スペシャライズドライダーが活躍した2018年のレースを総括。2回目は、Tarmacで勝利を飾ったクラシックライダー・クライマーを中心にお届けします!
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■クラシックライダー、クライマー達の「最高の相棒」
オールラウンドなレースバイクであるTarmac。2018年はUCIワールドツアー初戦のサントス・ツアー・ダウンアンダー・ピープルズチョイスクラシックでのペテル・サガン(スロバキア/ボーラ・ハンスグローエ)の勝利を皮切りに58勝を記録し、2017年から大きく勝利数を伸ばした。うちディスクブレーキモデルが23勝と存在感を示しつつある。
2018年Tarmacで勝利した選手は22名。その中で最多勝利を収めたのはジュリアン・アラフィリップ(フランス/クイックステップ・フロアーズ)で、12勝をマーク。世界屈指の勝負師に成長したアラフィリップにとっては、相性抜群の武器となった。
ツール・ド・フランス2018で山岳賞ジャージを獲得したアラフィリップのために用意されたスペシャルなTarmac Disc
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■クラシックからグランツールまで「ウルフパック(狼の群れ)」大暴れ
2018年シーズン最多勝利チームであるクイックステップ・フロアーズ。特にこのチームの主戦場であるクラシックでは敵なしで、勝てなかったレースを数える方が早いのではないだろうか。ランパールト、カヴァニャら若手からベテランのジルベール、スティバルまで、誰でも勝負できる層の厚さが勝利の原動力だ。
2019年はメインスポンサー変更によりドゥクーニンク・クイックステップとチーム名が変わるが、スローガンである「ウルフパック(狼の群れの意。集団で狩りをする狼のように、絶対的なエースを決めず戦局によって柔軟に立ち回りながら勝利を狙う戦略を取ることを目指し名付けられた。)」は継続。2019年シーズンも勝利の波に乗れるだろうか。
⚫︎ニキ・テルプストラ(オランダ/クイックステップ・フロアーズ)
2018年シーズン73勝の中でも、テルプストラの「クラシックの王様」ことロンド・ファン・フラーンデレン制覇はチームにとって特別なはずだ。
2017年のジルベールの勝利に続くテルプストラの独走勝利。テルプストラの勝負勘と、ランパールト、スティバル、そしてディフェンディングチャンピオンのジルベールのアシストによってレースを支配し、チームで掴んだ勝利だった。
フィニッシュに向けてTarmacで石畳を独走するテルプストラ。
テルプストラのロンド・ファン・フラーンデレン勝利を喜ぶチームメイト達。
ウルフパックらしい、チームの絆が感じられる一枚。
キャリア最大の勝利を掴んだテルプストラだが、サガンが勝ったパリ-ルーベでは惜しくも3位。ゴール後にサガンのバイクの空気圧を凄い顔でチェックしていたのが忘れられない。きっと物凄く悔しかったんだろう。
©BelgaImage:サガンのRoubaixのタイヤの空気圧をチェックするテルプストラ。
●フィリップ・ジルベール(ベルギー/クイックステップ・フロアーズ)
絶対エースとして起用されてもおかしくない実績を持つ大ベテランだが、2018年は率先して集団の抑えなどのアシスト役を買って出てチームの勝利を演出。ジルベールの献身は「ウルフパック」の精神の真髄であり、チームの勝利量産の立役者と言えるだろう。
ツール・ド・フランス第16ステージでは自らの勝利を求め、逃げ集団から抜け出し独走。しかし峠の下りでオーバーラン、崖下へ転落してしまう。スタッフに助けられたジルベールは何事もなかったかのようにカメラに向かって親指を立てた後、レースへ復帰。左膝を激しく負傷しながらも完走し、敢闘賞を獲得したが、検査の結果骨折が見つかり翌日ツールを去ることになった。
©Getty Images:実はジルベールが落車した第16ステージはアラフィリップが勝利。
ジルベールがゴールすると同時にいたわるように抱き寄せていた。
ここからジルベールは驚異的な回復を見せる。落車から1ヶ月足らずで屋外トレーニングを再開し、2ヶ月後の9月にはグランプリ・ディスベルグに参戦。なんと復帰レースで勝利を飾った。
復帰戦グランプリ・ディスベルグでジルベールがチョイスしたのがディスクブレーキモデルのTarmac Disc。
