2022年のロードレースシーズンが始まりました。スペシャライズドがサポートするチームと注目選手を紹介しましょう。
TOP画像:© Wout Beel
2022年、世界最高峰のレースをスペシャライズドバイクに乗って戦うチームは4つ。クイックステップ・アルファヴィニル、ボーラ・ハンスグローエ、トタルエネルジー、そしてチーム SDワークスだ。スペシャライズドがサポートするチームを紹介していこう。
昨年は65勝。UCIワールドランキングも首位を獲得。プロ自転車競技のファーストディヴィジョンで最強チームの名をほしいままにする彼らは、自分たちを「ウルフパック(狼の群れ)」と呼び、強力な個の力とチームワークで、狼が集団で狩りをするようにレースを走る。
ウルフパックが駆るTarmac SL7。チームカラーの青をマットなメタリックカラーで表現。
エース格の選手たちのうちスプリントエースのサム・ベネット(アイルランド)、そして若き総合系ライダーのジョアン・アルメイダ(ポルトガル)を手放したが、勝てる選手は揃っており不安要素はない。特にこのチームのDNAであるワンデークラシックにおける選手層の厚さは世界トップクラスで、「クラシックの王様」ことロンド・ファン・フラーンデレン王者であるカスパー・アスグリーン(デンマーク)を筆頭に実力・経験を備えた選手が揃う。
勝利量産のメインエンジンとも言えるスプリントエースは2人。病気、落車負傷による戦線離脱から昨年見事な復活劇を演じたマーク・カヴェンディッシュ(イギリス)とファビオ・ヤコブセン(オランダ)だ。カヴェンディッシュはツール・ド・フランスで、ヤコブセンはブエルタ・ア・エスパーニャで、ともに複数のステージ勝利と最強スプリンターの証であるスペシャルジャージをつかみ取った。
スプリントエースの1人、カヴェンディッシュは2022年もウルフパックの一員として走る。
マーク・カヴェンディッシュとファビオ・ヤコブセンについて詳しく >
フィニッシュ前までエースを運ぶスプリントトレインの充実ぶりは昨年と変わらず、特に最終発射台であるリードアウトマンとして世界一の呼び声高いミケル・モルコフ(デンマーク)が頼もしい。誰がどのレースに出場するかは現時点では未定だが、どんな布陣になっても死角はない。
そして、エースだらけの狼軍団を率いるのはやはりこの人だろう。2年連続で世界王者の証、虹色の「アルカンシェルジャージ」をまとうジュリアン・アラフィリップ(フランス)である。今年は石畳クラシックをパスし、彼の原点である起伏の激しいアルデンヌクラシックのビッグタイトルに照準を合わせる。モニュメント(世界5大クラシック)の1つリエージュ〜バストーニュ〜リエージュが彼の獲物だ。もちろん、母国の一大レースにして世界で最も有名なツール・ド・フランスも大きな目標となる。ただし総合優勝は狙うのはまだ先。世界最高のクラシックレーサーとして、3年連続の世界王者戴冠も目指す。
世界チャンピオンであるアラフィリップは5色のストライプで虹を表現したスペシャルジャージを着用する。
よく目立つので集団の中でも見つけやすい。© 2022 Getty Images
世界王者アラフィリップ専用、レインボーカラーのTarmac SL7
プロ4年目を迎える21歳の若き狼、レムコ・エヴェネプール(ベルギー)はアラフィリップとは別の群れを率いて走る予定だ。2022年は3週間を戦い抜くグランツールレーサーとして本格的に名乗りを上げる。1週間程度の短いステージレース、ワンデーレースでは既に数々の勝利を挙げている彼は、ブエルタ・ア・エスパーニャへの挑戦を表明している。昨年の世界選手権3位入賞をはじめ好成績を連発している個人タイムトライアルの勝利も積極的に狙っていくつもりだ。
“I like racing in Spain, I won a couple of races there since turning pro, so I’m really looking forward to discovering @lavuelta this season”!
— Quick-Step Alpha Vinyl Team (@qst_alphavinyl) January 10, 2022
Photo: @BeelWout pic.twitter.com/HiLlyXCVnH
自身初のグランツールにして落車事故からの復帰レースだった昨年のジロ・デ・イタリアは苦い経験に。
今年のエヴェネプールは万全の準備をしてブエルタ・ア・エスパーニャに挑む予定。
3度世界チャンピオンに輝き、数々のレースで数えきれない程の勝利を挙げてきたロードレース界のスーパースター、ペテル・サガン(スロバキア)が2022年のチームに選んだのがトタルエネルジーである。セカンドディヴィジョンに所属するフランス籍チームはワールドツアー全ワンデーレースへの招待が決まっている。今年もサガンはモニュメントはじめワンデークラシックのビッグレースで存在感を示してくれるだろう。
サガンがチームの新ジャージを紹介する動画。新チームで描く勝利はどんな色?
