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日本に最適!e-MTB Turbo Levo SL (リーヴォ エスエル) 鏑木 裕さんによる最速インプレッション

2020/02/04

日本に最適!e-MTB Turbo Levo SL (リーヴォ エスエル) 鏑木 裕さんによる最速インプレッション

スポーツバイクジャーナリストとして活躍中の鏑木 裕さんにスペシャライズドの新e-MTB Levo SLをお試しいただきました。インプレッションをご紹介します。

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目次

超軽量e-MTBLevo SL≠日本投入
フルサスである理由、150oトラベルのメリット
バッテリー完全内蔵という構造的メリット
e≠ェフィールドを拡大する

 

e-マウンテンバイク TURBO Levo SL(ターボ リーヴォ エスエル)FAQはこちら>
e-マウンテンバイク TURBO Levo SL(ターボ リーヴォ エスエル)デビュー

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e-Bike Creo SLに乗ってみよう! TEST THE TURBO(テスト・ザ・ターボ)

超軽量e-MTBLevo SL≠日本投入
近年、世界的に急速な注目を集めるe-MTB。世界的に見れば、大手完成車メーカーはすでにラインナップに加えているが、各国の法律に準じたスペックへと落とし込むことが最初の課題となっている。
スペシャライズドでも、本国アメリカではLevoが発売されていたものの、アシストモーターの出力が日本の法規制を逸脱しており、公道を走らせることが不可能だった。

「The best eMTB of 2020」2年連続No1を獲得!Levoについてはこちら>

しかし今回登場したLevo SLは、軽量化、ハンドリング向上、バッテリーの消費などを踏まえ、常用に適したアシストパワーを追求した結果、2倍というアシスト比になっている。これが日本の法律にも合致したことで、日本向けに最適化されたモデルが実現できたのだという。

注目の重量は、S-Worksスペックのカーボンフレーム+完全内蔵バッテリー構造により、前後150oトラベルのサスペンションを搭載しながら車体重量17.3kgを達成している。

ちなみに今まで日本で販売されていたe-MTBは、主にハードテールであった。ハードテールにも関わらず重量は20kg弱とヘヴィー級。位置づけとしても、体力が落ちたユーザーをサポートするシニア用=Aもしくはゴンドラ非対応のMTB専用コースにおけるレンタル用≠ェ主なターゲットとなってた。

しかし、今回Levo SLに乗ったことで、そのような既成概念が完全に壊されることになった。リアルスポーツとして、もしくは高レベルなレクリエーションとしてのe-MTBの世界が、いよいよ開かれることになるのだ。


前後150oトラベルのサスペンションを搭載したLevo SL。サスペンションの構造自体は、トレイルバイクであるStumpJumper(スタンプジャンパー)≠フ機構を流用。
スペシャライズドが長年培ったノウハウが注ぎ込まれている。

フルサスである理由、150oトラベルのメリット
実走レポートは後述するとして、Levo SLでトータル約100kmほどを走ってみると、そこに搭載されたスペックや機能に理由があることが明白となってくる。

たとえば29×2.3インチの強力なブロックタイヤ。

上りや、トレイルまでの自走を踏まえると、従来(人力オンリー)であれば転がり抵抗の小さなセミスリック系タイヤや、ノブの低いXC用タイヤを組み合わせることになる。しかし、そういったタイヤはオフロードでのグリップが乏しくなるため、コーナリングひとつ取っても走りに気を遣わざるをえない。ペダリングセクションでの軽快さと引き換えに、転ばないための必死なバイクコントロールを強要されるのだ。

ところがLevo SLでは、ペダリングセクションでの軽快さをモーターがサポートすることで、ハイグリップなブッチャーGRIDトレイル(前輪)/エリミネイターGRIDトレイル(後輪)を装着しても、軽やかなペダリングが可能となり、コーナリングや急登坂路での安定感とを両立。あらゆるシーンにおいてバイクを操る悦びや、スピード感のある走りを楽しめるようになった。


タイヤは29×2.3インチの、スペシャライズド・ブッチャーGRIDトレイル(F)/エリミネイターGRIDトレイル(R)。とにかくグリップ力が高く、上りのトラクション、下りのブレーキング、もちろんコーナリングでも、抜群の安定感を発揮。安心してトレイルを走れるだろう。

これは前後のサスペンションに関しても同様で、ペダリング時のパワーロスや重量的デメリットといったような、人力オンリーであれば考慮すべき問題が完全解消。前後150oトラベルという浮遊感の高いサスペンションを組み合わせることで、走りの楽しさにより強いフォーカスでが当たることになっている。

これらがライディングの質にもたらす結果は明白だ。

たとえば上り。ライダーはタイヤグリップを気にせずにペダリングや視線、呼吸に集中できる。それどころか上りのハイスピードコーナリング≠ニいうような、今まで経験したことのない世界を目の当たりにすることになるはずだ。