このマシンが彼を歓喜の勝利へ導いた。
https://www.deceuninck-quickstep.com/en/multimedia/galleries/2077/grand-prix-d-isbergues?slide=0
現役選手では唯一のモニュメント3冠(ロンド・ファン・フラーンデレン、リエージュ-バストーニュ-リエージュ、イル・ロンバルディア)を達成しており、自身のSNSで #StriveForFive のスローガンを掲げ、5つすべてのモニュメントの制覇を目指すことを宣言している。最強クラシックライダーは、2019年どんなレースを見せてくれるだろうか。
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⚫︎ジュリアン・アラフィリップ(フランス/クイックステップ・フロアーズ)
チームではヴィヴィアーニに次ぐ12勝を上げたアラフィリップ。こんなに強い選手だったのか、と驚いた方もいたのでは。
2017年は怪我に泣いたが、2018年はシーズン序盤から大活躍。フレーシュ・ワロンヌで念願のアルデンヌ・クラシック初勝利を手にすると、ツール・ド・フランスでは初勝利を含む2回のステージ勝利を上げ、なんと山岳賞ジャージまでゲット。その後もクラシカ・サンセバスティアン勝利、ツアー・オブ・ブリテンでもステージ1勝、更に総合優勝と、ワンデー・ステージレース両方で勝ちまくった。 クラシックライダーらしい登坂でのアタック力が持ち味で、2018年の勝利はすべてTarmacによるもの。より軽いリムブレーキモデルをチョイスしているのが彼らしい。
巧みなダウンヒル、ベテランと対等に渡り合う勝負強さに加えて、お茶目な振る舞いもアラフィリップの魅力のひとつ。変顔をしたり、逆立ちをしたり、とにかくいつもご機嫌で見ていて飽きない。陽気な行動がチームの公式SNSでまとめて発信されるなど、もはやマスコットだ。
トレーニングキャンプでの一コマ。小休憩するチームメイトの間をすり抜けたり、ウィリーをしてみせるアラフィリップ。シクロクロスのU23カテゴリ国内選手権で2度の優勝経験があり、バイクコントロールはお手のもの。
インスブルック世界選手権では優勝候補に挙げられながらも最後の勝負に絡むことができなかった。しかし2019年のコースはパンチャー向け。ルル(アラフィリップのチームでの愛称)のアルカンシェルへの期待が膨らむ。
アラフィリップがツール・ド・フランス2018の一部の山岳ステージで使用していたTarmac。
前後で違うホイールハイト(Roval CLX32、50)を選んでおり、軽量化と空力のバランスへのこだわりが伺える。
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⚫︎ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク/クイックステップ・フロアーズ)
アラフィリップ勝利の陰にこの男あり。フレーシュ・ワロンヌ、ツール・ド・フランス、ツアー・オブ・ブリテンと、良きアシストとしてアラフィリップを支えた。 チームでは数少ないオールラウンダーだが、スプリントトレインの牽引も担うなど、器用でよく働く選手である。
そんな彼の2018年一番の勝利は、リエージュ-バストーニュ-リエージュだろう。実に19kmもの独走で掴んだモニュメント初勝利、タイムトライアルスペシャリストでもあるユンゲルスらしい勝ち方だった。
ユンゲルスが独走態勢に入った後は、おそらく当初の作戦ではエースだったアラフィリップが集団の抑え役としてアシストに回った。見事な作戦変更、戦局に応じて柔軟に勝ちに行く「ウルフパック」の真骨頂だった。
© Tim de Waele - Getty Images:リエージュ-バストーニュ-リエージュで勝利したユンゲルス。
獲得標高4,000mを超える起伏の激しいコースをTarmacで駆け抜けた。
⚫︎エンリク・マス(スペイン/クイックステップ・フロアーズ)
マスもユンゲルスと同じくチームでは数少ないオールラウンダー、さらに少数派のクライマーだ。2017年から出場したステージレースで安定して上位に入る走りを見せていたが、ブエルタ・ア・エスパーニャ総合2位はサプライズ。チームはヴィヴィアーニのスプリントに特化した編成だったのでなおさらだ。マスは終始落ち着いた走りで総合上位をキープし、第20ステージでは23歳とは思えないクレバーな駆け引きの末、ステージ勝利を射止めた。
