い一日が終わった。今年は、アイアンマン世界選手権の「名物」であるコナウィンドが強くなかったため、プロにおいては、バイクでの大きな差が出なかった。エイジ選手にとっては、やはり「ラッキー」ということになるだろう。ただし、今年の「敵」は、暑さだった。地元の人たちも「異常気象」と口にしていた。「暑いね〜。日に2回もシャワーを浴びているよ。」と地元の人も悲鳴を上げていた。暑さには強い日本人選手と言われるが、体調を崩した選手も少なくなかった。そして、プロ選手による世界最速のアイアンマンが決定した。男子は、ドイツのヤン・フロデノ、女子は、スイスのダニエラ・リフだった。男女ともに、プロ選手出場枠となる「コナポイントランキング」においても1位となっていた、「大本命」がその期待のまま優勝となった。フロデノは、北京五輪の金メダリストでもあり、昨年3位、ショート出身のスイムの速さ、ドイツ選手らしいバイクの強さ、そして、徹底的に絞り込んだ身体でキレのあるランなど、パーフェクトな展開だったと言えるだろう。一方、ダニエラは、昨年ミリンダにランで逆転負けとなり、悔しい思いをしていただけに、今回の優勝は一塩だったことだろう。しかも2位のレイチェルとは、13分差という大差を付け、文句なしの結果だった。
「まずは、スイムですが、前回スタートを前のほうに位置取り、結果として自分より速い人の集団のバトルに巻き込まれたので、ちょっと後ろに位置取りしました。スタートのバトルはありませんでしたが、逆に後ろ過ぎたため、結果としてタイムが1:10もかかってしまいました。自分の力としては1:05くらいで上がれるはずなので、横からみて真ん中よりちょっと外側・3割程度の前方という位置取りが必要だったかな、と思っています。
今回バイクの補給が60km時点でできなくなりました。60kmまでも多少の追い風・向かい風がありましたが、特に強いとは感じなかったですし、暑さ、湿度も感じませんでした。非常にスピードを抑えて、60kmまで平均35kmペースを刻んでいましたが、何故か原因不明で胃腸が突然やられました。ただ、9月のトレーニングは自分の思いとおりにいかなかったのが本音。すなわち、バイク、ランとも180km、30kmのロングを一度やる予定にしていたのですが、バイク90kmやったところで、疲労困憊・精神的にも我慢できず中断、当然ランの30km走も22kmほどでアウトでした。結論として、北海道の疲れが残っていたではないかと思っています。」
現在、トライアスロン機材、特にバイクは、開発バトルが激化している。まずは、「エアロダイナミクス」という点が最大となるが、その対策には余念がない。スペシャライズドは、自社に風洞実験施設「ウィントンネル」を有するほどの徹底ぶりで、タイムリーに実験を繰り返しながら、トライアスロンにおけるエアロダイナミクスを追求しているのだ。そして、「フューエル&ストレージ」がキーワードとなり、補給やエアロダイナミクスも同様に追及した収納スペースが、「スタンダード化」され、快適性とエアロダイナミクスにおいて、効果のあるデザインが採用されている。また、フレームの次にその効果が大きいのが、ホイールとなるが、エアロダイナミクスとともに「高速巡航性」に大きく関係するホイールは、やはり、トライアスロンにおいて、極めて重要なアイテムでもある。「次回のためにロヴァールCLX64という新型のホイールがほしいですね。」と答えてくれた。
今回ウィナーズバイクとなることは、叶わなかったが、全体の使用台数では、第3位となっている。プロ選手は、100名、したがって、ほとんどがエイジ選手となるのだが、そのエイジ選手が使用するバイクとして、第3位ということは、バイク選びにおいて重要なファクターとなるのだ。プロ選手が使用することは、やはり話題とはなるが、トライアスロンは、観るスポーツよりは、「出るスポーツ」として人気がある。そのため、エイジ選手が多く支持するブランドは何なのかと、毎年注目されているのが、このアイアンマン世界選手権での使用率となる。スペシャライズドは、「トライアスロンバイクの代名詞」の一つと言えるのだ。また、スペシャライズドの場合は、バイクだけでなく、サドル、ヘルメット、ホイールなども製作し、その使用率が上位に入っている、総合ブランドでもあるのだ。
「ただ一言、応援ありがとうございました。自分の好きなことを自由にやらせてもらって感謝しています。そして、正直なところ、来年は、完全に白紙の状態です。」やっと掴んだスタートラインだったが、再びそこに立つことは、簡単に口にすることはできない。アイアンマン世界選手権とは、そんなレースなのだ。
2016年の挑戦は、すでに始まっている!
【筆者紹介】:Triathlon GERONIMO 大塚修孝
トライアスロンジャーナリスト。トライアスロンの関わり25年。1996年から、アイアンマンを追い続けている。
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