『下るために上る』のではなく、『上りも楽しめる』。

それはつまり、エキサイティングなフィールドが2倍に増えるということを意味する。まさに革命である。

バッテリー完全内蔵という構造的メリット
ところでLevo SLの構造的な特徴的として、バッテリーをダウンチューブに完全内蔵化したことが挙げられる。

従来であれば、バッテリーはダウンチューブ、もしくはシートチューブの外側に固定され、せいぜい目立たないようにシルエットをフレームと一体化させる程度であった。

このため、フレーム単体では構造力学的に脆弱になりかねないので、極端にボリュームを増やすことで問題を解消している。

Levo SLのフレームは、スペシャライズドのトレイルバイクStumpJumper≠ェベースになっている。StumpJumperのダウンチューブは、内部空間を利用してスペアチューブ/携帯工具などを入れるストレージとして利用されているが、そのボリュームを拡充してバッテリーを入れてしまったのだ。


StumpJumperでは、ダウンチューブの内部はスペアチューブなどを入れるスト レージになっていた。Levo SLでは、その空間を拡大してリチウムイオンバッテリーを封入。非着脱式のため、軽量で、一見するとアシスト機構が載っているとは思われないシンプルなシルエットを実現している。

モーターにしても同様で、最小スペースかつミニマムな構造部品の追加だけで搭載を実現している。

これにより、バッテリー&モーター搭載による重量増が、純粋に両者の重量だけで抑えられることになった。

ライバルメーカーの製品群が軒並み20kg超になっているのに対して、17kg台という軽さを実現した大きな源泉は、この大胆な割り切りにある。

シングルトラックでのタイトなコーナーは、MTBでもっとも楽しい瞬間となるが、Levo SLではその際のバイク挙動がとても軽快で、ヒラリヒラリと素早い切り返しが可能となってる。

スタンプジャンパーで培った走破性やコントロールのしやすさが、そのまま再現されているのだ。

そもそも『モーターで踏力がアシストされるe-MTBで軽さは必要なのか?』という疑問を持たれることもあるかもしれないが、コーナリングでの早い挙動、ダンシングでのバイクの振りやすさを踏まえると、このSL化≠アそ、日本の狭く急峻なトレイルで楽しいと言えよう。

また、バッテリー内蔵化に関しては『バッテリーだけを外して室内充電できないのでは!?』というデメリットを述べる者もいるかもしれない。

しかし私は問いたい。

このようなリアルなスポーツバイクを、そもそも車体ごと室内保管しない者がいるのだろうか? と。

e≠ェフィールドを拡大する
さて、フィールドが広がるという意味では、自走できる範囲に関しても見逃せないだろう。

私は現在、関東平野のど真ん中、東京都世田谷区に在住しているが、本格的なトレイルを走ろうとすると、MTBを積載してクルマでの移動が不可欠であった。

もしくはフィールドまで自走するなら、前述のように『ハードテール+セミスリックタイヤ』という仕様で、移動区間の体力的&時間的ロスを減らさなくてはならなかった。

それがどうだ。Levo SLならば、オフロード路面で楽しめる仕様のまま、フィールドまで自走できるのではないか?

そう考えた私は、フル充電したLevo SLにまたがり、自宅から西へと走り出した。

まずは、バッテリーの消費具合が分からないこともあり、節電を兼ねてECOモードでスタート。モーターの補助を得て時速20kmまで難なく加速すると、時速20km台前半をキープ。巡航時は軽く背中を押してもらっているような感覚である。

市街地では信号によるストップ&ゴーを繰り返すが、もちろん苦になりにくい。

多摩川に出ると、ランナーやロードバイク&クロスバイクのサイクリストたちによって混雑した土手上サイクリングロードを回避。一段下のグラベル路面を突き進む。もちろん巡航速度は時速20km弱をキープ。

多摩川を渡って神奈川県へと入り、丘陵地形にありがちな舗装路のアップダウンを繰り返す。ヘヴィーなブロックタイヤだというのに、上りも時速20km弱。登坂に関しては、一般的なロードバイクとほぼ同じ速度域だ。

約1時間/20.5km地点で、いよいよトレイルの入り口となるのだが、ここまでの平均速度は19.5km/h。そして驚いたことに、電池残量を示すLEDインジケーターが、わずか1目盛り(1/10)しか減っていない! 後半になって電池が急減するのか? などと、あらぬ心配をしてしまう。


トップチューブには電源スイッチのほか、ECO/TRAIL/TURBOのモードやバッテリー残量を示すLEDインジケータが取り付けられている。バッテリー残量は10段階での表示なので、長距離ライドであっても電池消費を細かく把握しやすい。