地元スペインでは「コンタドールの後継者」と期待を集めるマスだが、「僕は僕」と謙虚な姿勢を崩さない。きっと遠くない将来、偉大な先輩のように輝かしい勝利をチームにもたらしてくれることだろう。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2018第20ステージ、登りスプリントで勝利を掴んだマス。
グランツールステージ初優勝を飾った。
23歳のマスはブエルタ・ア・エスパーニャ2018総合2位を「夢のようだ」と語った。
Tarmacがクライマーのマスを表彰台に運んだと言えるだろう。
⚫︎マクシミリアン・シャフマン(ドイツ/クイックステップ・フロアーズ)
プロ2年目、グランツールデビューとなった2018年のジロ・デ・イタリアでステージ勝利。しかも頂上フィニッシュステージで逃げ切り勝利を掴むという強さを見せた。 フレーシュ・ワロンヌで逃げに乗り、最終局面までエース・アラフィリップの脚を温存する展開に貢献するなど、クラシックレースでもいい働きをしていた。また、U23時代は個人タイムトライアルで2度銀メダルを獲得しているタイムトライアル巧者でもあり、あらゆる局面に対応できる選手だ。
2019年からは地元ドイツのチームであるボーラ・ハンスグローエへ移籍。ユニフォームは変わるが、引き続きスペシャライズドのバイクで走る。
© Tim de Waele - Getty Images:ジロ・デ・イタリア2018第18ステージ勝利を決めたシャフマン。
スプリントステージではヴィヴィアーニのアシストとして働いていたが、この日は自分のために走った。
■派手さはないが粒揃いのボーラ・ハンスグローエ
勝利数の中心はスプリントだが、ビンク・バンクツアーでワールドツアー初勝利を上げたミュールベルガーをはじめ若手が確実に育ってきている印象。2018年上位に食い込んだ選手達が、今年は表彰台の一番高い所に上がるのを見たい。
⚫︎パトリック・コンラート(オーストリア/ボーラ・ハンスグローエ)
⚫︎エマヌエル・ブッフマン(ドイツ/ボーラ・ハンスグローエ)
コンラートはパリ-ニース7位、イツリア・バスクカントリー10位、そしてジロ・デ・イタリア7位と2018年ステージレースで強さを見せた27歳。ジロ7位って結構凄いことなのだが、びっくりするくらい中継に映っておらず目立たなかった。 ツール・ド・ポローニュで山岳賞、フレーシュ・ワロンヌで10位と登りも強く、近いうちにしっかり中継に映るような大きな勝利を掴んでくれるのではないかと期待している。
未舗装の峠を登るコンラート。選手にとってTarmacは心強い味方だ。
ブッフマンもコンラートと同じく27歳。イツリア・バスクカントリー4位、ツール・ド・ロマンディ9位、クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ6位、ツール・ド・ポローニュ7位とステージレースに強いところもコンラートと似ている。コンラートとともに、チームの次期総合エースとしての覚醒が待たれる。
⚫︎ラファウ・マイカ(ポーランド/ボーラ・ハンスグローエ)
残念ながら2018年は勝利を上げることができず、苦しいシーズンを過ごしたマイカ。しかしツアー・オブ・カリフォルニア、ブエルタ・ア・エスパーニャではステージ2位、シーズン終盤のイル・ロンバルディアで7位と復活を予感させるシーンもあった。元ツール山岳王として、チームの総合エースとして、若手に背中を見せるような活躍を再びと願う。
2018年ラストレースのイル・ロンバルディアでは復調の兆しを見せたマイカ。
2019年シーズンはTarmacで勝ってくれるはず。
次回は最強女子チームのボエルス・ドルマンスと、将来有望な若手が揃うハーゲンズ・バーマンを中心にお届けします!
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【筆者紹介】:池田 綾(アヤフィリップ)
サイクリングライター。乗る方は週末ホビーライダー。のんびりゆるポタも、ちょっと頑張るロングライドも、両方イケるTarmacは最愛のバイクです。
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