「悪童」と呼ばれ、若い頃から印象的な走りとパフォーマンスで世界を沸かせてきたサガンも今年32歳。ベテランと言っていい年齢だ。しかし、活躍する選手の若年化が著しい自転車競技界にあって、引退は考えていないという。パンデミックと戦った直近2年は試練のシーズンだった。昨年に続き新型コロナウイルス感染症検査陽性となり、トレーニングやレーススケジュールの変更を強いられているが、焦ることなく春のクラシックレースに集中する。チームがサガンを獲得した背景にはファーストディヴィジョンへの昇格に向けたUCIポイント獲得への期待があり、サガンにかかるプレッシャーは大きいが、自信は十分だ。
サガンのために用意されたスペシャルデザインのTarmac SL7
所属チームが変わっても盟友ダニエル・オス(イタリア)ら「チーム・サガン」が引き続きサガンを支える。そして迎える立場のチームメイトたちもサガンがもたらす変化を楽しみにしているに違いない。ニキ・テルプストラ(オランダ)やエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー)、アントニー・テュルジス(フランス)、ピエール・ラトゥール(フランス)と実力者は揃っている。ここにサガンというピースが嵌まることで、どんなケミストリーが生まれるのだろうか。
トタルエネルジーのTarmac SL7。チームカラーである赤のグラデーションが美しい
サガンが去ることで大きな変容の年を迎えるボーラ・ハンスグローエ。ただし、その変化は決してネガディブなものではない。ドイツ籍チームは多数の新加入選手を迎え、更なる多国籍化を果たし、勝利へと漕ぎ出していく。
サガン、そしてパスカル・アッカーマン(ドイツ)が離脱するスプリント戦線にはサム・ベネット(アイルランド)が帰ってくる。チーム・ウルフパックで2年を過ごし、2020年ツール・ド・フランスでスプリント賞を獲得するなど名実ともにトップスプリンターとなったベネットのためにダニー・ファンポッペル(オランダ)とライアン・ミューレン(アイルランド)をスプリントトレインに加えて強化を図る。成長著しいジョルディ・メーウス(ベルギー)とマチュー・ウォールス(イギリス)の若手スプリンターコンビも頼もしい存在だ。新加入のマルコ・ハラー(オーストリア)はワンデークラシックでニルス・ポリッツ(ドイツ)を大いに助けてくれるだろう。
We at BORA and the guys from @BORAhansgrohe wish you a happy and healthy New Year and all the best for 2022. 🎆🙌
— BORA cooking systems (@BORAGmbH) January 1, 2022
#happynewyear #proudsponsor #borahansgrohe@Dannyvanpoppel @ale_vlasov @CUijtdebroeks @ryanmullen9 @HiguitSergio @mhaller91 @JaiHindley @Theflyingmullet @Sammmy_Be pic.twitter.com/pJ88krP3CC
2022年加入する選手たちからの新年ご挨拶。8つの国から9人が加入する
グランツール・ステージレース体制の充実ぶりには舌を巻く。マキシミリアン・シャフマン(ドイツ)、エマヌエル・ブッフマン(ドイツ)、ウィルコ・ケルデルマン(オランダ)のジャー「マン」・ダッチ「マン」トリオに加わるのはジャイ・ヒンドレー(オーストラリア)、アレクサンドル・ウラソフ(ロシア)、セルヒオ・イギータ(コロンビア)と国際色豊かなクライマーたち。厳しい山岳でのレースが楽しみな布陣だ。
それから、絶対に名前を覚えておいてほしい選手が1人いる。キアン・アイデブルックス、18歳。ファーストディヴィジョンであるUCIワールドツアーチームに所属する最年少選手にして、ジュニアカテゴリのレースを勝ちまくってきた逸材だ。この若き才能が今年このチームからプロデビューを飾る。自転車大国である母国ベルギーでは、U23カテゴリをスキップしてエリートカテゴリに飛び級し活躍するエヴェネプールの「次」の選手と注目を集めている。だが、本人に浮ついたところは見当たらない。手厚い育成体制と過度なプレッシャーのない環境に魅力を感じてドイツチームを選んだ彼は、気負うことなく伸び伸びとレースを走り、目覚ましい成長を遂げていくに違いない。
2022年最も注目すべき選手の1人、アイデブルックス