トレイルに入ると、急傾斜のアップダウンが連続する。ここからはアシストパワーをアップ。斜度に応じてTRAIL/TURBOを切り替えながら、もちろん傾斜がキツくなるとハイパワーなTURBOを使って、自分の踏力に対して2倍のアシストをもらいながらヒュンヒュン進む。

人力オンリーならヒィヒィ呼吸をしながら走っているワケで、大違いである。

ちなみにLevo SLのアシストフィーリングは、回すペダリング≠ノ対して忠実に作動してくれる印象だ。

スペシャライズド製品ではないが、ペダルを下に踏みつけるようなペダリングをしないと強いアシストを得にくいユニットもあり、そのようなe-BIKEではダンシングを多用した方が楽な(アシスト割合が増える)味付けとなる。このため、自転車経験の長いサイクリストほど、ペダリングに対して違和感を覚えることになる。

ある程度のペダリングスキルを身に付けたライダーにとって、このLevo SLのアシストはとても自然、かつ効率的であり、ペダリングセクションにおいてはシッティングでのいつものフォーム≠サして、いつものペダリングリズム≠アそが楽で乗りやすくなっている。

上りはモーターでヒュンヒュン、コーナーはタイヤでギュインギュイン、下りはサスペンションでフワリフワリ。Levo SLならば、トレイルのあらゆる場所がエンターテインメントとなる。

それはまるでスムーズなレールの上を走っているようでもあり、自転車でありながら、もしくはMTBでありながら、まったく新しい乗り物を操っている感覚に陥る。

何本ものトレイルを走り継ぐこと約15km。自宅から36km地点で下山する。

電池はようやく3目盛り(3/10)分消費した。下り坂ではバッテリーを消費しないとはいえ、こんなに走れるのか! と驚かされる。


アシストパワーは手元のスイッチで切り替えられる。このほか専用アプリ(Mission Control)ミッション コントロール≠使えば、スマホから各種設定変更だけでなく、バッテリー残量と目的地までの距離に応じて、最適なアシスト量を算出する(つまりバッテリー の使いの残しがない!)など、細かなアレンジが可能。

帰路の舗装路は惜しげもなく(?)TURBOモードで走り続ける。

ECO/TRAIL/TURBOの違いは、ゼロ発進からの加速度合い。TURBOだとグググッと一気に20km/hの巡航域に入るため、信号待ちからの走り出しはクルマと並んで加速してくれる。

ちなみにTURBOモードであっても、24km/hが近づくとアシストがフェードアウトしていくので、巡航速度は変わらないし、その際のバッテリー消費もさして変わらないはずだ。

そして、上りと平地は20km/h、下り坂は重力があるので25km/h超。時間と体力に余裕が生まれたので、道中で友人宅に寄りつつ、約6時間(実走4時間)におよぶ、自走トレイルライドを終えることになった。

参考走行データ
距離 66.64km
積算登坂標高 1,077m
ライド時間 4時間09分
平均速度 16.0km/h
最高速度 41.4km/h
バッテリー消費 約60%

ここから分かるように、都市の中心部居住者にとって、e-MTBは自走可能フィールドを格段に広げてくれる。そしてLevo SLならば極めて高いライドクオリティをもたらしてくれる。オフロード好きのサイクリストにとって、それらはこの上ない悦びになるに違いない。

最後は無理矢理TURBOモードで走り続けたようなもので、帰路もECOモードを使えばおそらく50%程度のバッテリー消費で帰還できただろうと想像される。時間さえ許せば、100km超のトレイルライドを常時アシストされながら楽しむことが現実的であると証明された。

北米を中心としたトレイルビルダ―たちは、山中移動用に軒並みトレイルライドスペックの(つまりフルサス仕様の)e-MTBを活用しているのだという。スコップやチェーンソーといった重い装備品を背負ってのライドはアシストなしでは不可能だろう。かつてはそれらを徒歩で持ち歩いていたことを踏まえると、フルサスe-MTBの登場はフィールド作り≠ニいう面でも新しいフェーズに入っているのだ。

もし、バッテリー容量に不安があるようなルートならば、オプションのレンジエクステンダー(増設バッテリー)を活用できる。ユーザーが求めるであろう、痒いところに届く孫の手≠用意するあたりが、いかにもスペシャライズドらしいではないか。

同時に、フィールドの拡大や、登坂を中心とした速度向上の分、ライダーには心のブレーキ≠ェ求められることにもなるだろう。ハイカーや農林作業者といったフィールド共有者へ、より一層の配慮を心がけたい。そんなオトナの遊び≠ェ、いよいよ日本でも広がろうとしている。

【筆者紹介】鏑木 裕
『サイクルスポーツ』誌の元編集部員であり、元自転車店経営者。そして元JCFエリート選手でもある。著書に「すべてがわかる!ロードバイクセルフフィッティング(コスミックムック)」などがあり、メカニックとして、北京・ロンドン五輪にも同行するなど、レース現場やスポーツバイクを知り尽くしている。
 

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