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New SHIV Debut  〜 アイアンマンの聖地、KONAで求められるバイクとは 〜

2018/11/14

New SHIV Debut 〜 アイアンマンの聖地、KONAで求められるバイクとは 〜

トライアスロンの最高峰、聖地KONAで開催されるアイアンマンワールドチャンピオンシップ。このレースをターゲットに究極のトライアスロンバイクが開発された。


■KONAとは。
1978年に初のアイアンマンが開催されたのは、ハワイでもオアフ島のワイキキだった。1981年の第4回からハワイ島のコナに移された。コースは単調で概ねストレートなコースを往復する。但し、アップダウンはある。DHポジションで走るイメージがあるが、プロでもダンシングで走る箇所があるということだ。また、アイアンマンのバイクは、180kmという長距離なため、単なるコースだけの条件ではなく、「気象条件」が大きく関わる。ハワイ島は、「KONA WIND」と呼ばれる強風が吹く。その年によっても風向きが変わるが、時間帯でも変わる。レベルにもよるが、追い風では、40~60km出れば、向かい風では、10~20kmまで落ちることもある。そして、30~35℃の気温になるのだ。


Tim Don

■アイアンマンで求められるバイクとは。
アイアンマンではもちろんドラフティングはしない。自力で走り切る個人タイムトライアルだ。そのため、まずは、エアロダイナミクスを高めるために、風洞実験、CFD解析を繰り返しながら、形状の最適化を目指す。これがトライアスロンバイクとしての最大の「定義」と言えるだろう。また、「フューエルとストレージ」は、2010年代に入り、「絶対条件」となって来た。特に2011年KONAで発表された初代SHIVのハイドレーションシステムは、エアロダイナミクスを損なわない、見事な「融合」をカタチにしたのだった。そして、幅広くトライアスロンバイクが普及する中で、重要となって来たのが、「フィッティング性」の高さと「ユーザビリティ」となる。ピンポイントなDHポジション走行のトライアスロンバイクは、いかにフィット性を高めるかが、大きな課題で、好みも含めれば終わりのないテーマかもしれない。また、エアロダイナミクスを優先させながらも、調整、分解・組立のし易さ、その時のコンパクト性、メーカーによっては、各種パーツの汎用性など、エイジユーザーへのユーザビリティの提案が進んでいる。


Javier Gomez Noya

■New SHIV とは。
そんな背景の中、満を持してSHIVの第2世代が発表となったのだ。特にSHIVは、7年前にセンセーショナルなデビューを果たしているだけに、今回のモデルチェンジは、多くのアイアンマンから待ち望まれていたのだ。スペシャライズドのトライアスロンバイクへのコンセプトは3つある。「AERO」「FUEL」「FIT」だ。
New Shivについて>

これは、2011年初代SHIVからの一貫したもので、いずれも高次元な完成度を求めて来た。特にAEROは、スペシャライズド自社の風洞実験施設「Win Tunnel」で実験を繰り返し、それを高めて来た。今回の設計で特に注力しているのは、フロント周りで、そのエアロダイナミクスが重要であるとしている。ブレード状のフォークが上部まで伸び、ハンドルと繋がったヘッド上側とヘッド下側との上下で支えられている。

また、SHIVの特徴的なハイドレーションシステムも健在だ。これは、一際目を引く、「大型」なデザインとなっているが、あくまでも容量のためではなく、エアロダイナミクスを優先し、ハイドレーションシステムと高次元に融合させていることを、まず伝えたい。容量は、最大約1.5リットルの大容量となっている。尚、走行中の補充は、難しいが、スペシャルドリンクとして使用されることが想定される中では、十分な容量と言えるだろう。そして、このハイドレーション部は、外して使用することも可能だが、先述の通り、エアロダイナミクスのためにデザインされているため、ハイドレーションとして使用しなくとも、装着状態で走行することがパフォーマンスアップに繋がる。また、ダウンチューブ内にストレージスペースを設けたのもオリジナリティが高い。エアロダイナミクスとの融合から設計されている。

そして、フィット性とユーザビリティについても大きく工夫が施されている。トライアスロンバイクにおけるフィット性とは、サドル高とその前後位置、DHバーのパッド高とその前後位置となるが、それを高めるための調整幅など、同社の「Retul FIT」からのフィードバックを反映させている。サドル高については、ハイドレーションBOXとの干渉が、当然出るが、Retul FITデータからの設計と更にオフセットの異なる2種類のシートピラーで対応をしている。このオフセットは、ミニマム高で見ると「30mm」低くできるようになっている。また、同時にサドル前後調整にもなるということだ。DHバーのパッド高を最低の高さから115mm上げることができるが、これもRetul FITのデータからフィードバックされている。

同時にユーザビリティも高めているのが、このDHバーだろう。ブレーキのラインが絡まないために、調整がし易くなっている。そして、可変式ベースバーは3段階の高さに調整可能だが、最終的に垂直方向に折りたためることが可能となっている。バイクの幅はハンドル幅で決定するため、「コンパクト性」が高まり、バイクケース収納が容易になる。これもフィット性とユーザビリティが高いということになる。

ここで重要なことは、エアロダイナミクスとともにハイドレーション機能、フィット性、ユーザビリティなど、バランスを取りながら、高次元に融合させることだ。トライアスロンバイクは、1点では成立しないということ。

■実戦投入
今回プロ選手によるKONAデビューとなった。男子は、Braden Currie、Javier Gomez Noya、Tim Don、女子は、Lucy Charles、Sarah Trueの5選手が使用している。結果は、Currieが総合5位、そしてLucyが見事女子2位となっている。Lucyのバイクタイムはそれまでのレコード(2001年Karin Thuerig )を6分以上上回る4:38:10という好タイムをNew SHIVで出している。


男子5位 Braden Currie


女子4位 Sarah True


女子2位 Lucy Charles

Lucyのバイクに注目してみた。フレームサイズはS、コンポーネントはDura-Ace Di2、ホイールは、Roval CLX64、サドルは以前から使用しているISMを使用していた。シートピラーは、現地でその存在を知ったのだが、Lucyがその標準ではない、オフセットの異なる前乗りピラーをすでに使用していた。高さはまだ余裕があり、ハイドレーションBOXとの干渉ではなく、前乗りとしてのポジション出しから設定されているものだ。そして、特徴的だったのが、DHバーのセッティングだった。イギリスのREVOLVERのパッドを使用し、エクステンションは逆に装着、起き上がった状態でセットされていた。昨今プロのサイクリングチームでは、各選手に合わせ全てオーダーとしているところも少なくない。サドルやDHバー周りは今後その「カスタム化」は進むだろう。

■最後に。
7年振りのモデルチェンジとなったNew SHIV。前作から長かったとの声は多い。なぜ長かったのだろうか。同社の提案したハイドレーションシステムの進化、トレンドとなっている「異形バイク」への検討、ディスクブレーキ化の有効利用、そして、更なるエアロダイナミクスの向上をどうするのか。様々な検討課題とトライアスロンバイクをリードしてきたスペシャライズドとしてのプライドをかけた答えを出す必要があった。

そして、ついにその答えが出た。「AERO」「FUEL」「FIT」を融合させたNew SHIVの誕生したのだ。

New Shivについて>

Race Photo:🄫michalcervenyphoto

【筆者紹介】:Triathlon GERONIMO 大塚修孝
トライアスロンジャーナリスト。トライアスロンの関わり28年。1996年から、アイアンマンを追い続けている。

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