男子の最強チームがクイックステップ・アルファヴィニルなら女子の最強チームはSDワークスだ。ただし、このチームも変化の年を迎える。長く絶対エースを務め昨年も10勝を叩きだしたアンナ・ファンデルブレッヘン(オランダ)が引退、今年からは監督としてチームカーのハンドルを握ることになるのだ。
絶対女王ファンデルブレッヘンの後継者はデミ・フォレリング(オランダ)。昨年リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ、ラ・クルスbyツール・ド・フランスとビッグレースを勝利し大躍進を遂げた。その冷静なレース運びと終盤のスプリント力はファンデルブレッヘンも認めるところだ。ステージレースでは2021年ジロ・デ・イタリア・ドンネ総合2位のベテランクライマー、アシュリー・モールマン(南アフリカ)もエースを担うことになるだろう。また、ナショナルトラックチームトレーニングキャンプ中の事故で離脱中のエイミー・ピーターズ(オランダ)が復帰すれば、昨年までと同じように勝利の推進力になってくれるはずだ。
アンナ・ファンデルブレッヘンとデミ・フォレリングについて詳しく>
フォレリングが昨年のジャージから今年のジャージに衣替え
新たに加入する選手は2人。トラックレーサーでありシクロクロッサーでもあるロッタ・コペッキー(ベルギー)は引退したスプリントエースのジョリーン・ドール(ベルギー)の役割を引き継ぐ。マーレン・ローセル(スイス)は世界トップクラスのタイムトライアルスペシャリスト。パートタイムの医師という経歴を持つ彼女は欧州選手権1位、世界選手権2年連続2位、東京五輪2位という実力者である。
国旗をあしらったスペシャルジャージを着るナショナルチャンピオンが多いのは強豪チームならでは。新加入の2人もナショナルチャンピオンだ。
SDワークスは若手とベテランのミックスが上手で、若手の育成に定評のあるチームでもある。ロード・シクロクロス・マウンテンバイクと3種目全てで非凡な才能を見せるカタブランカ・ヴァシュ(ハンガリー)や昨年ステージ3勝のロンネケ・ウネケン(オランダ)、ジロ・デ・イタリア・ドンネをはじめ複数のステージレースで新人賞を獲得したニアム・フィッシャーブラック(ニュージーランド)らの活躍にも注目したい。
SDワークスのTarmac SL7はパープル基調。チームジャージに使われている明るいピンクを差し色に使って仕上げている
さて、スペシャライズドはここまで紹介してきた4つのチームにバイクを提供するが、単なるバイクサプライヤーの役割に留まっているわけではない。バイクとライダーの一体感を高め、マシンの力を引き出すとともに乗り手の能力を最大化するためにフィッティングまで一貫して支援している。12月に各チームが実施するトレーニングキャンプに専門のスタッフが帯同し、時間をかけて調整を行っているのだ。
「RETÜL FIT(リトゥール・フィット)」はスペシャライズド独自のフィッティングメソッド。精密に計測されるデータを人間工学に基づいた医学的な見地と高い次元で融合させ、一人ひとりのライダーにマッチする製品提案とバイクフィットを実現している。
Retülは2007年にコロラド州ボルダーで生まれたバイクフィッティングに特化したブランド。スペシャライズドが培ってきたボディジオメトリー・フィットのメソッドとRetülのハードウェアを融合したバイクフィットを提供している。
実際にレースを走る選手とのコミュニケーションを通じて得られた情報やフィードバックは開発に反映される。もっと速く走るために、勝つために。また、誰よりも長い時間をバイクの上で過ごす選手にとっては快適性も切実な課題だ。機能と乗り心地を両立し、全てのバイクで一貫した性能を確実に発揮させるライダーファーストの姿勢はスペシャライズドのアイデンティティ。乗り手により異なるライドスタイルにフィットする最高の1台を提供するために妥協はしない。そして、これらのトッププロを支える機材とサービスは、ホビーライダーを含む誰もがアクセスできるものなのだ。
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【筆者紹介】
文章:池田 綾(アヤフィリップ)
ロードレース観戦と自転車旅を愛するサイクリングライターです。ロードレース観戦を始めた頃、自分の乗っているバイクと同じメーカーのバイクに乗るチーム(当時のエティックス・クイックステップ)をなんとなく応援するようになり、そこからどんどん観戦にハマっていきました。「ライドはする、でもレースはあんまり観ない」というあなた、今年は観戦を初めてみませんか。スペシャライズドライダーはとにかく強く目立つので、彼らを追うだけでも面白いですよ。
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